真の地方創生のための船中八策
日本の地方を取り巻く主な論点
そのまちには何もない、のではなく、何かを創造する場がないだけ
人に幸福をもたらすのはクリエイティビティ。何かを生み出す喜びである。心理学者のミハイ・チクセントミハイは著書『フロー体験―喜びの現象学』にて、フロー体験という概念を提唱した。フロー体験とは、人が完全に没頭し、集中している状態で、活動自体が喜びをもたらす心理的状態である。このフロー体験を追求することで、幸福感を高め、充実した人生を送ることが可能になると主張している。つまり、何かを創造するフロー体験に没入することで、人々は幸福感を高めることができるのである。逆にいうと、そこに人がいれば、幸福感を高めるべく何かを生み出す需要がある。つまり、一見して地域に何もないように見えるのであればそれは誤りであり、その地域に何かを表現する場がなく、人々のクリエイティビティが発揮されていないのである。また、芸術家のヨーゼフ・ボイスは概念として「社会彫刻」を主張し、世界のあらゆる人々は、自らの美的感性と創造性をもって世界の形成に貢献するアーティストであるべきだとした。ゆえに、クリエイティビティを発揮できる環境を整えることこそが人々に幸福をもたらすまちづくりである。
人類総クリエイターの時代
インターネットの登場以降のプラットフォームサービスの進化により、インターネットユーザーの意識の大きな変化、つまり、あらゆる人が固有名詞を持つ発信者として振る舞う時代になっている。インターネット普及の初期は2ちゃんねる等の掲示板やニコニコ動画等、ユーザーは匿名の発信者として情報発信していたが、徐々にブログサービスが発展したことでユーザー自身が、匿名性は高いものの情報発信の主体となる素地ができた。その後フェイスブック等SNSサービスの登場により、より匿名性は薄れ、固有名詞を持つ、いわばキャラ立ちしたかたちでユーザーは情報発信を行うようになった。またスマホ普及によりあらゆる人がインターネットユーザーになったところ、このようなインターネットユーザーとしての意識変化を通じて、リアルな現実社会においても、クリエイターとして自身の創造性を発揮する素地は固まっている。そして、上述の通りそれ自体が幸福感を高めるのである。
創造性を発揮したい人々の意識変化と現実社会のズレ
一方で、問題なのは、このような人々の意識変化が起きているにも関わらず、現実社会では創造性を発揮するための場所や拠点が不足している点にある。特に、地方都市においてそうした問題は顕著である。例えば、地方でも人通りが相対的に多い中心市街地でビジネスを展開しようとする場合、そもそも個人がスモールビジネスを展開するに適した空きテナントの供給が少なく存在しないことがしばしばある。こうした現状では、小規模な事業を始めたいと考えている人々が自らのアイデアを実現するための最初の一歩を踏み出すことが難しい。
加えて、空きテナントが存在していたとしても規模が大きすぎる場合が多い。そのため、事業者は身の丈に合わない規模の床面積を調達することが必要となり、結果的に資金的負担が増大する。このような状況は、特に資金力の乏しい若年層や起業初心者にとって、大きな参入障壁となっている。その結果、創造的な活動や新規事業の芽が十分に育たないという悪循環が生じている。
さらに、まちなかの空間が活用されていない背景には行政や地権者の課題も存在している。空き家空き店舗が増え景観が悪化することで集客力も低下する負のループが発生し、空間の有効活用をさらに難しくしている。こうした課題が解決されないままでは、多様な人々が自由に参加できる環境は生まれない。
結果として、多くの潜在的なクリエイターや起業家にとって、現実的な選択肢が閉ざされた状況が続いている。このような状況を打開するには、行政や地元コミュニティが連携し、柔軟でアクセスしやすい空間の提供を目指すことが必要不可欠である。
弱い紐帯を作り出すお節介焼きとコミュニティナース
一見寂れた地域であっても、本来はもてる人的資源を活用して何かを生み出したい人が潜在的にいるはずである。アメリカの社会学者であるグラノヴェッターの理論「弱い紐帯の強さ」に基づと、イノベーションには家族・親しい友人の強いつながりではなく、ちょっとした知り合いといった緩いつながり(弱い紐帯)のほうが有用とされる。つまり、強いつながりのコミュニティを結びつける緩いつながりの連鎖をどれだけ作り出せるかがが重要とされている。こうした緩いつながりを地域で生み出すのは所謂お節介焼きであり、この役目を積極的に生み出していくコミュニティナースの概念が生まれている。島根県出雲市出身の矢田明子氏が看護学生の時に始めた取り組みであり、矢田氏の個人的な実践から徐々に輪が広がり、17年に人材育成や普及のための「コミュニティナースカンパニー」を設立し、西部ガス等の企業もコミュニティナースを採用する等、取り組みの輪が広がっている。
こうして新たに地域でビジネスを通じて表現するクリエイターが増える場を設けることは、よくある再開発により地域内のオフィスが新設されたオフィスに移るだけ、というものとは質的に異なり、新たに雇用を地域に生み出すものである。
地域アイデンティティの強化とシビックプライドの醸成
多くの地域では中心街が空き店舗だらけとなっているが、本来、まちの一等地の景観を空き店舗で阻害していることに対して、パブリックマインドがあるオーナーであれば恥ずべきである。むしろそうでない、ということは、いわば自分の地域に対して諦めの境地にあり、そうしたパブリックマインドを持つだけの地域アイデンティティの強さがない、またはあったとしてもシビックプライドが地域に対して持てていない、ということである。一方で、空き店舗だらけということは、オーナー次第では安価にテナントを貸すことができる地域の資産、宝の山がある、と言うことを意味する。
こうした不動産オーナーを動かすためには地域アイデンティティの強化、シビックプライドの醸成まで待っていてはいつになっても物事は動かない。ゆえに、地域で信頼を積み上げた人物を通じて、最初に一歩を踏み出す気のある不動産オーナーを見つけださくてはならない。ここでも、上記のコミュニティナースが斯かる取組みのツールとして用いることができるはずである。
また、地域アイデンティティ、シビックプライド醸成につながるまちづくりとはどのようなものなのか、人を動かし説得できるコンセプトが同時に必要になる。こうしたコンセプトはトップダウンで行政等特定の主体が決めるものではなく、またボトムアップでごちゃごちゃ決めるものでもない。長戸湯本温泉の再生の事例を見れば、新たなまちづくりのコンセプトはある意味トップダウン的に決めつつも、その内容を地域の主要な主体がジブンゴトとして捉えざるをえないような段取りをとっていることがうかがえる。つまり、求められるコンセプトとは、その地域の歴史と文化、客観的な地域をとりまく都市間競争の環境分析をふまえたものでありつつ、皆んながジブンゴトとして感じられるような手続きを踏んだコンセプトでなくてはならない。言い換えると、中身も段取りも筋が良いコンセプトということである。
地場産業の育成
やはり多くの地域では衣食住に関わる消費は大手ショッピングモールや通販を通してなされるところ、地域の市場が外部資本に取られていることを意味する。本来は、地域の市場は地域の雇用を生み出し、収益を地域に投資する地域資本によってなされるべき。いわば、外部資本に需要を奪われている地方は、自国に産業がなく自国への投資資金もなく他国製品を輸入するしかない初期新興国に近しい立場にある。そうではなく、まずは地域内需要をもとに地場産業を育成しつつ、むしろ他地域の需要を獲得できるような産業を育てる必要がある。また、地域の需要が外部資本に奪われる大きな要因の一つが、衣食住を支えるエネルギー消費である。まちとして省エネ改修を進めていくことは重要ではあるが、そもそも、電力・ガスといったエネルギーに関しても、地域に利活用できる小水力・バイオマス等のエネルギー源があるのであれば、積極的に活用していくことが求められる。その際には、電力・ガスを販売する会社を地域にオーナーシップを持つ地元資本家が設立し、稼いだ収益を地域の他のインフラ投資に用いていく、といった視点も必要である。
パブリックマインドをもった土地の利活用
まちの開発対象地の利用は、短期的なその敷地から得られる収益だけで考えるのではなく、エリアとしてどう価値を上げることに裨益するのか、という公共の価値観がなければ、仮にその対象地の収益は稼いだとてまちの魅力を損なう店舗(例えば遊戯施設、無料案内所等)を設置すれば、エリアとしては衰退につながる。
顧客主導型マーケティングと求められるまちづくり
目先の利便性と合理性の判断から、東京・海外資本の企業が提供する商品サービスに基づく画一的なライフスタイルを享受しているところ、それでは地域のプライド、シビックプライドは育たない。消費とは、上述のヨーゼフ・ボイスの概念に従えば、それ自体が社会を彫刻する行為なのである。またマーケティング的な観点からも、商品サービスではなく、消費行動自体に価値がある点を指摘されて久しい。マーケティングの大家であるフィリップ・コトラーは、著書「マーケティング4.0」にて、顧客が情報の受け手ではなく発信者となる顧客主導型マーケティングを訴えている通り、消費サービスに共感が得られる独自のライフスタイルや、消費自体がSNS等の情報発信を通じて価値になる体験の場を提示しなくてはならない。
箱物の前にソフトなまちづくり
モータリゼーションによって市街地が拡大したところ、人口減少にも関わらず一層より密度の薄い都市構造となり、中心市街地ですら商業が成り立たない状況となっている。
過度に個人の権利を保護した法体系により、個人が地域に沿わないマイナスのデザインの建物をつくろうが、また空き家となり老朽化し景観を阻害しようが、是正を求める強制力が自治体にはない。結果として、需要と供給の両面から魅力に乏しい都市空間が放置される結果となっている。
一方で、過去の行政の中心市街地活性化においては、大規模商業施設、文化施設の開発等、箱物の供給に力点が置かれていた。しかし、その多くが過去の需要が膨らみ需給が逼迫していた時代の前提を引きずるものとなっており、結果、肝心の需要を見誤り既に経営難となっている。
取り組む順番としては、まちの賑わいを取り戻し需要を確保するため、先にまちなかに住む場所、働く場所を確保する必要がある。そのために本来行政が活用できる資産は公共施設、遊休地はもちろん、道路、公園、港湾等幾らでも手付かずの宝の山が日本には溢れているのである。既にパークPFIやみなとPPPで気運は高まりつつあるところ、こうした動きを加速させる必要がある。まずはマルシェ等ソフトなまちづくりにより、コストをかけずに賑わいをつくるところから始めるべきである。
地方の競争優位性と勝ち筋(そこにしかない価値)、見習うべき台湾の文創産業育成政策
日本という国の歴史・文化は他の新興国と比べたときのアドバンテージである。島国ゆえ大陸他諸国の進出・侵略(騎馬・車体による侵攻)が容易というか不可であり、第二次大戦中の大空襲や度々見舞われる天災等で幾分は失われたものの、活用できる歴史と文化、また歴史的建築物がゴロゴロ全国にある。ただ、日本の文化行政において文化遺産は保護が主眼にあり、利活用は上述の公共施設群と同じくおざなりにされている。具体的に、この点は日本の伝統工芸に係る政策に象徴される。「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」は、伝統的工芸品を以下の5つの要件で定義している。
主として日常生活の用に供されるものであること。
製造過程の主要部分が手工業的であること。
伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられること。
一定の地域で多数の者が製造に従事していること。
これらの厳格な定義が厳密であるため、現代の消費者ニーズやトレンドに合わせた新商品の開発が制約された。例えば、新素材の使用や製造工程の機械化、現代的なデザインの導入などは、上記の要件に抵触する恐れがあり回避された。その結果、伝統工芸品業界は市場の変化に柔軟に対応できず、需要減少や産業停滞を招いた。
そうではなく、地域のそこにしかない価値を産業に変えるべく、しっかりとマーケティングのトレンドをふまえて利活用を考える必要がある。その際、台湾の日本の統治時代の遺構を活用した文創産業の育成が参考になる。台湾では、戒厳令解除後に進んだ民主化の中で、清朝統治時代、日本統治時代、国民党統治時代含めた歴史をふまえて、台湾に住む内省人、外省人、原住民含めて、あらゆる人を新台湾人する新たなアイデンティティ形成に試みている。その中で、日本統治時代地域の歴史文化を活用して、クリエイティブ産業(文創産業)の育成に活用している。台湾には遊休資産となっていた日本統治時代の遺構が多くあったところ、2000年初頭より文創産業育成の拠点として利活用し、独自性の高いまちづくり政策を進めてきた。また、先行事例の成功が連鎖反応的に他地域での取組みを誘発している。このように、その地域の歴史や文化を背景に遊休資産となっている施設群の利活用は、連鎖反応的な開発を狙ううえで優先して検討しうるだろう。さらに、台湾でも文創産業に成功したエリアは地域アイデンティティの形成に貢献しているところ、こうした人の賑わいをつくることが地域アイデンティティ、シビックプライドの醸成につながるのである。
職住分離から職住近接へ
また賑わい創出の観点からは子育てや進学等ライフイベント毎に家の外で地域で多様な消費や行動を行うファミリー層の呼び込みが必要なところ、中心市街地はファミリー向けの安価な住宅が少ない。また、まちに滞在する時間が分離しまちに関与する機会が減る職住分離では、地域アイデンティティ、シビックプライドの醸成は難しい。
加えて、昼夜間比率が大きく異なる地域(ベッドタウンor都市中心部)は都市の安全を確保するためのコストが高くつくことになる。ジェーン・ジェイコブスは「目のある通り(Eyes on the Street)」の概念を主張し、通りに面した建物や歩行者が自然な監視を行うこと、また商業・住宅等多様な用途の建物が混在することで常に人の目が存在する状況を作り出すことが、通りの画期と安全性を高めるとした。
実際、地方の人の気配のないまちでは、特に女性にとって安心して出回ることができない。斯かる観点からも、まちなかでの賑わい創出と効率的な都市の安全性向上の観点から、職住近接を促すまちなかのファミリー層向けの低廉で高品質な住宅供給を増やす必要がある。一方で、自治体保有の遊休地も多いところ、例えば、官民連携による木造住宅開発による安価で高質な住宅供給が考えられる。
真の地方創生のための船中八策
船中八策①(地域の遊休資産を活用するまちづくり会社の設立)
空きビル空き家等地域の遊休資産を活用・リノベーションして、クリエイターの表現の場をつくる。地域のオーナーまたは自治体が遊休資産を用意し、クリエイターに安価に貸し出す。
ここでのクリエイターとは所謂デザイナーやアーティストだけではなく、大量生産による規模の経済で価格と品質で勝負する大手チェーンに対抗するような、地域資源を活用した衣食住に関わるライフスタイルを提案する起業家を指す広い概念である。
この際、地域のオーナーまたは自治体から土地と建物をマスターリースにより借り受け、建物を貸与できるようリノベーションし、管理運営する共同出資会社を設立し、地元有志が出資する。この地元有志とは、後述するその地域でのまちづくりの企画運営にコミットする人材、事業者である。また、まちづくりに賛同する個人としての公務員も含む。
一方で、継続的な商業的成功に対するコミットと議会同意等の制約を回避した自由且つ機動的な運営をするため、補助金は用いず民間主導の独立採算を基本とする。
稼いだ収益(テナント家賃−マスターリース料)は、リノベーション費用と運営管理費用、オーナーへの変動収入としての還元、他の地域におけるプロジェクトへの資金として積み立てる、といった3つの用途に用いる。
こうした取組みの前提として、下述の下準備が必要になる。
船中八策②(まちづくりの初動としてのコミュニティナース)
クリエイターと発掘のために、共同出資会社の運営者・出資者候補としてファーストペンギンとなる意欲のある人物がコミュニティナースの機能を担う拠点を地域で設ける。拠点は図書館等、地域住民が自然と集まる場所が望ましく、地域の実情によって郵便局やスーパーの一角等を検討し、できるだけコストをかけずに始める。この拠点からコミュニティナースとして地域でお節介焼きの輪を広げ地域での信頼を積み上げつつ、賑わい創出のためのマルシェ開催等の取組みを仕掛けていき、まちづくりに意欲のある上述の共同出資会社の企画運営にコミットする出資者候補と自分のアイデアや作品を事業として外部に表現したいクリエイター候補を探していく。その中で、街の変化の兆候があれば積極的に関わっていき、その背景にあるものを捉えることが必要である。
船中八策③(まちづくりコンセプト策定と地ならしの進め方)
お節介焼きのつながりを作っていく中で、地域の顔役的な事業者、人物を取組みにポジネガ関わらず捕まえることが重要で、できるなら自陣営に引き込むことで、芋蔓方式で地域のネットワーク構築とそのお墨付きを得たい。
また、自治体と連携する座組み構築も必要である。公有資産の利活用は彼らの協力なしでは進められない。ただ、タイミングは上記の地域でのキープレイヤーを抑えてからが良い。お願いという行為は、お願いの中身ではなく誰がお願いするかが重要だからだ。
また、こうした取組みと同時に、客観的な地域分析と地域の内需をふまえた筋の良いまちづくりのコンセプト策定を行う。策定したコンセプトをあらかじめ、上記のキープレイヤーや自治体に説明しておき、あたかも彼ら自身が自ら選んで作ったもの、という建て付けにしておくことが協力を得るために重要である。
船中八策④(まちづくりのエコシステム構築)
顧客を確保した起業家はリノベーション施設を卒業し、まちなかで自分の店舗を構えていく。また卒業生はOBとして起業家をノウハウ、資金含めて支援する正の連鎖を生み出す。そうして地域アイデンティティ、シビックプライドを醸成することかできれば、地域の不動産オーナーは自発的に保有不動産を供与するようになる。
核になるのはまちの中心地。各店舗の集客と相互誘客、そしてウォーカブルなインフラ整備を進めることで人の回遊性を高め、密度の経済をつくっていき、まちづくりのエコシステムを構築する。
船中八策⑤(職住近接に向けた低廉良質な住宅整備)
働く場に加えて職住近接を促すことで、まちの賑わいと安全性を高めていく。そのためには、①まちなかにリノベで居住できる家屋があれば自治体や地域の不動産会社等が積極的に購入、リノベを行い安価に賃貸する、②空家となり時間が経ち再利用が難しい物件は自治体が土地建物を買取り、自治体の遊休地も含めて、まちなかに新たに安価で低廉な木質の公共住宅を創ることが望ましい。
船中八策⑥(エリアマネジメント会社の設立と地域新電力)
まちづくり会社の取組みが軌道にのってきてまちとして策定したコンセプトに対する機運が高まってきた(シビックプライドの醸成機運が高まってきた)段階で、エリアマネジメント会社を設立する。策定したコンセプトの実現に必要なまちづくりの要素、公共財の構築に必要な投資は斯かるエリアマネジメント会社が担う。出資者はまちづくりの取組みの中で本気でコミットできる有志と、公共の領域における開発と後述する公共施設への売電収入確保を円滑にするべく地元自治体からの出資を募りセイムボートの座組みを作る(ただしマジョリティは本気の有志で進めていける出資構成とする)。
公共財の投資資金は、地域新電力事業を設立し、その売電収入で賄う。当初は売電収入を公共施設から確保しつつ、徐々に地域電力需要を斯かる地域新電力事業で担うことで、エネルギー消費に伴う資金の地域外への流出を防いでいく。
船中八策⑦(地域間連携による倒幕(中央集権行政)機運の向上)
上記のまちづくりに取り組む有志の地域同士が相互に取組み内容を連携・同盟を結ぶことで、まちづくりは中央行政が決めたモデル事例を模倣して行うものではなく、また補助金漬けになるのでもなく、地域のそこにしかない価値を、自分たち地域住民の力でしっかりと収益化し、自立して目指すべきまちのあり方に向けた持続的な投資を継続していくもの、という機運を日本各地で高めていく。
船中八策⑧(地域主導の国家構造への維新)
元々日本は全国各地で同じ言語を共有し、同族意識が強い。また高規格の道路交通網や高速鉄道が全国津々浦々を結びつけたそとで時間距離も近い。商業の在り方も、画一的なライフスタイルを前提としたチェーンビジネスが広がることになった。結果として、東京で大資本が知的生産したビジネスモデルに基づき、東京資本が全国の地方市場を支配する構造になった。その象徴が郊外ショッピングモールに代表されるところ。
最大の問題は、田中角栄の列島改造論や国土開発計画に代表される通り、政府は過去地方開発を企図して、上記の通り全国津々浦々で交通インフラを整備したことで、むしろ経済構造としての地方の東京支配を推進してきたことにある。地域の需要は東京資本に食いつぶされ、補助金や交付金で所得を確保する、またまちづくりの取組みも中央政府が用意する先端モデルを目指す(そうでなければ公金が引っ張れない)、といった中央依存の社会・経済構造という、何とも情けない有様になってしまった。このようなまちの有様、ひとの有様を続けていて、本当に日本人は幸せなのだろうか。
ゆえに、今後は地域主導による、真の多極分散型構造にする必要がある。
そのためには、政府が中央集権的に再配分する資源を頼りにするのではなく、どこかの先進事例を模倣するのでもなく、地域がそれぞれの地域資源を活用し、内発的に、そこでしかない価値を生み出していくことが求められる。
そのとき、日本の各地域は住む人も来る人も心豊かになる場所に維新されることになるだろう。