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民法#50 占有権①

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占有権と本権


→占有とはその事実状態であり、それに対して一定の権利を付与したのが占有権である。
→本権とはその占有を正当たらしめる権利で、所有権や地上権などの目に見えない権利である。
→したがって、本権と占有権は別物であり。たとえば泥棒でさえ占有権は主張できる。
→占有権は意思無能力者は主張できない。所有の意思を有するからである。

→占有は本権のあるものとそうでないものがあり、後者のうち、自分には本権があると思ってする占有を善意占有、本権がないとわかってする占有を悪意占有という。

占有者と果実


→善意占有の場合、占有物より果実を得ることができるが、真の権利者により占有物の返還がある場合で敗訴したなら、提訴以降の果実は真の権利者に帰する。

【コラム 不当利得の返還義務】
民法703条
法律上の原因なく不当な利益を得たならば、その現存利益を返還しなければならない規定

→悪意占有の場合、上記のような規定はなく、果実のすべてを返還し、取得を怠ったならその代価をも償還しなくてはならない。
→善意占有であったとしても、その占有が暴行や強迫、隠匿によるものであれば、悪意占有の場合の規定に準用する。

【用語 果実】
天然果実
→物の経済的用法にしたがって得る産出物。乳牛のミルク、羊のウール、果樹のフルーツ、鉱山からとれる鉱石など。競走馬の子は天然果実には分類されない。経済的用法により得られるものではないからである。ちなみに競走馬の経済的用法は騎乗である。
法定果実
→物の使用の対価として得られるもの。例えば家賃や配当など

占有者の不法行為


→民法709条より、故意または過失により他人の権利や法律上保護される権利を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
→しかし、善意占有者すなわち自分に本権があると思って占有している者をある程度保護するため、民法191条により、滅失又は損傷により現に利益を受けている限度に調整される。
 例えば失火により善意占有している家屋が全焼した場合、基本的には現存利益がないので損害賠償する必要はないが、火災保険に入っていたなら賠償する必要がある。

→なお、当然のことながら悪意占有者を特別保護する必要はないため、悪意占有者は損害賠償責任はのがれらろない。
→賃借人などの他主占有者も当然に損害賠償の責任を負う。

→善意占有者も悪意占有者も他主占有者も故意または過失がなければ不法行為による損害賠償の責任を負わない。

【用語 自主占有と他主占有】
前者は所有の意思のある占有、後者は他人の所有であることがわかってする占有である。

占有者と費用

必要費※それを維持するのにどうしても必要な経費
→善意占有者も悪意占有者も真の権利者に償還を請求できる。
→ただし、果実を得ていた場合は通常の必要費は請求できない。

有益費※それがなくてもいいが、付与すれば価値があがるものに関する経費
→原則的に善意占有者も悪意占有者も、価格の増加がある場合は、有益費か実際の価格の増加分のうち、真の権利者が選択する方を請求することができる。
→なお、悪意占有者に対しては有益被の期限の許与が可能である。これは、留置権を放棄してただちに占有物を真の権利者に返せという趣旨である。本来であれば有益費が償還されるまで占有物を留置できるのが原則である。

占有の推定力


民法188条
占有者が占有物について行使する権利は適法に推定する→権利適法の推定

【復習 即時取得】
即時取得の要件のうち、善意・無過失・平穏・公然があるがすべて推定される。そのうち、無過失は188条が根拠となる。

→権利とは所有権だけでなく、用益物権や賃借権、受寄者の地位など広い。
→権利適法の推定は第三者が占有者の権利を適法と信頼する場合(即時取得が典型)にかかるものであり、占有者の側が自分に権利があると主張するためのものではない。
→権利適法の原則は動産だけでなく、不動産にも適用があるが、登記の推定力がより強力である。
 また、占有者が民法188条の推定により登記を申請して、または、自己が正当な権原を有することの証明にかえることはできない。

【コラム 占有と先取特権】
建物の賃貸人が有する不動産賃貸の先取特権は賃借人がその建物に備え付けた賃借人所有の動産に及ぶが、賃借人が占有している備え付け動産は民法188条により賃借人の所有に属するものと推定される。

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答ください。

①善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなされる。

→◯ 民法189条

②自分に所有権があると信じて他人の物を占有していた者は、自らの責めに帰すべき事由によってその物を損傷した場合には、現に利益を受ける限度で回復者に損害を賠償すれば足りる。

→◯

③悪意の占有者が占有物を滅失または損傷したときは、その者に過失がない場合でも真の権利者に損害の全部の賠償をしなければならない。

→✕ 故意や過失がなければ悪意占有者でも賠償の必要はない。

④占有者はその占有物を第三者に賃貸して賃料を取得していたときは、通常の必要費を支出していたとしても、占有の回復者に対してその償還を請求することができない。

→◯ 

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