民法#61 用益物権②
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地役権
→自分の土地の便益のために他人の土地を利用する権利である。人ではなく土地に付着する権利であることな急所である。
※通行地役権、眺望地役権、用水地役権
→眺望地役権が典型であるが、必ずしも要益地と承益地が隣地である必要はない。
→地役権は占有を目的とはしないため、一つの承益地に複数の地役権があることはありうる。一物一権主義の例外である。
→地役権は占有を目的としないため、物権的請求のうち、妨害排除請求と妨害予防請求は、認められるが返還請求は認められない。
なお、物権的請求は地役権者の他、要益地の地上権者や永小作権者、賃借人も請求することができる。
地役権の付従性
→地役権は要益地の所有権の従たる権利である。したがって、所有権の移転とともに随伴する。
元々登記されていた地役権は所有権が移転され、その登記をすることが対抗要件である。
→付従性が原則ではあるが、所有権の移転とともに地役権が消滅するというような定めも可能である。
→地役権は登記されることにより対抗力をもつのが原則ではあるが、要益地に地役権が設定され、そのあと承益地が譲渡された場合、登記がなくても通路が継続的に利用されていることが客観的あきらかであり、譲受人がそれを認識しているか、することができれば譲り受け人に対しては対抗できる。
地役権と取得時効
→地役権は継続されて行使されていて外形上認識することができるものに限って時効取得可能である。継続とは、時効取得する者により通路などが開設されていることを要するのが判旨である。
地役権の不可分性
→地役権は不可分であり、その成立や消滅を共有者の持ち分により認めたりすることはできない。
→共有者の一方が地役権を時効取得すると、もう一人の共有者も地役権の不可分性により
時効取得する。
→逆に共有者の一方だけが地役権を放棄することもできない。
→地役権をもつものは当然承益地の所有者に登記請求権をもつが、要益地が共有されている場合は共有者全員で原告として提起する必要はない。
【コラム 固有必要的共同訴訟】
共有状態の確認や共有の土地の境目を決める訴えなど、当事者全体の利害関係に関わる訴え、共有物分割請求訴訟など。当事者全員で原告とならなければならない訴訟類型。
地役権と時効の更新
→共有者に対する時効の更新は地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力は生じない。
→時効取得は本来相対的効力であるが、地役権の時効取得については、その不可分性より例外的に絶対的効力となる。
したがって、要益地の共有者の一人が地役権の時効を更新した場合、他の共有者にも効力が生ずる。
【コラム 地役権と取得時効期間】
債権はその権利を行使できることを知ってから五年の主観的期間および、その権利を行使できる時から10年の客観的期間で取得可能である。所有権や債権以外の財産権、すなわち、地上権や永小作権、地役権は客観的期間20年で時効取得が可能である。
【コラム 地役権の消滅時効の起算点】
①継続的でなく行使される場合は、されなくなった時が消滅時効の起算点
②継続的に行使される場合は行使を妨げる事由が発生した時が起算点
民法287条による放棄
→承益地の所有者はその地役権設定内容によっては通行のための整備や維持をしないといけない場合がある。この場合は地役権の効力のある場所を地役権者に移転することによりその義務を逃れることができる。
用益物権の比較
①有償か無償か
永小作権のみ小作料の策定が物権発生の要件となっているが、地上権や地役権は有償でなくてはならない定めはない。
②期間の定め
→通常の賃貸借契約は50年まで。それを経過しても50年となる。
→永小作権は20~50年
→地上権は永久も可能だが、その場合は地上権者はいつでも権利を放棄できるのが原則であるが、有償であるなら一年前に通知するか、向こう一年分までの使用料を支払う必要がある。
→地役権は土地の所有権に付従がある限りはずっとである。
③地上権や永小作権には抵当権の目的とすることができるが、占有を目的とする地役権は抵当権の目的とすることはできない。抵当とは抵当権の設定者が目的物を占有することを要する。
④通行地役権は地上権者や永小作権者、土地の賃借人も行使をすることができる。
⑤区分地上権を設定しようとする土地に他の用益物権がある場合は、設定することは可能だが設定者全員の承諾を必要とする。
【用語 区分地上権】
工作物を所持するために地下や空間に上下の範囲を決めて他人の土地を使うこと。通常地上権とは違い、竹林では不可。
上記の通り、その土地に他の地上権や永小作権、地役権があってもそれら全員の承諾があれば設定は可能である。
演習問題
次の設問に◯か✕かで回答せよ。
①用益地が数人の共有に属する場合において、当該用益地のために地益権の設定の登記手続を求める訴えを提起するときは、共有者全員が原告にならなくてはならない。
→✕ 地役権の不可分性により、用益地の共有者のうち一人が地役権を有したときは、共有者の全員が地益権を取得できるため、その一人が原告となり地役権の設定登記を請求することができる。
②通行地益権は承益地と要益地が隣接していなければ設定することができない。
→✕
③Aが所有する甲土地にBが通行地役権を有している場合、Cが甲土地にはBの通行地役権の負担がないものとして占有を継続して甲土地を時効取得した場合、Bの通行地役権は消滅する。
→◯ 時効取得は、原始取得であるから、Cが甲土地を時効取得した場合は地益権などの制限物権の負担は消滅する。なお、地役権の負担を伴って承益地を占有し、時効取得したときら地益権は消滅しないという判例がある。
④設定行為により、承益地の所有者が自己の費用で地益権の行使のために工作物の修繕をする義務を負担したときは、当該承益地の所有者はいつでも当該地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、その義務を免れることができる。
→◯
⑤要益地の地上権者や土地の賃借人は地上権を行使することができる。
→◯
⑥地上権や永小作権はその権利のみを目的とする抵当権を設定できるが、地益権はそれのみを目的として抵当権を設定することはできない。