ユーザーの定着する経済圏設計の具体的な方法 - 新規ユーザー獲得のためのBCG戦略③
ゲームアーキテクトの米元です。
今回は、前回の記事に引き続き、ブロックチェーンゲーム(BCG)の経済圏設計で新規ユーザーを獲得するための具体的な方法について書いていきたいと思います。
第1回からの流れとして、新規ユーザー獲得のためには、既存のF2Pとは違う新しい体験の提供が必要であり、その一つが、BCGでやりやすくなったトレードを活用した経済圏設計によるゲーム性の提供ではないかというお話をさせていただきました。
そして、そういう経済圏設計のためには、
①相互取引が自然と成立するゲーム設計
②複数の目標が両立するゲーム設計
の2つを同時に成立させる必要があるというお話をさせていただきました。そして今回は、これらをどのように実現するのかについて解説していきたいと思います。
役割分担の設計
それでは、トレードなど相互取引を活発にさせるには、どのような経済圏設計をすればよいのでしょうか。
それは、様々な役割分担が生じるようにすることです。
例えば、あるユーザーはRPGのゲームが好きで、武器を買って強くなり、より強い敵を倒すことを目指しているが、武器を作ることだったり武器の素材を集めることについてはあまり面白さを感じていない、とします。
一方で、あるユーザーは比較的、戦いよりも商売的な要素をこつこつゲームとして楽しみたくて、いい素材を手に入れて、武器を作って強いユーザーに売ること自体を楽しんでいるとします。
このように、役割分担を明確に分けることができれば、強い敵をひたすら倒す役と、素材を手に入れて武器を作る役でお互いにトレードの需要が高くなります。そのため、BCGでは様々な役割を作ることが重要になるのです。
利害関係の設計
では、単に上記のように様々な役割を与えればよいのかというと、実はそうではありません。
というのも、MMOなどが良い例ですが、強いユーザーほど、強い武器を手に入れるための素材集めが容易だったりするため、既存のよくあるゲームの仕様のままでは、結局強いユーザーは全部自分でできる、となってしまうので、経済圏が成立しません。
また、強い敵を倒していくゲームなのであれば、基本的には参加者はほぼ全員、強い敵を倒せるようになりたい!と考えますので、メインの役割以外をやりたいという人が少数派になることも予想されます。
なので、重要なのは、
敵を倒すために必要な要素を細分化し、全てを満たすのは事実上難しいような仕組みやバランスを入れること
が、まず第一として必要となります。
具体的にはどういうことかというと、例えば、素材を集めて武器を作る、というプロセスにおいては、基本的には良い素材を手に入れたら、そこから良い武器を作るのは比較的容易(というより、鍛冶屋などに依頼する形で一瞬で作成できるようなイメージ)のことが多いかと思います。
なので、役割分担を生じさせるために、例えば、武器を作るためには、鍛冶レベルというものがあり、その鍛冶レベルを上げないと、良い素材から強い武器を作ることができなかったり、作れるけれども品質が悪い、あるいは作るのに時間がかかる、というような条件を仕様として入れていく必要があります。
また、鍛冶レベルも、プレイヤーキャラの強さとは別で、いくら敵を倒しても、武器の作成や修理での経験を積まないと経験値がたまらない、というような仕様にすることで、敵を倒して強くなったとしても、強い武器を作れるようにはならない、となります。
これは一例ですが、こうすることで「戦士」と「鍛冶屋」というように、ユーザーが役割分担せざるを得なくなる設計が可能になります。
目指す英雄像の設計
では、これだけで良いのかというと、まだ不十分です。
というのも、いくら鍛冶屋が需要があるからと言っても、通常のゲームだと、結局のところ勇者的な存在の「戦う人」として脚光を浴びる体験がしたいというニーズ自体が強いため、なかなか鍛冶屋として楽しめない、楽しんでくれないという状況になると思います。
これが、よく我々でいうところの「英雄感」となります。
そのためには、鍛冶屋としても、英雄感を充足できるような仕組みが必要です。
その方法としては、ゲームの中での世界観の作り方として、鍛冶屋が偉い、といったように設定するのも一つの方法ではありますが、それ以外にも、例えば強い人が大会などで勝ったときには、その時の装備品を作ったユーザーも名前が出て有名になり、あの鍛冶屋は凄腕だ、みたいに知名度が上がるような仕組みですとか、あるいは、鍛冶屋側の方でも大きなクエストのようなものがあり、SSランク武器を作成するようなイベントなどもあり、そういったクエストやイベントで上位になると名前が知れ渡るようになる、というような要素なども考えられます。
特に、BCGなのであれば、武器をNFT化して、履歴に鍛冶屋の名前を刻むなどといったこともできますので、そういう方向性の英雄感の醸成がしやすい要素が揃っています。
このように、単に役割分担が生じるようにするだけではなく、それぞれの役割を英雄として扱えるような仕様も入れることが、ユーザー同士の役割分担とそれに起因するトレード、そしてユーザー同士の交流の活発化を促進することに繋がります。
そしてユーザー同士で、ゲーム内外においてトレードなどでのやり取りの需要が増えることで、自然とユーザー同士のコミュニケーションや情報交換も活発になります。
では、ここまでの新しい体験設計の土台の上に、Play and Earnの仕組みをどのように乗せていくのか、というところが焦点になってきますが、この具体的な方法については、また次の記事で書いていきたいと思います。
まとめ
以上をまとめると、
・経済圏の要となるトレードを活発化させるには、役割分担の設計だけでなく、利害関係の設計も必要
・それに加え、役割ごとに英雄感を感じることのできる世界観や仕組みが必要
となります。
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