ハプロ移植?臍帯血移植?
20歳の時の再発では骨髄移植を前提としたものだったので、どの移植を受けるのかを決めなければいけませんでした。
移植の方法としては、ハプロ移植か臍帯血移植という選択肢を出されており、病院側としては長期生存率のためにはハプロ移植の方が良いのではないかというお話でした。
ハプロ移植のメリット・デメリット
ただハプロ移植はHLA(白血球の型)が半分しか合ってないドナーからの移植なので、完全一致の移植よりもGVL効果(ドナーのリンパ球ががん細胞を異物と認識し、攻撃する効果)が高いから白血病を根治させることが出来るかもしれないっていうメリットがある一方で通常の骨髄移植より強いGVHDが起こるリスクが高いっていうデメリットがあります。
夫婦の考えの相違
その時点で前回のGVHDですごく大変だったのをずっと見てきた私は「えー?またあれやるが?もしかしたらあの時よりひどいかもしれんって…」って思ってしまって。それに前に「白血病になった息子の心構え」の時にも書きましたけど、少し前に骨髄移植を受けた方とお会いした時に「あんなにしんどいことはなかった。本当に死にたいと思った」って言うのを聞いていたから。前回の骨髄移植は、やったと言っても13年前のことです。大変だったことを覚えてるつもりでしたが、それでも直近で移植を受けた人からそういう言葉を聞いて、それよりひどいかもしれんとか思うと…。やっぱり気持ちが後ろ向きになってしまいますよね。
でも夫は違っていて、臍帯血移植の方は再発の可能性が高いっていう話を聞いて、それならば今しんどくても少しでも再発の可能性の低い方を選びたい、もうこれで白血病は終わらせたいって言って。
高知の病院では平行線のまま、岡山の大学病院にハプロ移植の説明を聞きに行くことになりました。いわゆるセカンドオピニオンですね。本人も、今回は娘も一緒に。
病院に着いて先生から説明を受けましたけど、やっぱり心配していたGVHDに対する不安が解消されることはなくて。もやもやした気持ちで帰りました。
余談になりますが、この時の帰りの車で息子が「いやー、大学も休学していよいよやる事なくなったよね。どうしよう。友だちもやってるからゲーム配信でもしようかな」って言い始めて。夫が「どうせやるなら少しでも世間に役立つことやったら?白血病のこととか」って言うと息子が「なんか病気のこと動画にするの、ずるいやん」って言って。いろいろ話すうち最終的に「まあ、せっかく白血病になったき、小児がん患者目線で発信してもえいかもね。治療を受けてる子どもがどう思うちゅうかとか、経験者しか分からんところもあるき」って言って、YouTubeをやることを決意したようです。
きっかけは息子の言葉
高知に帰ってからも移植の方法では迷っていましたが、ハプロ移植を受けることになった大きなきっかけは息子がハプロ移植を受けるって決めたことですね。
息子と移植のことをいろいろ話してた時に「でもよ、お母さん、病気を診るプロフェッショナルな先生たちが何人も集まってこの治療がいいっていうんなら、そうした方がいいよね」って言って。
いや、本当に偉いですよね。GVHDが前回よりひどくなるかもしれない、もしかしたら失敗したら死ぬかもしれないっていうことをあっさりと受け入れて。本人にとったらものすごく葛藤はあったと思うけど、私たちにはその不安を微塵も見せなくて。頭が下がります。
夫、ハプロ移植のドナーになる
それからは話が早かったです。
娘は前回ドナーになっていたので、今回は夫か私のどちらかがなることになります。
2人のHLAを調べたり、既往歴があるかないか、今現在の体調がどうかなどいろいろ調べた上で夫がなることに決まりました。
セカンドオピニオンに行ってから1ヶ月も経たないうちに夫は岡山の病院へ末梢血幹細胞採取のために入院しました。
通常、造血幹細胞は骨髄にあって血液中には流れていません。なのでドナーに薬を投与して白血球を増やしたあと、血液中に流れ出した造血幹細胞を「血液成分分離装置」を使って採取します。そのため1週間ぐらい入院することになります。
夫はもともと元気な人なので、今回、ドナーとはいえ1週間も入院するのはほぼほぼ初めてだったと思います。入院して初めて、息子が病院のご飯食べれんって言ってた訳がやっと分かったって言って可能な限り外で済ませてたみたいです。治療中の入院患者は点滴を繋がれてるので、そんなに簡単に外に出ることは出来ないんですけど。
その間に息子は、パソコンやら動画編集のための道具やらをいろいろ買い揃えて抗がん剤治療を受けながらYouTubeの配信を始めていました。