税務署に初出勤 署長は肉体派だった
前日に下見をしたので、税務署への初出勤は緊張はしませんでした。でも、気が重い。「めんどくせーなー、かったりーなー」というのが本音でした。前日、外から見た税務署は薄暗い印象でしたが、初出勤で初めて税務署の建物に入っても明るい印象はありませんでした。建物の入り口から入って近くの職員らしい人に「本日赴任したものですが…」と声をかけると、2階の総務課に案内されました。案内してくれた人は「どうぞ、こちらに」とにこやかに言いながらも、横目でチラチラ僕を見ています。通り過ぎる職員らしき人もチラチラ見てきます。なんか注目されてる、面倒くせ〜。不貞腐れてる僕には、全てが面倒くさくて、億劫です。
2階の総務課に案内されると、背の高いスマートなおじさんの総務課長がいました。総務課長がどれだけ偉いのか分からないけど、とりあえず結構偉そうだなと判断して「よろしくします。おねがします」って気合い入れて挨拶したら、「まず、署長に挨拶挨拶しようね」ってあっさり流されて、すぐ横の署長室に通されました。気合い入れて損した。
いきなり署長に挨拶?展開早いな、いきなりラスボスではないか。気持ちの整理ができていない。本当はあまり気持ちが乗らないまま初出勤になって、めんどくせえなって思いながら建物に入ったら、ほんの数分でもう署長の前まで連れてこられてしまった。国税局配属になると偉い人がたくさんいるから挨拶も大変なのだけれど、小さい税務署だと偉い人も署長しかいなくて挨拶する展開が早い。そんなことは組織に入って異動を重ねれば当然なのだけれど、当時の僕にはわからない。建物に入ったらすぐにチラチラ見られながらどんどんたらい回しにされて、ちょっと不愉快になっていたら、もう署長に会うことなってしまった。署長に会うという事になって「もうどうにでもしてください。どうせ税務署員になるんでしょ」と軽くキレながらも覚悟が決まった。「まな板の鯉」という感じだ。
総務課長が「署長、新任の方が挨拶に来てます。よろしいですね」と署長室を覗きながら言っている。この時の僕の気持ちは「もうどうにでもしてくれ」というのと「おうおう会ってやるよ署長とやら〜、なってやるよ〜税務署員に、とりあえずな」という気持ちが混在していた感じだ。内心はオラオラしていたのだけれど、それでも外見だけは失礼のないように、笑顔をとはいかないけれど一生懸命やる気ありそうな顔を作るのは忘れませんでした。
署長室に通されて待っていたのは、髪の毛の薄い色黒のおじさんでした。僕は緊張しながらも気合を入れて一生懸命挨拶したのだけれど、署長は僕を落ち着かせようとしたのか、まるで薄いリアクションで、穏やかに諭すように「まあ、頑張ってください」的なことを言っていたような記憶がある。僕ををあまり見ないで、遠くを見るような感じでぼやーっとしたことを話してました。僕は、もっとガッチリ握手して「頑張れよ!」みたいな熱い激励を期待していたから、こちらは何か肩透かしを食らったような感じで、緊張がどんどん薄れていってしまった。税務署ってこんなノリなんだ、なんか肩透かしを食らった気持ちだ。何の感動も無く、頭のどこかで「このおじさんが署長なんだ。色黒いな、ガタイも良いな、田舎のおじさんだな。兼業農家か?」と失礼にも思ってしまいました。この署長については、その後若手有志で一緒にスキーに行ったりして、その人となりを知るようになります。実はマルサ出身で、60歳前なのに毎日10キロのランニングを欠かさない、超体育会系の肉体派でした。色黒でガッチリしているのは、毎日のジョギングの賜物でした。
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