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コンプレックス 7
桜の季節にはこんなこともあった。
この時期は、いつもの3倍くらい忙しくなるので、勿論全員出勤!
そして、毎年1週間から10日間くらい家に帰してもらえず、
朝6時から夜11時くらいまで仕事をしていた。
故障部屋(問題があってゲストに売れない部屋)をあてがわれ、
軟禁状態であった!?
疲労がピークに達して、思考能力はゼロに近づく。
冷たい水で顔を洗ったところ、なんと鼻血が出たことがあった。
また、お帰りになるゲストに対して、
頭の中では「ありがとうございました!」と言っているつもりが、
「ご馳走様でした!」と言ってしまい(汗)、笑いというより、唖然とされた
こともあった。とにかく過酷であった。
流石にその時期は、いつもと客層が変わり、
金で世界を動かしているような人たちも押し寄せてきたような記憶がある。
ある日のランチに、その日のディナーを予約していた方が下見に見えた。
ボクは、自分がそのテーブルを担当することになっていたので、
名刺を渡し、
「テーブルはこちらの眺めのよい席をご用意しております。私が担当しますので、よろしくお願いします。」
と、挨拶をした。
10名くらいの予約だったと思う。
その方は(とても紳士な方であった)、
「そうですか、今日はよろしくお願いします!」
と、ボクに封筒を渡してくれた。
後で中身を確認したところ、そこには な、な、なんと2万円も入っていたのだ。
私は、足からジェット噴射が『ゴー!!』と出てきて、
地上から空に向かって飛び立つような気分であった。
そんなにいい時代に、沢山のチップをいただいていながら、なぜかいつも貧乏だった。
きっと、すぐに呑んでしまい、また競馬に夢を追いかけ、
毎日がギリギリの世界であった。
今となっては、とても懐かしい思い出である。
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