小夜セレネ 「消えたい」の続きを描く表現者

一瞬の衝撃

私がバーチャル表現者・小夜セレネの活動を追うようになったのは、この動画がきっかけである。
NUMBER GIRL『透明少女』という選曲、インスト音源を伴った歌唱からエレキギターによる弾き語りへの移行という粋な演出、そしてがなるような力強い歌声に、短い再生時間の中で一瞬にして心を奪われた。
小夜セレネの魅力を挙げ始めればキリがないのだが、そのうちの一つに、コンテンツの中で自身の良さを120%引き出す自己プロデュース力の高さがある。
小夜セレネは作品を制作する際に、必ず我々リスナーに「最高の作品を提供すること」を約束してくれる。表現者が誇りをもって丁寧に、一所懸命に仕上げた作品だからこそ、私は心惹かれたのだろう。

小夜セレネと音楽

小夜セレネの音楽活動のバックグラウンドには、自身に影響を与えた多くのアーティストの存在がある。
歌枠配信では、音楽好きにはたまらない唯一無二のセットリストから、そのアーティストたちへの熱いリスペクトが感じられる。

そして、小夜セレネが自ら制作したオリジナル曲『永音』は、ギターの轟音の中を漂流しているような感覚になる、非常に完成度の高い楽曲だ。シューゲイザー・サウンドと可不の歌声が繊細に重なり、重厚な世界観を創り上げているのが印象的である。

「消えたい」の続きを描く表現者

小夜セレネは、YouTubeのチャンネル登録者数100人を記念した配信にて、自身がVtuberとして活動を始めたきっかけについて語っている。

コロナ禍による制限で自由に音楽活動を行うことができなくなり、当時組んでいたバンドが望まぬ形で終わりを迎えてしまった後、小夜セレネはこの世から消えてしまうことを望んだ。

どうせなら、その前に自分のやりたいことをしたい。そんな思いから小夜セレネは、当時の自身の環境でできる音楽活動の形を模索し、Vtuberという道を選んだ。そしてチャンネル登録者数100人という節目を迎えたとき、小夜セレネが示したのは、「ここで終わらせたくない」という意志だった。

小夜セレネは「消えたい」の続きを、描き、生き続けている。2023年下半期にはバンドマン層からも支持を集めたバーチャル表現者は、この先何を表現してゆくのだろうか。今後も小夜セレネの活動に注目したい。


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