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民法#56 共有①

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共有の性質


→一物一権主義の例外ともとれるが、持分という概念があり、それにより主義に則っているともいえる。
→持ち分の本質は所有権である。
→共有関係は当事者の合意の他に、法定事項によっても生じる。後者の典型が相続である。

【用語 準共有】
共有は原則的には所有権においてなされる。
しかし、抵当権や地上権など、所有権以外の共有も可能であり、それを準共有という。

持ち分の処分


→持ち分の法的な正確は所有権であるため、各人は自由に持分を処分することができる。
→処分とは売買や抵当権設定である。取得時効の主張も可能である。しかし、その際は相対効であり、あくまでも対象の持分にのみ効力が及ぶ。

持分権の主張


→共有者各人はその持分権を主張することができる。
①持分確認請求権
他の共有者や第三者に自己の持分の確認を求める。
②持分権の登記請求権
他の共有者や第三者に自己の持分につき登記を求める。
※あくまで自分の持分に関する登記のみである。
③持分権による時効の完成猶予や更新
共有物の占有者が時効取得しようとする場合、持分者は持分に基づき、時効の更新や完成猶予を求めることができる。
→相対的効力である。よって、持分を超えて全体につき、時効取得の更新や完成猶予を求める場合は共有者全員で請求しなくてはならない。
④持分権の損害賠償請求
共有物に損害がある場合は賠償請求を要するが、あくまでも自己の持分についてのみである。

【コラム 持分についての推定規定】
民法250条 各共有者の持分は等しいものと推定する。
→みなされているわけでないので反証を許している。共有者の持分が不明な場合に適用される。

共有物全体の問題


民法249条 各共有者は共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができる。
→具体的には協議によって決定されることであり、それぞれの共有者が使用するにあたっては共有物の全体を使用することができる。
→共有者の一人が単独で共有物を占有していても他の共有者は当然に引き渡しを求めることができない。
→協議によらずして共有者の1人の許諾により、第三者が占有した場合、他の共有者は当然に引き渡しを求めることができない。
→協議によらずして共有者の一人が共有物を第三者に賃貸していても、他の共有者は当然に賃借人に引き渡しを求めることができない。
※上記の3形態は共有が相続においてもそうである。

共有物の変更


→土地の地目を農地から宅地にする、共有物を売却するなど。
※共有者間の協議に基づかないで変更行為が行われた場合は妨害排除請求としてその中止を求めることができる。
→共有者持分全員分の賛成をようする。

共有物の管理


→共有物の賃貸をするなど。
→持ち分の過半数の意思表示で決定。

【コラム 解除権と共有】
 解除権は不可分である。したがって、原則としては解除権者が複数いる場合は全員で行使しなくてはならないし、相手側が複数人いればその全員に対して行使されなくてはならない。
 しかし、共用物の賃貸借契約の解除はその例外であり、管理行為として共有持分過半数以上の意思表示で解除可能となる。

保存行為


→修理や妨害排除請求、不法な登記の抹消など
→全体に対して有益であるため、各人がすることができる。

【コラム 固有必要的共同訴訟】
最初から最後まで共同で訴訟しないといけない訴訟。共有関係の確認訴訟や共有物分割請求訴訟がそうである。※共有物分割請求訴訟は他の共有者全員を相手方とする。

※固有必要的共同訴訟とは、共同訴訟のうち通常共同訴訟を除いた必要的共同訴訟の一つで、最初から最後まで共同訴訟とすることが法律上強制される場合のことです。 数人が共同してはじめて当事者適格が認められる訴訟と言われます。

【コラム 不在者財産管理】
 不在者の財産管理につき、不在者が財産管理者を選任していない場合に家裁より選任される場合がある。その際には不在者財産管理人は保存行為や管理行為(賃貸などの利用行為や造作を施すなど)までは可能だが、原則として処分行為をすることはできない。ただし、まったくできないわけではなく、家裁より権限外行為の許可を得ればその限りではない。

共有物の分割


→各共有者はいつでも分割請求をすることができる。
→なお、共有物分割請求権は時効にはかからない。
【復習 所有権と消滅時効】
所有権は消滅時効にかからない。所有権をベースとしている共有物分割請求権、所有権移転登記請求権、物権的請求権も消滅時効にかからない。

→契約により、五年を越えない範囲で分割の禁止をすることができる。また、さらに更新することもできるが、やはり五年を越えることができない。
※ただし、分割禁止なだけで、持分を譲渡することはできる。ただし、分割禁止の契約は登記がなければ第三者に対抗できない。
→なお共有物の分割はまずは協議によるが、まとまらない場合は裁判所に訴え出ることができる。固有必要的共同訴訟であり、他の共有者全員を相手とする。

分割の方法


①現物分割
→物理的に分割するスタンダードな方法
②価格賠償
→共有物を共有者一人の所有として、他の共有者には金銭にて賠償
③代金分割
→共有物を売却し、その代金にて分割

※裁判所は原則は現物分割、次善および補助的に代金分割の判決や決定をしがちである。それは、価格賠償にすると賠償を命じてそれがなされなかった場合に裁判所が責任をとれないからである。
 しかし、諸々において価格賠償ができないわけではない場合にはそのような判決や決定をすることができる。

【コラム 共有関連の裁判の管轄】
 通常の共有物分割訴訟は地方裁判所である。しかし、相続財産が共有物である場合には家裁が管轄となる。
 相続財産を相続人がその持分を分割前に第三者に譲渡や売却するなどの事由がある場合は通常の共有物分割訴訟として地裁が管轄となる。
 ※なお、通常の共有物分割は将来効だが、遺産分割は遡及効がある。

共有物分割協議における第三者の参加


→債権者や担保権者など、共有物に関して権利をもつものは協議に参加を要請することなできる。
→費用は債権者もちである。
→意見を言うくらいしかすることがない。共有者はその意見に拘束されるかとはない。
→共有者側は必ずしも債権者に協議開催を通知することは必要ない。
→参加の要請があったにも関わらず債権者の参加なしで協議がなされた場合、債権者は共有者には対抗することができる。無効にはならない。

分割請求ができない場合


①境界線上の共有物
→境界標など。これは等分の設置費用、保存費用で建設することができる。相手側が必要ないと考えていても設置したなら双方案分となる。また、土地の広さなどにもよらない。

②区分建物の敷地利用権
→区分所有法により分譲マンションなどの専有部分とそれに応じた敷地利用権は分割して処分することは原則としてできない。

③区分建物の共用部分
エレベーターや廊下など

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答せよ。

①他の共有者との協議によらず、自己の持分に基づいて現に共有物を占有する共有者に対して、他の共有者は、当然に共有物の明渡しを請求することができる。

→✕ 各共有者が、共有物の全部を使用できるので、一方の他方への明渡請求が当然に認められるわけではない。

②共有物全体を売却する場合は処分行為であるため共有者全員に同意を要するが、賃貸借契約の解除については管理行為であるため、共有者持分の過半数な同意があればすることができる。

→◯ 解除権の不可分性の例外である。

【条文 民法544条 解除権の不可分性】
1項 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員からまたはその全員に対してのみすることができる。

2項 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

③共有者間の協議に基づかないで一部の共有者から共有物の占有使用を承認された第三者に対して他の共有者は明渡しを請求することができる。

→✕ 他の共有者の一部の共有者に対する明渡しが当然には認められないため、その一部の共有者から占有使用を承認された第三者に対して不動産の明渡しを請求できない。

④共有者の協議に基づかないで一部の共有者が共有地である農地を造成して宅地にしようとしている場合には、他の共有者は、妨害排除請求権の行使として造成工事の禁止を求めることができる。

→◯

⑤共有物の一人が協議に基づかないで共有地を第三者に賃貸している場合には、他の共有者は、当該第三者に対して、当該第三者の明渡しを要求することができる。

→✕ この場合は当然に明渡しを求められるわけではない。

⑥共有物の分割について共有者間に協議が成立した場合には、その分割は、共有関係の成立のときに遡って効力を生じる。

→✕ 協議が成立したときにその効力が生じる。なお、遺産分割は相続開始のときに遡って効力を生じる。

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