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税務署ってどんなところ?組織と仕事

 そんなこんなで僕の税務署の勤務が始まります。僕の配属は法人課税部門になりました。法人、つまり会社の税金の調査部門です。税務署には他に個人の確定申告を扱う個人課税部門、主に相続税を扱う資産課税部門、税金を取り立てる徴収部門があります。一度専門系統が決まると基本的には途中で専門が変わる事はなく、一生その専門分野で仕事をします。各系統毎に仕事内容が違うので、同じ税務署員でもカラーが違います。
 以下は、僕の個人的なイメージで、ざっくり分けたらこうなるかも、という程度のものです。当然ですが職場には色々なタイプがいて、この部門にいるからこういう人だ、というつもりはありません。
 法人課税部門は職員全体の4割ぐらいいるのでしょうか、多分一番多い割合だと思います。僕のいる税務署ですら会社は何千社とあり、それを法人調査の2部門の合わせて7人くらいで手分けして調査するので大変です。調査官は一年中調査している感じです。調査をしないのは、お盆と年末と税理士が忙しくて立会いができない確定申告の時期だけです。だから調査ばかりしている法人調査部門での評価は、数字です。どれだけ数字を上げたか。それも「不正」と言われる、一般的な感覚でいうところの「脱税」に当たる重加算税対象の数字がどれだけかによります。
 個人課税部門も、もちろん調査はします。個人課税部門のとある統括官は「調査は税務署の根幹である」と仰っていましたが、まさにその通りで、個人課税部門も納税者が税金をちゃんと計算しているかを常にモニターしています。ただ、法人調査のいわゆる「税務調査」とは違って、申告書を受理しながら内容を確認しているようです。確定申告などで、特に事業をしている納税者がくると、手だれの上席調査官に回されます。ベテランの調査官は申告書の数字を確認するふりをしながら、事業概況や、各仕入や売上や経費の内容を世間話のように聞いて、「まあ、なるほど、これくらいの利益率だろうな」と確認しています。税務署員は、事業の業種や規模で大体の利益率がわかっているので、それから外れていないかを、申告書を見ながら、常に確認しているのです。
 個人課税部門でも調査が仕事の根幹であることには変わらないのですが、そうは言っても年間を通じての一番の山場は確定申告です。いつもは優しい、おとなしい印象の個人課税部門の上席が、人が変わったようにテンションを上げて、「はい、じゃ今年も頑張って確定申告を乗り越えましょう!おー!」と、雄叫びを上げて手を振り上げているのが、確定申告時の個人課税部門のイメージです。そのため、みんなで確定申告を乗り切るチームワークを大事にできる人、人間関係に気を遣える人が評価されるような気がします。
 資産課税部門は、いわゆる相続税の調査をする部門です。法人や個人事業は継続的に事業をしているので、脱税をして税務署に目をつけられるとその後の事業も厄介だな、という心理も働きますが、相続税は人が亡くなって相続した時に申告するだけなので、その時一回だけの申告です。そうすると人間の心理として「バレなきゃいいや」と魔が差しやすく、ごまかしも多い税金のようです。扱う金額も大きいので、税務署としても見逃せない。資産課税部門は人数が少なくて個人課税部門の横でひっそりと仕事をしている印象ですが、重要度は高い。だから少数精鋭の寡黙なスペシャリストというイメージでした。でも、とある時にそこの上席とお話ししてみたら、下ネタバリバリの面白い人でした。資産課税の人は下ネタをいうという話ではありません。その人が寡黙なようで喋ると実は面白い、魅力的な人だったという話です。
 徴収部門は、他の課税部門の「調査官」ではなくて、「徴収官」という肩書きです。「調査官」は税金の金額を確定するために頑張る人たちですが、「徴収官」は税金を払わない人たちを対象とする税務職員です。「ナニワ金融道」が推薦図書です。徴収官は強い法的権限を持っていて、「差押」をすることができます。なかなか税金を収めない一癖も二癖もある納税者に払わせるために、押しが強いオラオラ系の人が多いイメージです。
 総務は、普通の会社でもそうかもしれませんが、仕事のできる人たちがいくところです。税務署の組織は基本的には調査などで数字を上げてくる人が仕事ができると評価されるので、そういった調査のできる人が一時的に行く部署のイメージでした。でも調査ができなくても事務処理能力がある人もいるので、そういう人は総務畑を歩んで偉くなっていくようです。

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