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コンプレックス 14
■コンプレックス14
そんなことがあってからムッシュは、ボクに対してどういうわけか優しい対応をしてくれるようになった。
真剣に喰らいついてきたボクのことを「面白い奴だ!」って思ったのかもしれない・・・
人との出会い、そして人とのつながりというのは
こちらの出方次第でいかようにでも変化することを知った。
その後ボクは、レストランから宴会サービスに異動になった。
宴会に異動になった当初、ボクは完全に「村八分」にされた。
レストランから来たボクに対して、あからさまに嫌がらせをし、
そして仕事を教えてくれる雰囲気など微塵も無かったのだ。
大きなホテルであれば、どこでも似たようなものだと思うが、レストランから宴会に異動するということは、別な会社に転勤になる事と大して
意味が違わないくらい、交流など一切無かったし、また、その仕事内容も違っていた。
エドモントは前記した中村ムッシュが非常に有名であり、
ムッシュは 当時は立場的には レストラン部門の料理長であった。
後にグラン・シェフ(総料理長)になり、そして常務取締役総料理長になったのであるが・・・
当時は宴会部門とレストラン部門は、調理の中であまり交流が無かったのである。
そんなわけで、レストランから宴会に来たボクに対しての冷たい態度は
宴会サービス課のスタッフに留まらず、調理の面々は更に厳しいものがった。
皆、ムッシュの料理の素晴らしさは当然のごとく知ってはいたが、俺達には関係無い世界!
というような感じだったのである。
ムッシュのところで仕事をしてきた奴なんか、知るか!!
という雰囲気を肌に刺さるほど感じないわけにはいかなかった。
宴会サービスは、マネージャーが筆頭で、その下にアシスタント・マネージャーが2名、
キャプテンが6名、ウエイターが6名、常備が6名というような編成であった。
レストランから異動になった私は、そのキャプテン6名の中で一番下に名前があった。
勤務表での順番は、その立場の強さ弱さを的確に表現していた。
なんとしても、この順番を入れ替えてやる!
村八分にされながら、私はいつもそのことばかり考えていた。
そして現実的には、半年後にキャプテンの上から2番目になることが出来た。
そして、更に宴会に異動して2年後 アシスタント・マネージャーになることが
出来たのである。
文章にしてしまえば大したことでもないが、現実はすさまじい派閥抗争の中で、毎日が戦いであった。
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