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"エッセイ"「宇宙屋」


私は超越した。

超越を実現すると時間と言う概念が無くなる。

器としたこの体を借り、元居た世界とは違う次元で生活をする。

借り物と自覚した上の体では
魂を脳と接続しない為、眠気や食欲、病気にすらならない。

ただ私は元居た世界の名残りか、この世界に来てからもコーヒーは好きだ。

超越をした魂は優雅で、自由で、心地が良い。

元居た世界で神だと崇められていた存在は
きっと今の私の様な存在の事を指す。


そんな魂が集まるこの次元にも、喫茶店の様な物はあるのだ。

窓越しに七色の空を眺めながら、真っ黒のコーヒーを借り物の体に流し込む。


「あんたも、退屈してんだろ??」

唐突に声をかけてきたのは、韓国人の様な見た目の女性の器を借りた、低い声の魂だった。

私は図星を突かれたので話を聴く事にした。

「我は宇宙を売ってんだがぁ〜あんた興味あるかい?」

この魂の彼はいわゆる宇宙屋だ。

「この前少しばかり道を間違えて、いつもとは違う次元に行っちまってよー」

この魂はお喋りの様だ。
聴いてもいない事を次々に話してくれる。
私はこーゆー魂が嫌いじゃない。

「そこでビックリだよなぁー、見た事のねぇ〜宇宙をいっぱい見つけてよぉ〜」

彼はおもむろに何色かわからないバックから宇宙を取り出して見せてくれた。

「見ろよこの真っ赤な星!燃えてんだよ。
しかもこの小さい青い星も綺麗だよな?」

私はその宇宙を見て驚いた、、、

私が元居た世界の宇宙とそっくりだと。

超越してから色々な宇宙屋で宇宙を見てきてわかった事が、燃える星と水の星がある宇宙はとても珍しい。

宇宙屋といっても1から宇宙を作るパターンと各次元から宇宙をかき集めるバイヤー的な宇宙屋もいる。

今、目の前にいるこの韓国人の女性の器の魂は後者の宇宙屋だ。

「燃える星を作れる宇宙屋なんてここら辺にいると思わなかったからよぉ〜」

私もそこには共感した。

そして私その宇宙をもらった。
宇宙屋といってもこの次元に損得や金という概念はない。

元居た世界の様に言うなら"タダ"でもらった。

「また波長が合えば会おうな〜」

そーいって韓国人女性の器を借りた魂は去っていった。

私はもらった宇宙を創造する事にした。
宇宙屋は中身の無い宇宙を作り、集めている。

なので私が今もらった宇宙も中身は空っぽだ。


まるで人が蟻の巣の観察キットを作る様に、

私もこの宇宙に生命を創造し観察する。

私が元居た争いの絶えない世界の様にならない様に、、、

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