経済圏設計と新規ユーザー集客の関係性 - 新規ユーザー獲得のためのBCG戦略②
ゲームアーキテクトの米元です。
今回は、前回の記事に引き続き、ブロックチェーンゲーム(BCG)で経済圏設計が新規ユーザー獲得に与える影響について書いていきたいと思います。
経済圏設計とユーザー獲得の関係について
新規ユーザー獲得のためには、体験価値がめんどくささを上回る必要があるというお話は前回書かせていただいたのですが、おそらく、体験価値=新鮮さをイメージされた方が多いのではないかと思います。
もちろん、F2Pではできないような経済圏設計の面白さが新鮮さに繋がる部分は大いにあるのですが、今回は新規ユーザー獲得のもう一つの側面について解説していきたいと思います。
まず前提として、新規ユーザーが獲得出来ているとはどういう状態を指すのか、について解説したいと思います。
実は、単純に集客するだけであれば、膨大な広告費を払って集客すれば、理論上は集客は可能になります。ユーザーが稼げるということで話題になったP2Eタイトルは、ある意味それは広告費の側面もあったと思いますが、たとえ新規ユーザーを無理やり集めても、結局長く遊んでもらえなければユーザーは増えないことになり、これでは新規ユーザーを集客できているとは言い難いです。
そして、現状のBCGでは、広告費をかけてもユーザーが定着しないのでペイしない状態が続いています。(そうでないなら既にヒットタイトルが出ていますので)
なので、新規ユーザーの集客については、
①入り口として、新鮮な体験価値の提供で「まずは遊んでみたい」と思ってもらうこと
②「継続して遊んでみたい」と思ってもらえることでユーザーが積み上がっていくこと
の2つが揃っていることが理想です。
前回の記事で①について解説したので、今回の記事では、この②のユーザーの積み上がりについて解説していきたいと思います。
経済圏設計とユーザーの継続について
ユーザーが継続して遊んでみたいと思ってもらえるようにするには、ゲーム設計自体が重要になってくるのですが、ざっくり説明すると、
大きな目標に向かって、飽きることなく長い時間育成をしながら徐々に壁を超えていく体感が出来るような設計
というのが理想的です。
これはBCGに限らず、パッケージゲームでもそうですし、最近ではF2Pゲームでもますますこういった体感の設計が重視されてきており、その結果様々な要素が取り入れられ、このゲーム設計は複雑化の一途をたどっていますが、BCGにおいてもこの要素は非常に重要で、どちらかというとこのあと説明する経済圏を成立させるために、大型タイトルと言われるようなF2Pゲーム以上に複雑なゲーム設計が必要となってきます。
そして、その上で、BCGでは経済圏設計をすることによって、相互に作用し長時間遊んでみたいというような設計をすることが重要になってきます。
例えば、トレードなどが例として分かりやすいですが、各ユーザーが攻略に必要な素材が足りなくなって、必要な素材などをお互いでトレードしつつ、攻略できるといったような設計が必要になってきます。
このような設計に向いているのがまさにBCGであり、こういう設計をすることで、ユーザー相互の関係性を強化し、ユーザーが長く遊べるようにしつつ、他のユーザーも呼び込みたくなるように作れることが理想となります。
実際、F2Pでも息の長いタイトルは、GvGなどのように、ギルドのゲームが入っていて、ギルド内のユーザー同士のつながりが強固になるように設計されており、そのためユーザーがより定着しやすい設計が上手く機能しています。
F2Pでは、通常、共闘という形のつながりのみですが、BCGではこれに加えてトレードなどでお互いの利益を共有する仕組みが入っている設計がやりやすいので、この設計を活かして、ユーザー同士がよりつながりやすくなり、その結果ユーザーが定着し、新規ユーザー獲得と定着に有利な設計を実現できることが望ましいです。
では、通常のF2Pの考え方とどこが違うのか、について解説していきたいと思います。
目標の多様化
まず前提として、ユーザーが長く遊べるようにするためには、BCGで提供する新鮮な体験価値をより強固にするような形で設計をする必要があります。
ここについては、F2Pもそうですし、パッケージゲームでもそうなのですが、F2Pやパッケージゲームで提供する体験価値は、殆どの場合は一人プレイでも成り立つように設計されています。
一人でも、ということは、もう少し違う言い方をすると、目指す目標がみんな同じ方向で、かつ育成などに必要な素材や攻略コンテンツが同じであるという状態になっています。
なので、長く遊べるようにするための仕組みは、この前提で設計されることが多いのですが、BCGで目指す新鮮な体験価値の方向性は、ユーザー間の相互の利益交換から成り立つ形であるため、長く遊べるような仕組みも、これをより強固にするような形で設計する必要があります。
そうなるとどういう違いが生じるかというと、従来のF2Pと違い、目指す目標が複数用意されている状態を設計する必要があります。
たとえば、あるユーザーは、Aというコンテンツを攻略するためにゲームをプレイしていて、他のユーザーはBというコンテンツを攻略するためにゲームをプレイしていたとします。
その場合は、それぞれ違うプレイサイクル、攻略ルートになっており、かつ、Aというコンテンツの攻略のためには、Bの攻略ルートの途中で手に入れられるアイテムが必要、Bというコンテンツ攻略のためにはAの攻略ルートの途中で手に入れられるアイテムが必要、という、お互いの持っているアイテムを交換したくなるような状態を作れれば、AとBで相互にトレードなどのニーズがある経済圏を作ることが出来ます。
ただし、単に複数の目標を入れてトレード出来るようにすればいいわけではなく、まずベースの遊び方としても、複雑でやりこみ要素のあるゲーム設計をした上で、相互に関係性の生まれるような経済圏設計が必要になります。
つまり言い換えると、F2Pの大型タイトルのような複雑なゲーム設計を、複数の目的が生じて相互のやり取りが生じる形にするため、F2P以上に更に複雑で緻密なゲームサイクル設計とバランス設計が必要になります。
例えば、一人でプレイする前提であれば、ちょっとバランスが悪い部分があっても他のユーザーのプレイにまで影響が出ないのですが、他のユーザー含めて相互にやり取りを生じさせるBCGでは、一つのバランス崩壊が全ユーザーのプレイ体験に影響を及ぼしてしまうため、F2P以上の複雑なゲーム設計に加え、経済圏の設計を緻密に行う必要があります。
どうやってやるのか
では、このような経済圏の設計はどのように実現するのでしょうか。
大きな壁は2つあり、
①相互取引が自然と成立するゲーム設計
②複数の目標が両立するゲーム設計
の2つを同時に成立させる必要があります。
当然ですが、ユーザー同士の相互取引が活発になるためには、漫然とゲームを作るだけではダメで、設計側として自然とそうなってユーザーが楽しめるような設計が必要になります。この視点は現行のF2Pでは殆どないので、ここが一つ大きな壁になります。
そして、2つ目の「複数の目標が成立する」も同じくらい難しいことなのですが、通常ゲームをする場合は、殆どの場合目指したいと思う場所は同じ方向線上に存在しています。
例えば、普通のRPGであれば、強くなって強いボスを倒せるようになりたい、というのはほぼ全員が目指す方向性であり、ユーザー毎に目標が分かれているように見えても、それはあくまでやりこみ度合いの違いであって、ゲームとしてこっちが目指す方向だよ、というのは概ね全ユーザーに対して統一されていることが多いです。
もちろんF2Pなどでも、ユーザーによって回復役や攻撃役などの役割分担があるゲームもありますが、基本的には強くなるためには同じようなレアアイテムを集めて強化するような方向性になります。
なので、ここの「複数の目標が成立する」設計の難しさが従来のF2Pではなかった部分であり、各社難しさを感じながら試行錯誤をしている部分となります。
次の記事ではこれらの具体的な方法について解説していきたいと思います。
まとめ
以上をまとめると、
・新規ユーザーの獲得=定着のためには、BCGならではの新鮮さと、継続的に相互にユーザーがやりとりする経済圏設計が必要不可欠
・そのためには、ゲーム内で複数の役割間で相互の利益交換と、それぞれのユーザー毎で異なる目標を設計する必要がある
・そのためには、大型F2Pタイトル以上に複雑なゲーム設計と経済圏設計が不可欠である
となります
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