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責任は誰に、、

コロナ禍でほかの船を売却。「クイーンビートル一本足経営」に

 しかしここで、2020年からのコロナ禍に巻き込まれてしまう。2020年7月に就航を予定していたクイーンビートルは、オーストラリアからの到着が10月に遅れたうえに、海外渡航に制約がかかる状態では、もちろん就航ができない。

 JR九州高速船も社員を一時帰休させるような状況で、2020年3月期決算で69億円の赤字と、もはや会社存続すら危うい状態になってしまった。

 当初の予定では、クイーンビートルと同様の船体をもう1隻購入し、ジェットフォイルのビートルも1~2隻は残す予定だったという。しかしJR九州高速船に資金の余裕はなく、ビートル3隻はすべて売却されることに。2番船造船のめどもたたず、残された船はクイーンビートル1隻のみ。ここに、JR九州高速船の不安定な「クイーンビートル一本足経営」がスタートする。

コロナ禍の明けた2022年10月にようやく就航したものの、利用者は7万人程度で、コロナ前の年間20万人弱の半分以下、乗船率も50%がやっとという状態。かつ、船が一隻しかないため、休航すると代替の輸送手段もなく、予約客に頭を下げて費用を補償するしかない。なにより「クイーンビートル一本足経営」では、船を動かさないと収入は入らない。

 不正が行なわれた過程をヒアリングした第三者委員会の資料では、「急に休航するとキャンセルで多くの顧客に迷惑がかかることを言いわけに、違法であることを認識しつつも検査を怠った」ような記述がある。

 最初に検査不正が行なわれたのは2023年2月(浸水の報告不履行)、さらに踏み込んだ「浸水量を表に出さない“ウラ管理簿”の作成」「浸水警報機を50cmも上部にずらして鳴動を止める」などの検査不正は2024年2月~5月。オースタル製の新造船はクラック(亀裂)などの不具合も多く、なるだけ休航させないための検査不正という選択が、二度目の行政処分と安全への信頼の失墜、最終的には会社の消滅(捜査終了後に会社清算の見通し)につながった。

■ 第三者委の調査は低評価。「クイーンビートル一本足経営」の責任はどこに?

 今回の検査不正が起きたのは「JR九州高速船」、子会社とはいえJR九州とは別会社だ。しかし実際には幹部の多くがJR九州からの出向であり、双方向で集客を行なっていたのは、先に述べたとおり。クイーンビートルも「JR九州のグループ会社」とWebサイトに明記していた。

 第三者委員会報告書の報告をさらに外部から評価する格付け委員会でも、「JR九州との関連性への言及が不十分」と報告書を評価。9人の委員の評価は「D」(4段階の最低評価)、「F」(その下。評価に値せず)に分かれた。なお、格付け委員会で「D」「F」のみの評価が出たのは、「SOMPOホールディングス自動車保険不正請求」(中古車販売店絡み)以来のことだ。

 1隻の船舶だけで経営を行なう「クイーンビートル一本足経営」体制は、鉄道でいえば予備車を持たないようなもの。なぜ親会社として1隻体制を容認したのか。また就航率アップにムリなプレッシャーをかけていなかったのか。第三者委員会が「そこに原因があったとは考えていない」と、今の段階で明記できること自体、大いに疑問が残る。

 博多~釜山航路はもとより航空と激しい競争を繰り広げており、LCC「エアープサン」などが往復6000円程度のタイムセールを連発。片道1万円以上のクイーンビートルは競争に勝ち抜けなかったかもしれない。かつ、博多~釜山の航路にはフェリー「カメリアライン」もある。航路自体の未来に問題がなさそうなのが、せめてもの幸いだ。

 いずれにせよ、今回の「クイーンビートル検査不正」では、親会社であるJR九州の安全への姿勢を問う声も多い。また、運航開始当初から不具合が多かったクイーンビートルの船体そのものに関する疑問すら「本調査の対象としていない」としている第三者調査委員会の報告書に疑念を抱くのは、何も格付け委員会だけではない。

 同社の基本的な考え方「安全はあるものではなく、作りあげていくもの」に基づき、信用を再度作り上げるための原因解明が行われることを願うばかりだ。

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【ササピー】

JR九州の子会社に、JR九州ホテルズが出てこないのは、何故なんだろう?

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