インド式チャイ(スパイスミルクティー)を作る スクチャイDIY日記006 2024.11.11
<序・ダージリンの思い出>
インドでの思い出は尽きない。
以下は長い旅の中のほんの一瞬の思い出だ。
バングラデシュを鉄道で旅していた吾輩は、日が暮れてから最北西端の終点駅パンチャガールに到着し、地元の人に教えてもらった駅から近くのゲストハウスに一泊した。
電気もない宿で手持ちの懐中電灯だけが頼りだったが、一泊30円(日本円換算。300円の入力ミスではない)と激安だった。
そもそも町自体も真っ暗で、駅のホームにある木だけが明るく賑やかだった。
しかしそれは街灯ではなく、ホタルが木に密集してクリスマスツリーのように集団で点滅しているのだった。
日本のホタルよりも点滅が早かった。
ともかく、終点の駅で吾輩を出迎えてくれたのは、町の街灯ではなくホタルだったのだ。
翌日、乗り合いトラックとリキシャで、陸路で国境を越えインドに入国した。
その日はインドに入ってすぐの国境の町シリグリの安宿(1泊1ドル=100円)に宿泊した。
電気はあったが裸電球一個の部屋の中は蚊が1,000匹以上飛びまくっていた。宿の人に殺虫スプレーを借りて撒くとベッドのシーツや床が蚊だらけになり、ほうきで払ってまとめると床に高さ10cmくらいの蚊の山ができた。
翌朝、ニュージャルパイグリ駅からミニ蒸気機関車が牽く列車に乗り、1日かけて終点のダージリンに降り立った。
ダージリンはイギリス統治時代に避暑地として開発された場所で、今も西洋風の建物がたくさん残り、インドらしくないきれいな建物と道のあるおしゃれな町であった。
しかし急坂だらけだった。
標高が2,000mを越えていて坂を登ると息切れがし、インドの平地での格好では身震いするほど寒かった。
マーケットに行くと、アフロヘアーで長身のオレンジ色の袈裟を着た男のポスターを売っている店があった。
インドの芸能人かと思い、店のおばちゃんに誰かと訊いてみたら「サイババ」と答えた。
サイババとの出会いはこれが最初である。
それまでサイババなんて知らなかった。
吾輩は東南アジアを1年余りも放浪し続けていて疲れていたこともあり、休養を兼ねてダージリンで3週間ほど過ごした。
宿賃は一泊2ドル(当時200円)ほどだから長居しても大した出費ではない。
郊外に散歩に出ると、世界第3位の高峰カンチェンジュンガが見えた。
今、自分がヒマラヤ山脈の一端に居ることに感激した。
町なかではインド人以外にチベットからの移民やネパール人も目立ち、みんな民族的な柄の厚ぼったい温かそうな衣装で身を包んでいた。
人々は皆もの静かでおっとりしていた。
ダージリンでは車はめったに走らず、その代わりに馬車の蹄の音と馬の鼻息と首のベルの音が道を行き交っていた。
ひたすらの静けさと平和な町ダージリンという印象だった。
暑い平地に住むインド人にとってダージリンは避暑地だ。
インドの富裕層一家が垢抜けた格好で長期休暇を過ごしにやってきていた。
彼らは礼儀正しく、日本人の吾輩に興味をもってくれ、恥ずかしそうに話しかけて来たりした。
日本人と話をするのが初めてだ!と感動して目を潤ませた兄ちゃんもいた。
なんだか世界スターにでもなった気分だった。
吾輩は、今自分が異世界にいるのだという喜びでいっぱいだった。
地球上にこんな楽園のような場所があったなんて!
吾輩は、街に出て食事をした後に、決まって道端のチャイ屋でチャイを飲むのだった。
小さい茶碗に入った、香辛料の効いた甘くて濃厚なミルクティーは、吾輩の冷え切った身体を温めてくれた。
道端の店でも腰掛ける低い木の椅子が置いてあって、座って飲める。
チャイを飲みながらいっときそこで休憩し、道行くインド人やチベット人を眺めるのが気に入っていた。
さて、現実にもどって今吾輩は日本にいる。
日本もそろそろ肌寒い11月になったが、寒い頃になるとダージリンで過ごした日々を思い出すのだ。
あの時毎日飲んでいたチャイが飲みたくなった。
自分で再現してみようと思い立った。
1.材料(標準の目安)
・GABANの香辛料3種
シナモンスティック1本、カルダモン4粒、クローブ4粒
・紅茶葉 ティーバッグなら4袋(つまり4杯分)
銘柄はダージリンかアッサムがチャイに合うようだ。
・牛乳 400ml
・砂糖 適量
より甘くした方が現地の雰囲気が出る。
・水 400ml
今回は入れなかったが、スパイシーなのが好きならばブラックペッパーとショウガも準備すれば良い。
実はインド現地のチャイはスパイシーなのでブラックペッパーとショウガを入れた方がより雰囲気が出る。
また、より現地の濃厚さに近づけたければ牛乳+砂糖の代わりにコンデンスミルクをたっぷりと使えば良い。
但し日本では牛乳+砂糖よりもコンデンスミルクの方が高価なので贅沢になってしまう。
現地ではコンデンスミルクは安いし保存できるので多用されている。
これらの分量はあくまで標準の目安であり、自分向けに適宜分量を調整すれば良い。
2.香辛料を擂りつぶす
シナモンスティック1本は手で4等分かそれ以上に折って粉砕する。
カルダモン4粒は表皮を剥いて中身の黒タネを取り出しすり鉢とすりこぎで粉砕する。表皮も使うので捨てない。
クローブ4粒はそのままでも良いが粉砕した方がより良い。
3.水を入れて沸騰させる
以上を鍋に入れ、水を400ml入れ、火にかける。
ガスコンロにかけ、沸騰させる。
4.お湯が茶色に染まる
そのまま2分ほど沸騰させると次第に色が付いてくる。(沸騰時間はお好みで)
香辛料の香りも漂ってくる。
ああ、インドの香りだ!
5.紅茶葉を入れる
火を消し、紅茶葉を入れる。
ちなみにチャイ用の紅茶葉はダージリンかシッキムが良いようだ。
これらは北インドの銘柄だ。
写真ではティーバッグ2袋しか写っていないが、4袋使った。
袋をハサミで切り、中身の葉を入れた。
そして再び2分ほど沸騰させる。
(沸騰時間はお好みで)
煮出して好みの濃さになったら火をとめる。
6.牛乳と砂糖を入れる
写真ではあふれかえる寸前だが、鍋の大きさは余裕をみた方が良い。
このまま煮沸寸前の状態で煮出す。
突沸に注意。
時間は2~4分ぐらいで充分だが、お好みでもっと長くても良い。
ちなみにインド現地では炭の上に鍋を置いてひたすら煮沸し続けているチャイ屋さんをよく見かけた。
煮詰まれば煮詰まるほどうまいのかもしれない。
7.標準チャイの完成
8.反省
・・・オシャレでやさしすぎの味だった・・・
・・・ダージリンで過ごした日々の「ダ」の字も思い出せなかった・・・
・・・手間をかけた割にはかなり不満だ・・・
・・・・・・
今回はあくまで標準の分量とやり方で作ったチャイだ。
現地ではもっと香辛料パンチが効いていて濃厚ミルクで強烈な甘さなのだ。
今回の分量を参考に、適宜分量を増やすなり、ブラックペッパーやショウガを加え、砂糖をアホほど入れるなどして(あるいはコンデンスミルクを気前よく使うなどして)自分向けのチャイをあみだした方がいい。
今回は残念ながらダージリンの雰囲気は出せなかった。
(おわり)
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