刑法#5 間接正犯
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間接正犯
例えば、医師が患者を殺めるために、何も知らない看護師を使って、患者に毒薬を与えるというようなこと。
→この場合、医師は道具として看護師を使役している。
他にも、あるものAがB所有の土地にある自動車を勝手に業者に売却し、業者が自動車を回収したとする。この場合、業者を道具とした窃盗罪の間接正犯がAには成立する。
※以上のような「道具理論」は間接正犯における通説ではあるが、判例では実行行為は客観的に定めなければならないとしている。例えば、毒薬を渡すのが殺人の実行行為ではないし、業者に連絡するのが窃盗の実行行為ではないとする。
道具理論にもとづくと、未遂の場合、上記のような原因行為により犯罪が成立してしまうとなるが、判例はそれを否定している。
正犯→その犯罪を直接した者
教唆→犯人に犯罪を決意させること
幇助→犯罪を助けた従犯
AはBに窃盗をさせた
→Bが幼児であるなら、道具理論が成立し、Aは間接正犯。
→Bが成人であるなら、Bが正犯でAは教唆犯
→Bが13歳であればAは教唆犯であり、Bは刑事未成年であるため犯罪不成立。
※上記は利用される者の弁別能力により分別されることに留意。
※重要判例 S58.9.21
事理を弁別する能力があるであろう12歳の少女を暴行することにより、日常的に畏怖を与えていた被告人が当該少女に窃盗をさせた。この場合、被告人は教唆犯ではなく間接正犯である。
→少女は犯罪をしないことを選ぶ余裕がない、もしくは、被告人が犯罪を支配していた、と考える。
原因において自由な行為
→原則論として、心身喪失者は責任能力がなく、罰することができない。また、責任は行為時において有無を判定するのが近代法の原則でもある(行為と責任の同時存在の原則)。
よって、これを期待して、あえて酒を飲んで酩酊したり、薬物を摂取して錯乱状態になって犯罪を企む場合を考える。
しかし、酒を飲んだり薬物を摂取する時にそれをしないことを選択することはできたわけで、それにもかかわらず、犯罪を認識認容しつつ原因行為をした者には結果行為に対して責任を伴うというもの。
行為と責任の同時存在の原則
→先述したように、行為と責任は同時でなくてはならないが、そうなると原因において自由な行為の説明がつかない。
①道具理論
間接正犯に類似した事例として、責任無能力状態の自己を道具として用いるとする考え方。実行行為を原因行為(酒をのむ、薬物摂取)に求める。
②原因行為から結果行為までを一連の実行行為としてとらえる通説
一連の流れにおいて結果行為があり、それに非難すべき事由があれば可罰性を肯定する。
→酒に酩酊して殺人をした場合、①においては責任無能力状態(心身喪失)になれば道具として成立し、間接正犯となるが、限定責任能力(心身耗弱)となれば、道具とはいえなくなる。
→そもそも酒を飲む原因行為が殺人などの犯罪実行行為とは通念上考えにくいので、きちんと実行行為を定型化する必要性も唱えられる。
演習問題
次の設問に◯か✕かで回答せよ。
①正犯とは教唆犯や従犯と対比するための概念である。
→◯
②ある者甲は乙が乙所有の空き地に自動車の中古部品を多数保管していることを知っていた。甲が乙に無断で金属回収業者に対して自己のものであるかのように売却した。業者は部品をトラックで搬出してしまった。この場合には甲は窃盗の間接正犯とはならない。
→✕ 典型的な間接正犯の事例であり、甲は業者を道具として使って窃盗を行っている。
③夫婦で死のうと思い、あるものが毒薬を調達して、夫婦それぞれ服毒したところ、妻のみが死亡した。この場合、毒薬心中をもちかけた夫は殺人罪の間接正犯である。
→✕ 夫には追死の意思があるため、殺人の故意とは評価されず、自殺教唆な問題となる。
③ある者は被害者に執拗な暴行を加えて、車に乗ったまま海に飛び込んで自殺するようさしむけた。当該被害者が畏怖により、それに従うしかない精神状態となり、海に飛び込んで死亡した場合、それをけしかけた者は自殺教唆罪の間接正犯が成立する。
→✕ 被害者な精神状態から、抗うことができないため、けしかけた者は殺人罪となる。
④飲酒をすると決まって心神喪失の状態となり、他人に危害を加えることを自覚する者が多量に飲酒をして他人を死なせた場合、過失致死罪が成立する。
→◯ 原因において自由な行為すなわち、特定の責任能力が本来は喪失する状態になる(原因行為)ことにより、犯罪行為(結果行為)をしてしまうことを許容すること。犯罪行為の実行を結果行為に求めてはいるが、責任の可否の判定を原因行為から結果行為まで継続させている。
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