アプリゲーム開発へこれから挑戦する方へ
ゲームアーキテクトの米元です。
今回は、ゲーム開発に興味を持っている、ゲーム開発未経験の会社さん向けの記事になります。内容は、ゲーム開発未経験の会社さんが陥りやすい失敗についてです。特に「ちゃんとしたゲームを作る」ことについて焦点を当てていきます。
ご存知の通り、アプリゲーム市場は成長を続けており、参入を考える企業も多いですが、実際に成功するのは一握りです。特に、ゲーム開発の経験がない企業が「ちゃんとしたゲームを作る」ことは、それ自体が大きなチャレンジです。
前回の記事はこちら
ゲーム開発の失敗とは?
失敗の定義
まず、ゲーム開発の失敗とは何かを考えてみましょう。これは、大きく分けて以下のようなものです。
ゲームそのものが完成しない、期待通りに動作しない(そもそも作れていない)
ゲームが売れない
ゲームが売れ「続け」ない
この記事では、1.の「ゲームそのものが完成しない」理由について深掘りしていきます。
アプリゲームの三大要素と失敗パターン
アプリゲーム開発には大きく分けて「デザイン制作」「フロントエンド実装」「バックエンド実装」の三つの要素があります。これらをしっかり作り上げることが必要です。しかし、これらの各要素がうまく作れないということが、アプリゲーム開発未経験の会社さんではよく起こります。
デザイン制作での失敗
デザインは、ユーザーが最初に目にする部分です。しかし、開発未経験の会社さんだと、思った通りのデザインが出来上がらない、モーションなどがそもそも動かないなどの問題が頻繁に起こります。例えば、デザイナーに依頼したグラフィックが期待と違ったり、動かないアニメーションが納品されたりすることがあります。
フロントエンド実装の失敗
フロントエンド実装はユーザーが実際に操作する部分の実装です。ここでの失敗例として、企画段階で思い描いていたものと違う画面配置になったり、操作感などが意図と違って悪いなどが挙げられます。これもデザイン制作と共通の問題です。
バックエンド実装の失敗
バックエンドはアプリゲームの裏側を支える部分です。アプリゲーム開発に特化したサーバーの作成や通信の管理、インフラの構築、安全性の確保などが求められます。特に、ゲームでは大量の要素を管理する必要があり、これを適切に処理できないとゲーム全体が機能しなくなります。ここのところで失敗してしまうケースも多いです。
プランニングの重要性
ここまでゲームの3大要素での失敗について解説しましたが、その失敗の根本にあるのがプランニングの部分です。アプリゲーム開発は企画段階でしっかりと仕様を決めることが不可欠です。わかりやすい例でいうと、無限増殖バグのような致命的なバグは、企画の仕事であるパラメータ設定ミスから生じることが多いです。また、ダメージ計算の不具合なども、仕様の誤りから発生することがあります。このように、プランニングの失敗がその下流工程である各種製作や実装に悪影響を及ぼすことが多いです。
優秀なプランナーの役割
プランニングを行うのはプランナーですが、優秀なプランナーとは、ゲームのビジョンを明確に言語化し、そのビジョンをデザイナーやエンジニアに正確に伝える能力を持つ人です。具体的には、ユーザーにどのような体験を提供したいかを明確にし、その体験を実現するための仕様を作成することが求められます。この役割は非常に重要で、ゲーム業界でも優秀なプランナーは非常に重宝されています。
大手企業でも難しいプロセス
大手のゲーム会社でさえ、プロデューサーのビジョンを正確に反映させることは難しいとされています。経験豊富なプロフェッショナルたちが、プロデューサーと綿密にコミュニケーションを取り、詳細な仕様書を作成することで、ようやく実現しています。このプロセスは多くの経験と知識を必要とし、簡単なものではありません。
ここまでで「ゲームをちゃんと作る」ための基礎を理解していただけたと思いますが、もう少し具体的に、どのようにすれば良いのかを解説していきます。
具体的なプランニングのプロセス
ゲームコンセプトの明確化
最初のステップは、ゲームのコンセプトを明確にすることです。
どのようなゲームにしたいのか、どのような体験をユーザーに提供したいのか(UXポリシー)を具体的に言語化します。例えば、「ユーザーに冒険のワクワク感を感じてもらいたい」といった具体的な感情や体験を定義します。
仕様書の作成
次に、そのコンセプトを基に詳細な仕様書を作成します。この仕様書には、ゲームの各要素(キャラクター、ストーリー、ゲームプレイ、UIなど)についての具体的な説明が含まれます。これにより、デザイナーやエンジニアがゲームのUXポリシーを正確に理解することができるので、意図したゲーム開発を行えるようになります。逆にこれらがないとゲーム開発は失敗すると言っても過言ではありません。
実装とデザイン制作
仕様書が完成したら、次は実装フェーズに入ります。ここでは、デザイナーやエンジニアが、プランナーと密にコミュニケーションを取りながら、制作や実装を進めていきます。ここの工数は、前工程のUX設計や仕様書作成の精度で決まります。開発の失敗の多くはここで起こっているように見えますが、実際はその前行程のプランニングの段階で失敗が決まっていることがほとんどなのです。
また、一度仕様書を作成して仕様通りに実装すれば終わりではありません。開発の各段階でフィードバックを収集し、必要に応じて仕様やデザインを改善していきます。
これにより、最終的にユーザーが満足するゲームを作り上げていきます。
優秀なプランナーの役割
では、優秀なプランナーとはどのような役割を果たすのでしょうか?
UXポリシーの言語化
優秀なプランナーは、ゲームで提供するユーザー体験、UXポリシーを明確に言語化する能力を持っています。これは、プロデューサーの漠然としたアイデアを具体的な仕様や設定値に落とし込み、デザイナーやエンジニア含めた他のメンバーが理解しやすい形で伝えることを意味します。
技術的な理解
ゲーム開発における技術的な制約や可能性を理解していることも重要です。これにより、現実的かつ実現可能な仕様を作成することができます。
コミュニケーションスキル
プランナーは、さまざまなチームメンバーと効果的にコミュニケーションを取る能力が求められます。これには、デザイナー、エンジニア、マーケティング担当者などが含まれます。全員が同じビジョンを共有し、目標に向かって協力できるようにすることもプランナーの役割です。
ユーザー視点の理解
最後に、ユーザーがどのような体験を求めているのかを深く理解することが不可欠です。ユーザーのニーズや期待を把握し、それに応えるゲームを作ることが、成功への鍵となります。
失敗を避けるための戦略
アプリゲーム市場への参入に際して、未経験の企業が成功するための鍵は、自社でのゲーム開発・運用のリテラシーを高めることにあります。
また、適切なパートナー企業を選び、効果的に協力して開発を進める能力も極めて重要ですが、そのためにもアプリゲーム開発運用に対するリテラシーを上げて選球眼を磨くことが大事になります。
以下に、そのための具体的なアプローチを紹介します。
ゲーム開発・運用のリテラシーを向上させる
ゲーム開発は複雑で専門的な知識が求められるため、自社のリテラシーを高めることが不可欠です。これには、業界の動向を理解し、ゲーム設計、ユーザーエクスペリエンス(UX)、プロジェクト管理、各種技術知識など、ゲーム開発に関連する各分野の知識を深めることが含まれます。また、定期的な研修やセミナーの参加を通じて、最新の技術やトレンドを学ぶことも効果的です。これにより、社内でゲーム開発プロジェクトを適切に管理し、戦略的な判断が可能となります。
適切なパートナー企業の選定
成功するためには、信頼できる開発パートナーの選定が重要です。ただし、アプリゲーム開発未経験の企業にとって、適切なパートナーを選ぶこと自体が難しいです。少なくとも、下記の2つを満たすパートナーを必ずつけることが必要になります。
・ゲームのUXを明確にして、それを各種仕様や設定値に落とし込めること
・ゲーム固有の技術面の要件を理解していること
パートナー企業との効果的な連携
パートナー企業との連携においては、
・UXポリシーの共有
・明確な役割分担
・透明性とコミュニケーション
の3つが鍵となります。
ゲーム業界外の方にとっては意外かもしれませんが、UXポリシーをプロジェクトメンバー全員に共有できるかどうかが最も重要となります。逆に、UXポリシーが曖昧であったり、ゲームの企画を複数の人の意見を参考に作成しており統一感がない、というような場合は、確実にゲーム開発は失敗に終わります。
特にゲーム業界外から参入される方は、ここが失敗の原因であることに気づかずに失敗を繰り返すということが散見されます。
また、明確な役割分担についても、パートナー企業との役割分担が不明瞭だと抜け漏れが発生しがちなので、最初の段階で役割分担を明確にすることが重要です。そのうえで、初期段階からUXポリシーを共有し、定期的なミーティングや進捗報告を行うことで、双方の期待を一致させ、問題が発生した際に迅速に対応できる体制を整えることが重要になります。
まとめ
ゲームを作るというプロセスは、多くのポイントや落とし穴が存在します。デザインやエンジニアリングのスキルも重要ですが、それ以上にユーザーに提供したい体験の方針=UXポリシーを明確に定義し、その体験を実現するための仕様や設定値をしっかりと作り上げることが不可欠です。このプロセスを理解し、実行できるプランナーがいなければ、どれだけ優秀なデザイナーやエンジニアが揃っていても、思い通りのゲームを作ることは難しいでしょう。
次回は「売れるゲームを作るためには?」について詳しく解説していきます。お楽しみに!
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プレアナでは、「数値遊びの創造」で新たな価値を創造すべく、ゲームを中心としたエンタメの面白さの数値化に日々取り組んでいます。
今回の記事で挙げたようなゲーム開発未経験の会社さんでも、スムーズに省工数でゲーム開発開発運用が可能なエンジンの開発なども行っており、「数値遊びの創造」を実現するための各種プロジェクトも実施しています。
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