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民法#18 虚偽表示④

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虚偽表示①
94条2項類推適用初級はこちら

類推適用
→あるケースにつき適用できる条文がない場合、似ているケースで適用条文があるものを適用させること

権利外観法理


→真実ではない外観を信じて取引に入った第三者の取引の安全を保護する法理
※表見代理にも用いられる
要件は以下
①虚偽の外観
②真の権利者の帰責性
③第三者の信頼

CASE.1
真の権利者Aの土地をBが勝手に自己へ所有権登記移転をした。Aはそれを黙認し、Bは善意のCに売却した。
→真の権利者の所有権と善意のCとの利益衡量すると、Bの行為を黙認していたAの帰責性のため、Cの法益の方が重い。したがって、AはCに無効を主張できない。
→94条2項類推適用
※通謀がないため94条を直接適用できない。

CASE.2
真の権利者Aが勝手に自己の土地をBに所有権移転登記をした。それをいいことにBは善意のCに土地を売却した。
→Aは積極的に虚偽の外観を作出しているため帰責性は大きくCの法益が勝る。したがって、AはCに無効を主張できない。
→94条2項類推適用
※通謀がないため94条を直接適用できない。

CASE.3
真の権利者AはBの土地を購入する約束をした。そのため、BはAに仮登記させてほしいと請い、Aは了承した。しかし、Bは勝手に仮登記を本登記としてCに土地を売却した。
→通謀がないため94条を直接適用できないのはもちろん、Aの帰責性もあるのかあやしい。しかし、判例は仮登記を承認したことをもって帰責性を認めている。この部分につき、110条表見代理の権限のゆえつの法意を持ち出している。
 つまり、110条の法意をくむことにより、似ている本ケースにつき類推適用し、帰責性を認めている。
 ただし、110条にあわせて第三者側も善意だけでは足りず保護されるために無過失も要求される。
→94条と110条の法意により、善意無過失の第三者には真の権利者は無効を主張できない。

CASE.4
AはBに自己の土地の管理を任せていた。Bは理由をつけて関連書類をAにださせて、それをもって土地の所有権登記をBに移した。さらにCに土地を売却した。
→Aに帰責性が認めにくいが、この場合も権原ゆえつの表見代理に類似しているため(実際に土地の管理は委任している)94条と110条を類推適用することにより、書類を渡すことに帰責性を認めている。また、第三者保護要件も110条にあわせて善意無過失となる。
→94条と110条の類推適用により、Cは善意無過失でなければ保護されない。

【コラム 表見代理】
広義の無権代理である。
まず、以下のパターンがある。
①代理権を与えていないのに授与したかの表示
②権限外の代理行為(権限ゆえつ)
③代理権終了後の代理行為
 これらは無権代理の一種であるため本来、表見代理人の法律行為は本人に帰属しないが、真実ではない外観を信じて取引に入った第三者を保護するために、本人に代理権を何かしら与えたことやその表示をしたことに帰責性を認めて、善意無過失を要件に、第三者の信頼を保護している。
 なお110条は上記②の規定である。

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答せよ。

①ある者が不動産を購入したいということで、仮登記をした。その後に勝手に本登記にして、善意ではあるが過失のある第三者に売却した。この場合、真の所有者は第三者に無効を主張することができる。

→✕ 虚偽の意思表示や通謀がなくとも、虚偽の外観がありその作出に本人(ここでは真の所有者)に帰責性があり、その外観を信じて取引をした第三者の信頼の保護を要する場合は94条2項の類推適用の余地がある。しかし、仮登記を許諾したくらいでは帰責事由としては弱いため110条規定の表見代理の法意をふまえて、善意無過失の第三者には無効を主張することができないとしている。

②ある者が自己の土地を別人に管理を委託していた。管理者は所有者に理由をつけて印鑑や重要書類を預かり、それをもって自己に所有権移転登記をして、さらに第三者に売却した。第三者が善意無過失である場合、真の所有者は無効を主張することができない。

→◯ 印鑑や重要書類を渡してしまうのは帰責性のあることではあるが、程度としては弱い。したがって、判例は第三者が善意無過失の場合は94条2項と110条の類推適用により真の所有者は第三者に無効を主張できないとした。

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