ルーズなタイトシルエット
職場の制服(作業服)がリニューアルされるとのことで採寸用サンプルが会社に届いた。
各自試着、確認せよとのお達しがあった為、会社の犬でもある私は勤務中に更衣室に篭って試着に耽ることとした。
今着ているサイズがLLなのでとりあえず同じサイズのサンプルを試着してみたところ、嫌がらせかと思うほどに小さい。
しばし頭のなかで状況を整理する。
確かにここ数年で太ったという自覚はある。一昨年の秋以来続いている食欲の秋を謳歌しつつ、家族の残したおかずを食べる、所謂「残飯処理」としての大命を拝し、妻より「バキューム」という異名を拝命するに至った飽食の時代の申し子としての生活を送る今日を鑑みて当然の帰結ではあるのだが、だとしても現に着ているサイズはLLであり、これがサンプルになった途端に着られないというのは甚だ合点がいかない。
とはいえパッツンパッツンの作業着で仕事をすることはそれ以上に合点がいかないので、仕方なく3Lを試着してみた。
ウエスト周りの窮屈さは当然無いものの、何故か肩周りがキツイうえに腕を伸ばすと七分袖になる始末。
もはや頭のなかはパニックである。
残された選択肢は4Lのみ。
この絶望感たるや筆舌に尽くし難い。
「この辱しめをどうしてくれるの!?」
気分はさながら、シャ◯でパクられた◯◯ピーと言っても過言ではない。
さりとて他に選択肢があるはずもなく、これ以上ない不本意を以って4Lを試着してみた。
ほとんどお兄ちゃんのお下がり状態であった。
3L→4Lの間に一体何があったのかとテーブルをひっくり返してパワハラよろしく圧強めに問いただしたい衝動に駆られたとしても誰も責めるまい。
ここまできて、サンプルが掛けられているハンガーに何やら紙切れがぶら下げられていることに気付く。
そこにはこう書かれていた。
今回採用される作業着は細身のシルエットとなっております
細身。
シルエット。
工場の作業にスタイリッシュさなんぞ求めとらんのじゃい!!!(怒号)
給食センターのおばちゃん達がミニスカートにピンヒールで給食を作ったって誰も得しないのと同じなのである。
そもそも、いくら細身とはいえ細過ぎるのだ。
この作業着のデザイナーのなかではルパン三世しか存在していないのではないかと疑いたくなるレベルの仕上がりで、それはもう怒りを通り越して、なんだったら「お前スゲーわ」とすら言いたくなる仕事っぷりである。
兎にも角にも私は今後「お兄ちゃんのお下がり」で仕事をすることになった。
今後「細身のシルエットをルーズに着こなす」というトレンドが生まれることがあれば、その元祖は私ということでお願いしたいところである。