話を続ける

話を続けるとは、賭けるふたりが交互にチップを置くように、互いの前提を差し込みあうことだ。「言うべきこと」と「言うまでもないこと」は、自分と相手の着くテーブルが「同じ」であるという、最初の言うまでもない前提のうえで分節される。それは言われないと思われているのではなく、たんに言われると思われていない。「ここでこれを言ったらどうなるんだろう」みたいな自意識が無意味なのは、それを言うべきことだと思ってしまっているからだ。

事情は書かれたものでも同じだ。あることを書くこと、それは自動的に書くべきことと書くまでもないことを腑分けする篩を作ることになる。書くまでもないことへの負荷がインフレし、積まれたチップが崩れそうになるのを引き延ばすことであらゆる文章は続いている。続ける口実のために書かれた言葉の意味を、読むものは書くものが読む者が知っていると知っている。それにしてもこの言葉はなんなのか、と尋ねることでわれわれは賭けの前に遡るのではなく、また新たなチップを積んでいる。

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