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普及価格帯のカベルネソーヴィニヨンを飲み比べしてみた。


安旨の赤ワインを探すシリーズの2年目


昨年の冬から春は国と品種は様々に、近所のスーパーでほぼ税抜き3桁で買える赤ワインを比較しました。

今回も品種色々とで前年に試せなかった赤ワインのボトルを集めようと近所のスーパーの棚を見ていましたが、それだけでは面白くないなと思い一旦取りやめにして過去に飲んだ赤ワインの記録を見直すと、思ったほど主要国際品種であるカベルネソーヴィニヨン単一のボトルの経験が少ないことに気がつきました。

そこで近所のスーパーだけでなく、酒類の量販店まで探索範囲をひろげて、また、物価上昇の影響も考慮して割引含めて税抜き3桁から1,300円未満でカベルネソーヴィニヨンの単一に絞って良品を探すことにしました。

第一グループ 500円近辺

カスティーリョサンシモン Castillo San Simon/Cabernet Sauvignon

スペイン

★★★⭐︎(3.5点)

タイミングが合わなかったり、体調崩してしまったりで新年の節目の良さげなワインを開ける状況ではなくなってしまいました。なんとか体調は回復したので、元々計画していた普及価格帯のカベルネソーヴィニヨン単一の飲み比べをして、厳しい条件を乗り越えられる良品を探すシリーズを開始します。

名前が安い酒類の量販店で税抜き0.5k、インポーターは総合商社の兼松、Alc12.5%、NVなのは品質を安定させる為に複数の年のものを混ぜていると予想、若々しく見えるルビー、黒ベリー中心に酸っぱそうな赤ベリー感、湿った苔、要素は多くありませんし、アルコールはちょいジカジカしますが価格を考慮すれば許容範囲内、明瞭な酸味とスパイス感、ダレない絞り気味な甘味はなかなかのものです。

初日はナッツ入りパン、冷凍シュウマイ、安売りチーズ、2日目は鶏レバーの甘辛タレがけ、ハムカツ、大根ざく切りと雑な簡単なつまみですが、ちょうどいい気楽さが吉でした。

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ダンシングフレイム Dancing Flame/Ojos del Salado Cabernet Sauvignon

チリ

★★★⭐︎(3.5点)

普及価格帯の赤ワインならチリを外すわけにはいきません。ダンシングフレイムのCS単一、三菱食品が手掛ける化け物。

とはいえおそらくスーパーでは最も低価格帯なボトルで、割とワインコーナーの棚の最下段に並んでいます。割引有りで税抜き0.45kくらい、Alc13%、紫色強めな濃く透けないルビー、黒ベリーベースにムスク系のバラ、素直なバランスの酸味で甘味はこの価格帯では抑え気味、食事とのマッチングをきちんと意識していてびっくりします。

難しい事抜きにワインがあまりわからない方の家飲みや、肉類に予算をしっかり掛けたい若い男性多めなBBQ、低価格帯の洋風居酒屋チェーン店なんかにあったら、食事を引き立てる良い伴奏者の役割をこなせるのでは? 時々はこういうワインを飲んで、生意気な自分の感覚をリセットしていきたいものですね。

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サンタカロリーナ Santa Carolina/Cabernet Sauvignon

チリ

★★★⭐︎(3.5点)

舐めてました、近所のスーパーの割引有りで税抜き約0.5k、サントリーが取り扱いのベーシックラインのCS単一、Alc13%、こちらも透けないルビーですが、ダンシングフレイムよりは僅かに明るい感じ、黒ベリーベースにチェリーとかの酸味、胡椒感は程よい感じ。こちらも残糖は少なめで、スーパーで調達できる惣菜や、洋風居酒屋チェーン辺りで出て来る食事には丁度良さそう。

チリのベーシックラインのワインはもっと残糖多めで、ワインが得意ではない層に向けた妥協に満ちた造りだと想像していましたが、健康志向な時代は甘味に寛容ではないのかも知れません。

初日は野菜類が傷みそうだったのを一掃するためな、肉野菜をパウチのトマトベースのパスタソースでの炒め煮、2日目はベリー入りパン、鶏肉の揚げ物、ほうれん草とかの和物惣菜。余裕あるバランス感。

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第二グループ 800円から1,100円未満


コントルパロワ Contre-Parrois/Cabernet Sauvignon

フランス

★★★(3.0点)

安売りが店名な酒類の量販店で税抜き1.0k、フランスのラングドック・ルーションの広域Pays D 'Ocの生産者組合?のもの、とりあえず安旨ワインの可能性があるエリアですね、インポーターは巴ワイン アンド スピリッツさん。

2022年はヨーロッパが猛暑に苦しめられた年、南仏はかなりの暑さだったことが想像できます。Alc13%、グラスに注ぐと縁がほんの少しだけオレンジがかったガーネット、熟した黒ベリーはダークチェリー、干したプラム、タンニンは柔らかく果実味強め、酸味はあるのですがそれを覆い尽くす甘味は、イタリアのアパッシメントやプリミティーボの雰囲気、乾燥と高熱による葡萄の過熟が大きく品質に影響したのでは?

食事後に雑に開けた初日はもみじ饅頭と、2日目は鶏レバーの甘辛煮惣菜とそこそこに適合、酸味星人な自分には得意分野ではありませんが、品質面はそこそこに及第点、この価格帯にガタガタ言うのは無粋というものです。

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イーグルホーク Wolf Blass/Eaglehawk Cabernet Sauvignon

オーストラリア

★★★(3.0点)

オーストラリアの安いワインといえば果実味どーん、甘味どっしりと思うじゃないですか、普及価格帯のボトルですし、割と適当な品質だと思って開栓しました。 

近所のスーパーで割引ありでギリギリ3桁な約1.0k弱、Alc13%、濃い目な透けないルビー、湿った土系は若干あるも黒ベリーが支配、それでも裏で酸味がうまく支える感じで、残糖はしっかりありつつもキレがある後口、軽快感はなかなか、高級ラインも手掛ける大手生産者さんは普及価格帯にも手抜きはないのでしょう。

甘さべったりではない酒質がバランスをとっているので、初日、2日目ともスーパーで買える惣菜類との適合はそこそこ無問題、下手ではない適切な製品、1,000円クラスのワインはビールや焼酎、ノンアル含め同価格帯の様々な飲食物が競合となりますから、この辺りをしっかり考慮して評価に繋げたいところです。

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コノスル ビシクレタ Cono Sur/Bicicleta Reserva Cabernet Sauvignon

チリ

★★★★(4.0点)

そこいらで買える優秀なボトル、ワインをかじったらとりあえずは飲んでおきたい良品。

今回は近所のスーパーで割引ありで税抜き約0.8k、大きな容器で船で運んできて日本で瓶詰めしてるとかそういうことはないのかしらん? 関税優遇とかあってもクオリティに対して価格が安すぎます。

しっかりした紫の強い透けないルビー、黒ベリーにきちんとした酸味とスモーキーさ、白胡椒ぽいスパイスの切れ味が素晴らしい、コンチャイトロのディアブロと比較したい品質。

初日は鶏肉レバー、牛肉入りメンチ、根菜類のサラダ惣菜、2日目は胡桃入りパン、ヒレカツ、ほうれん草の和物惣菜で格安な晩酌をキメました。コンチャイトロの本気を感じる素晴らしい1本です。

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ケーダヴリューブイ KWV/Cabernet Sauvignon

南アフリカ

★★★★(4.0点)

大きな写真機屋さんで税抜き約1.1kを切る感じ、Alc14%もアルコール感は控えめ、エッジが僅かにオレンジがかったガーネット、スクリューキャップならではな開栓直後こそ還元的なニュアンスがありましたが、すぐに落ち着いて湿った苔、土、黒ベリーが覆いつつバランスの良い酸味と後口の適切な甘味が素晴らしい。

初日、セラー保管の2日目とほとんど香りや口当たりに変化なく、品質の安定感は圧倒的。

初日はこれの前の惣菜類を引き継いで、2日目はベーコン入りポテトサラダ、鶏モモ唐揚げ、アジフライ、揚げ物な青魚チャレンジは成功、SNSで繋がりのあるワインバーの方のお勧めにしたがって、酸味しっかり目な赤ワインなら魚の臭みを拾わないという知見を得られました。

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クマ Michel Torino/Cuma Organic Winemaker's Selection Cabernet Sauvignon

アルゼンチン

★★★⭐︎(3.5点)

名前が安売りな酒類量販店で税抜き1kちょい、入手しやすい1本ですね。

Alc13.5%、しっかり目なルビー、ブルーベリー、土ぽさ、軽めな白胡椒感、バランスいい残糖感の初日は素直で飲みやすい雰囲気。要素は多くないけれど、しっかり目な食事と合わせて活きると思います。

初日に飛ばしすぎて2日目は少ししかありませんでしたが、スクリューキャップをしっかり閉めてセラー保管からでもまったりし過ぎてちょいダレ気味、複数名で開栓からすぐに飲んでしまう方が良さそう。初日だけなら4.0でした。

食事は豚レバーカツ惣菜、鰯の竜田揚げ惣菜バルサミコ酢がけ、クルミ入りパン。前回に引き続き試した酸味が立ち残糖感多くない赤ワインと青魚の組み合わせの良さは盲点、臭みを感じないので酸味が穏やかな白ワインよりも遥かに合わせ易い。残糖感多い赤ワインはどうなるかのテストは必要です。

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第三グループ 1,100円から1,300円未満


サルトーリ Sartori di Verona/Organic Cabernet Sauvignon

イタリア

★★★(3.0点)

スーパーで買える気楽なボトルなのに何故かコルク、割引後税抜き1.1kちょい。取り扱いは大手のモトックスさん、ボトルにはVTの記載はなく複数年のものを使用しているのかも知れません。Alc12%、縁がオレンジがかった少し透け感あるガーネット、カシスとか黒ベリー感もアルコール度数の低さとともにとても軽く、やや肩透かし気味で飲みごたえがないのは寂しい。

初日は食事後にベリー入りパン、冷凍シュウマイ、2日目はカマス、笹カレイの干物、気温が高めだったのでバルサミコ酢かけて冷奴。軽すぎだけれど酸味はそれなりにあるので食事とはぶつからずに済みました。

もう一声欲しいと感じたのは、これよりちょっとだけ安いボトルのクォリティが高過ぎたせいなのかも知れません。3k越えのボトルには寛容なのに1k近辺の価格帯には厳しいオタクの性、贔屓のイタリアワインには頑張って欲しかった。

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ルーツ California Roots/Cabernet Sauvignon

アメリカ

★★★⭐︎(3.5点)

スーパーなんかで買える気楽なボトル、税抜き約1.2k強と今回のリーズナブルなCSシリーズ中で最高値(安いけど)、しっかり紫な濃いルビー、たぶんスミレとか黒ベリー、白胡椒感、酸味が下支えする適切な甘味はバランスが悪くなく、初日は酸味大好きなアタクシでもちょうどいい感じ、2日目は少し甘味が前に来ましたが許容範囲。

初日は冷凍してたキノコたっぷりなスープ餃子、2日目は金沢から届いた小ぶりながらも脂の乗って上品な身質のノドグロの干物や、バルサミコ酢かけた冷奴など、酸味キリキリでなかったので魚とのマッチングはギリギリセーフも最適解ではありません。何事もチャレンジが大事、刺身とか青魚の干物なんかは赤なら冷涼地ピノノワールやもっと酸味やスパイス感に振ったCSやシラーなら合うのでは? 白ならSBやしっかりと酸味に振ったアルバリーニョ、アシルティコ、グリューナーヴェルトリーナー、リースリング辺りならいけそう。樽香が効いたふくよかなシャルドネなんかは確実にぶつかります。

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ロシェマゼ Roche Mazet/Organic Cabernet Sauvignon

フランス

★★★⭐︎(3.5点)

安旨ワインの王道、フランスのラングドックルーションのペイドック名義で造られるロシェマゼの2020、スクリューキャップ、誇らしげにオーガニックの文字、近所のスーパーで割引後税抜き約1.1k強、体力のある大手生産者さん、取り扱いは国分さん、日本の強い商社さん、消費者に適切な価格で販売する流通業者さんがあってはじめて実現出来る、価格帯比で良質なボトルだと思います。

透けないガーネット、香りは強くありませんが、カシスとかの黒ベリー、白胡椒、食事を引き立てる甘味は抑え気味な良いバランス、初日は金沢から届いたサワラの昆布〆のお刺身と冷奴、2日目は気温がぐっと下がったので、アジ、カマスの干物、温めた豆腐で和食攻め、レモンで臭みを抑えれば上手くいきそうなところ、焼いてそのままだったのでちょっとだけ臭みを拾ってしまったアジの干物はご愛嬌、カマスは無問題、酸味やスパイス感ある赤ワインと青魚の可能性は無限大。

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終わりに

なんといっても今回強く思ったのは、集める段階が楽しすぎて本数が多くなってしまい、シリーズ後半には修行のイメージが強くなって、早く飲み終えたいと感じたのが問題でした。誰に頼まれた訳でもないのにどうなっているのか?

それでも結局は好みの問題もありますが、コノスル ビシクレタとKWVは圧倒的に強かったこと、ロシェマゼとルーツ、ワンコインレベルの第一グループの3本は光るものがありました。価格帯比で納得がいくかどうかが評価の分かれ目になる普及価格帯のワインは、「このくらいがちょうどいい」が大事です。生意気に偉そうなことを話したり書いたりしてしまう自分を諌める時間も年間の中で少しはあった方が良いです。お財布にも優しいし。

あと、集中的に赤ワインを飲む際の食事に、思いっきり和な魚の干物を合わせて破綻しないことがわかったのは収穫でした。スーパーの惣菜コーナーや、伊豆なんかに出かけた際の買い物に、消費が追いつくかどうか躊躇しなくて済むのは素晴らしいです。

この手の企画はまた来年の冬、次は何をして遊ぼうかな。



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