なぜブロックチェーンゲーム(BCG)は普及しないのか? - 新規ユーザー獲得のためのBCG戦略①
ゲームアーキテクトの米元です。
今回は、業界が抱える悩みである、ブロックチェーンゲーム(BCG)の普及について書いていきたいと思います。
ブロックチェーンゲームの現状
現在、色々な開発チームが、新たなブロックチェーンゲームへのチャレンジをしていて、様々なゲーム会社さんが参入されたり、新しいBCGがどんどん発表されています。
一方で、現実に目を向けると多くの人が認識している通り、ブロックチェーンゲームはまだかつてのブラウザソーシャルゲームのような盛り上がりには至っていません。
では、普及が進まないのは何故でしょうか?そこについて解説していきたいと思います。
BCGが普及しないシンプルな理由
その理由は、シンプルに、
ユーザーの体験価値 < めんどくささ
であるからです。
逆に、かつてソシャゲが流行したのも、ソーシャル性という新しい体験価値と、携帯で遊べる手軽さから、体験価値もめんどくささも両方でプラスに働いたからです。
一方で、BCGはこの「めんどくささ」が厄介で、まず最初に仮想通貨入手のための口座開設を行い、そのあとも仮想通貨のためのウォレット作成や管理、ゲーム側との紐づけなど、「めんどくさい」ことばかりです。
これが間口を狭めている大きな要因となっています。
これは各社認識しており、このめんどくささのハードルを下げるためには、今後も新たなサービスの発明などを待つしかないという状況です。
まとめると、現状のNFTゲームが新規ユーザー獲得に苦戦している原因の大きな理由は、ゲームの体験価値が「めんどくささ」を上回っていないことです。要は、NFTゲームの手間が楽しさや得られる利益を上回ってしまっているということです。
では、この「めんどくささ」が取り払われれば、普及するのでしょうか?というと、答えはNOです。
ユーザー体験価値という大きなハードル
今世に出ているBCGの多くは、「Play to Earn」を謳っています。これは、遊んでお金を稼ぐことが出来るというものです。
なので、BCGのユーザー体験価値は、多くの場合は、
体験価値 = ゲームの面白さ + 稼げること
となります。
極論を言うと、ゲームの面白さを追求しない場合は、このP2EでF2Pやパッケージゲームでの体験価値を上回るためには、ユーザーが稼ぐ体験ができる、つまり、
ユーザーの収入 > ユーザーの支出
となる必要があります。
しかし、当然のことながら、これは確実に運営が赤字になりますので、そうなると、トータルで見るとユーザーの収入 < ユーザーの支出とせざるを得ません。
つまり、この状況は、「稼げる場合もあるがユーザー全体としては損をする」という状態ということです。
では、この状況で、既存のP2EやパッケージゲームではなくBCGを遊ぼう、となるかというと、これもNOです。
なぜなら、「稼げる場合もあるが全体としては損をする」というのは、要はお金を払って遊んでいる状態なので、同じお金を払うなら、BCGじゃなく、グラフィックが豪華でゲーム性も高いF2Pやパッケージゲームを遊ぼう、となるので、BCGを積極的に遊ぼうという理由にはなりません。
なので、「稼げる体験」はあくまで付随的なものにして、「前提として、ゲームとしてF2Pやパッケージゲームにはない面白さがあり、そのついでで稼げるときもある」というふうにするのが適切なUXポリシーとなります
※なお、ユーザーの収入 > ユーザーの支出とする方法は、別途どこかで記事にします
BCGのゲームとしての面白さの差別化戦略
では、BCGのゲームとしての面白さはどこで作っていくのが良いのでしょうか?
当然ながら、既存のF2Pやパッケージゲームと同じ方向性で勝負しても、結局めんどくささのハードルと、運営側の取り分が減るという2つの側面から、現実的ではありません。
では、どういう方向性で勝負するのが良い勝ち筋なのでしょうか?
ゲームによるユーザー体験を支える根幹は、大きく分けて下記の3つに分類されます。
①グラフィックなどクリエイティブの豪華さ
②世界観やストーリーの奥深さ
③ゲーム設計の奥深さ
この中で、「BCG」でないと提供できないような部分に特化して既存のF2Pやパッケージゲームと差別化していく必要があります。
①グラフィックなどクリエイティブの豪華さ
①については、BCGでないと提供できない、という要素はほとんどなく、むしろ開発予算の小さい現状のBCGでは一番取ってはいけない方向性となります。
カードなどをNFTにして資産価値をもたせる、というのも一つの方向性ですが、これはどちらかというと遊び方に関わる部分なので、グラフィックを豪華にする、という方向性とは異なります。
②世界観やストーリーの奥深さ
②については、一見BCGでないと提供できないという要素がなさそうに見えますが、実はそうではないです。
というのも、ここの世界観やストーリーは、ゲームシステムとの親和性が大事で、ブロックチェーンの技術を活用しないと没入感を作れないような世界観やストーリーもあるため、そういった方向で異なる体験価値を提供するのも一つの方向性です。
最近話題のこちらのタイトルも、 BCGならではの奥深い世界観を組み合わせて、新しい体験価値を提供しようとしているタイトルの一つです。
③ゲーム設計の奥深さ
そして、最後が、③ゲーム設計の奥深さで差別化を作るという方針になります。
グラフィックなどを豪華にできないとなると、新しい遊び方で体験価値を作るのというのがほぼ唯一の戦略と言っても過言ではないです。
それがPlay to Earnに代表される、遊べば誰でも稼げるというモデルでしたが、これは上手く行かないという理由はすでにご説明したとおりです。
ただ、この稼げるという部分も、e-sportsを除けば既存のF2Pでは規制などもあり、なかなかできない体験価値のひとつなので、遊んで稼げるという体験を否定するつもりはありません。
現状のBCGの課題は、この稼ぐための「試行錯誤」が少ないという点になります。
ゲームの楽しさの一つとして、インゲーム、要は基本となる部分の楽しい遊びと、アウトゲームと呼ばれる、育成や資産を蓄えていくような部分がありますが、インゲームの楽しさだけでは、結局既存のF2Pで良いよね、となるので、アウトゲームのゲーム設計で新たな体験価値を作る必要があります。
では、ゲーム設計での体験価値とはどのようなものでしょうか?
それは、まさに楽しく試行錯誤する、というものです。
例えば、RPGでは敵をサクサク倒す体験が最初にありますが、徐々に難しくなっていき、やがて強い敵などは普通にプレイしていると倒せなくなりますよね。そこで、色々と試行錯誤しながら、限られた資産をやりくりしながら強くなって倒す、という部分が楽しく試行錯誤する部分になります。
これが、ゲームにおける経済圏の設計です。
なので、ここの楽しさを、既存のゲームでできない形でBCGで提供するというのが、現在取りうる戦略として最もスジが良いものと考えられます。
特に、パッケージゲームは勿論、既存のF2Pもですが、割と一人のプレイの中での資産のやりくりを前提としているため、BCGではそれとは差別化して、ユーザー相互で構成される経済圏の中での資産のやり取りが楽しめて、その上で試行錯誤によって強さが増え、またその結果として稼ぐことも出来る、というような体験をしっかり設計することが、新しい体験を生むことにつながると考えられます。
一方で、このあたりのアウトゲームの経済圏設計で差別化するという戦略は、F2Pのモデルでも近年は浸透してきていますが、実はここへの投資は、グラフィックの費用に比べると比較的大きな額にはなっていません。
このあたりの内訳はタイトルの開発状況などによって様々なのですが、例えば現状のF2PやBCGでも、クリエイティブ周りへの費用が半分前後(場合によってはそれ以上)に対して、ゲーム設計周りへの投資としては、10%程度いっていれば良い方であるというレベルです。
特に、BCGの場合は、F2Pよりも複雑なゲーム経済圏設計をする必要がある上に、BCGならではのトレードや賞金稼ぎなどバランス設計がシビアに求められるため、F2Pよりも、ゲーム設計に対する投資の割合はもちろん、絶対額としても上回るようなレベルが必要となります。
また、②の世界観やストーリーをBCGの売りにする戦略を行うとしても、結局のところ、BCGならではのゲーム設計とセットでないと、既存のゲームで良くない?となるので、程度の差はあれど、②の戦略を取る場合もゲーム経済圏設計を既存のゲーム以上に練り込む必要がある、という点は変わらないです。
まとめ
以上をまとめると、
・BCGで新規ユーザーを獲得するためには、新しい体験価値が必要
・クリエイティブなどで既存のゲームと体験価値の差別化をするのは不利である
・稼ぐ体験やトレードなど含めた、BCGならではのゲーム設計での体験価値が良い勝ち筋である
・ただし、単にBCGならではの要素を入れるだけでは体験価値はあまり向上しないので、F2P以上にゲーム経済圏設計に投資をする必要がある
・ゲーム設計への投資はグラフィック面に比べると既存ゲームでも割りとまだ安価であるため、BCGの費用対効果を最大化するのはゲーム設計への投資を増やすことである
となります。
このように、BCGで既存のゲームとは異なるユーザー体験の提供をするためには、緻密な経済圏設計が不可欠となりますが、これこそが現時点でBCGの新規ユーザー獲得を加速させ、市場で普及する唯一の戦略であると考えています。
最後になりますが、この記事を通じて、我々がどのような経済圏設計の重要性を認識しているか、そしてそれがBCGが新規ユーザーを獲得し、普及するための鍵であるというメッセージを伝えることができれば幸いです。
まだまだ課題は山積みですが、我々はその解決に向けて日々努力を続けています。勿論、我々のチームでは、自社タイトルや他社様との協業タイトル含めて、これまでにない枠組みやロジックを用いた新しいBCGの設計に取り組んでいます。
そして、その結果、BCGゲームがより多くの人々に受け入れられ、楽しまれる世界を目指しています。
これからもBCGの発展を見守り、それに貢献していきたいと思っています。この記事がその一助となれば、何よりです。
【お知らせ】
プレアナでは、「数値遊びの創造」で新たな価値を創造すべく、ゲームを中心としたエンタメの面白さの数値化に日々取り組んでいます。
今回取り扱った経済圏設計については、弊社では全く新しい開発フローや開発ツールによる、複雑で緻密な経済圏設計の伴うBCG開発を省コストで実現するサービスを準備中で、近日中にそのサービスを発表する予定です❗
この新たなサービスを使っての共同開発はもちろんのこと、自社でのBCGタイトル開発も引き続き行っていますので、これら「数値遊びの創造」を行う事業を一緒にやってみたい!という方は、ぜひこちらのWantedlyページまでご連絡ください。
(記事見たよ!と言っていただけると非常に嬉しく思います!)
会社HPはこちら
#BCG
#NFT
#メタバース
#ブロックチェーンゲーム
#NFTゲーム
#GameFi
#crypto
#Metaverse
#P2E
#Dapps
#NFTs
#playtoearn
#NFTJPN
#P2Eゲーム
#ゲームアーキテクト
#エンタメアーキテクト
#DAppsゲーム
#ゲーム設計
#ゲーム運用
#クリプトゲーム
#アプリゲーム開発
#nftcreator