広告にお金をかければゲームは売れるのか?
ゲームアーキテクトの米元です。
キノコ伝説について前回の記事で解説しましたが、今回はドット勇者などの無限成長モデルの広告戦略について触れていきたいと思います。
前回の記事はこちら
この無限成長モデルに限らず、売れているゲームについては、グラフィックが豪華でお金をかけているから、あるいは広告にお金をたくさん使っているから売れているように感じられるという方も多いと思います。
今回は、この広告への投資戦略について少し解説をしていきたいと思います。
特にキノコ伝説は、かなり広告を出しているので、 キノコ伝説が売れたのは、結局のところ広告をたくさん出したからではないかと考えている方は業界内外問わず多いのではないのでしょうか。
では、逆に言うと、広告さえたくさん出せれば売れるのでしょうか?
実はここに本当に売れた秘密があるので、今回の記事では逆説的になぜ広告費にお金をかけることができるのかについて説明していきたいと思います。
広告費とリターンの構造について
まず前提として、そもそも広告にお金をかけるのは何故でしょう?
それは、広告をかければかけるだけ、それに見合ったリターンが得られるからです。
では、アプリゲームでのリターンとは何でしょうか?
それはもちろんユーザーの課金による売上です。
そのため、広告をかけてたくさんのユーザーを集客、つまりインストールしてもらって、そこから広告費以上の収益を得られれば、広告としては成功となります。
一方で、当然ながらゲームを作ったり、運営するにはお金がかかります。すごく荒い分類ですが、ここでは、ゲームにかかる費用を開発運営費と広告費の2つに分けて考えていきたいと思います。
ものすごくシンプルですが、ゲームによる売上がコストよりも大きくなれば利益になるわけです。
そして単純ですが、売上は、
ユーザー数×ユーザー単価
で決まります。
そして、ユーザー単価はアプリゲームではLTV(Life Time Value)という指標で表されます。これはインストールしたユーザーがどれだけ課金したかの指標で、下記の式で表されます。
単価(LTV)=売上÷獲得インストールユーザー数
簡単な計算例としては、例えば1万人がアプリをインストールして、そのうち10人に1人、つまり10%のユーザーが10,000円課金をしたとします。そうすると売上は1万人×10%×10,000円で1,000万円となります。そしてインストールしたユーザーは10,000人なので、一人当たりの単価は1,000万円÷1万人=1,000円となります。
つまり、このアプリゲームは1人がインストールすると平均1,000円の売上になります。ということは、ゲームにかかる費用が、ユーザー1人当たり1,000円より小さければこのゲームは儲かるし、そうでなければ赤字になるということになります。
つまり、単純な話、ゲームにかかる費用をできるだけ抑え、ユーザー1人あたりの単価をできるだけ上げることが大切なのです。
そしてアプリゲームの場合は、ユーザーが基本無料で始めて、その中で一部の人が課金してくれるような仕組みなので、出来る限り長く遊んでもらいつつ、その中で課金してくれている人を増やし、その課金してくれている人に継続的に課金をしてもらうことで、どんどん単価を上げていくような仕組みを作ることが重要になります。
先ほどのグラフィックの費用などは、ここの単価を上げるために豪華にすることが多いのですが、単価を上げるための手法というのは別にグラフィックだけに限られるわけではありません。
あまり表には出ませんが、ゲームとしての遊び方もそれで、例えば色々なコンテンツがあったり、適切な難易度に設計されていたりといったような、いわゆるゲームサイクル設計やバランス設計なども課金単価に大きな影響を及ぼします。
無限成長モデルの売上面の強み
無限成長モデルのゲームというのは、実はこのグラフィックの費用をあまりかけなくても、ゲームサイクル設計やバランス設計などで、ユーザーが長く遊び続けたい、課金を続けたいとなるような仕組みがしっかりできているので、ユーザー単価であるLTVが高くなるような設計になっています。
つまり、通常モデルのアプリゲームに比べると広告にかけられるお金を多く投じることができるということなのです。
例えば、通常モデルのアプリのLTVが1000円、無限成長モデルのLTVが1500円とすると、無限成長モデルの方が1ユーザーあたり500円多く広告費に投じることが出来るので、ユーザー数を100万人集めたい、という場合は、無限成長モデルのほうが100万×500円=5億円多く広告費にかけることができます。
無限成長モデルのコスト面での強み
先ほどは売上に関しての無限成長モデルの強みを書きましたが、今度はゲームの開発運用費の方に焦点を当てていきたいと思います。
先程、ゲームにかかるコストというのは、ゲーム開発運用費と広告費の2つに分けられるというお話をしましたが、ゲーム開発運用費というのは、実はグラフィック制作費にかかることが多いです。
タイトルの中身によっても変わりますが、概ね半分程度がグラフィックにかかる費用となっています。
一方で、先程説明した通り、この無限成長モデルというのは、ゲームの遊び方で単価を上げていく仕組みなので、逆に言うとグラフィックにそこまでお金をかけなくても収益を上げられるような仕組みになっています。
ですので、ゲームにかかるコストのゲーム開発運用費というのを大きく下げることができます。
一点補足なのですが、グラフィックにかけるコストを減らせるからといって、他にかけるコストまで減らせるというわけではなく、むしろゲームサイクル設計や運用でのデータ分析等のコストは上がります。
ただ、元々ここにかける費用というのは、グラフィックやシステム設計に比べると圧倒的に小額なので、トータルのコストとしては大きく下がるという計算になります。
タイトルの規模によっても変わってきますが、概ね全体の5~10%程度なので、ここを例え倍の費用にしても、全体への影響は軽微となります。
そうすると、ゲームにかけるコストのうち、ゲーム開発運用費が下がるので、その分広告費を増やすことができます。
グラフィックは豪華であるに越した事はありませんが、結局グラフィックにお金をかけるのは、継続的に売上を上げるためなので、より安価な方法で可能なのであればそうしたほうが投資対効果は当然ながら良くなります。
収支比較の簡易シミュレーション
ここまで文字のみで解説させていただきましたが、これだとまだイメージがつきにくいと思いますので、簡単なモデルでのシミュレーションをしてみたいと思います。
今回は、例として、アプリの費用が合計20億のタイトルでの想定です。
通常モデルに比べ、無限成長モデルの場合は開発運用費を抑えることが出来るので、今回のケースでは、開発運用費と広告費が、それぞれ通常モデルのアプリが10:10、無限成長モデルが7:13と仮定します。
また、無限成長モデルの特徴として、先ほどご説明した通りの高い継続率と高いユーザー単価(LTV)が挙げられるので、継続日数が1.2倍、課金単価が1.25倍になると仮定します。
最後に、1ユーザーあたりの獲得単価を400円とした場合、獲得ユーザー数はそれぞれ通常モデルが250万人、無限成長モデルが325万人となります。
ここに先程のLTVをかけ合わせると売上が出て、そこから費用を引くと利益が出ます。
そうすると、今回のケースでの利益は、通常モデルが5億円に対して、無限成長モデルは29億円となり、約6倍の差が出ます。このように、同じ費用をかけていても、ここまで利益が変わってくるということが分かります。
ユーザー獲得単価と損益分岐ラインのシミュレーション
そして、ここからもう少しこのケースを深堀って行きたいと思います。
アプリゲーム業界のレッドオーシャン化はもうご存じの方も多いと思いますが、その背景の一つに、「ユーザー獲得単価の上昇」が挙げられます。
先程の例では、ユーザー1人当たり400円と仮定しましたが、当然ながらこの価格が上がれば上がるほど収支が厳しくなります。今度は、このモデルで、獲得単価がどこまで上がると赤字になるのかの損益分岐のシミュレーションを行いました。
今回のケースだと、通常モデルが500円に対して、無限成長モデルは1000円となりました。つまり、通常モデルのアプリだと、ユーザー獲得単価が500円を超えてしまうとビジネスとして成り立たない、ということになります。
対して、無限成長モデルであれば、1000円までユーザー獲得単価が上がってもビジネスとして成立するため、アプリの打率を上げることができます。
つまり、無限成長モデルは、現在のレッドオーシャン市場で打率を上げるために最も有効なモデルと言えます。
まとめ
冒頭で書いた通り、よく見かける無限成長モデルのゲームは、すごく広告宣伝費をかけているから上手くいっているように見えるかと思います。ですが、結局のところこの無限成長モデルというのは、グラフィックに費用をかけずにユーザーあたりの収益を最大化できるような仕組みになっているので、ゲームの費用における広告費の割合も増やせますし、かけられる費用の上限を決めるユーザー単価も上がるので、二重に広告費を増やすことができるものになっています。
こういった目に見えない地道な積み重ねの結果として、あの膨大な広告を打っているのが現状なのです。
ドット勇者もですが、キノコ伝説でも他の地域や国で先行リリースをした上で、「このゲームはユーザーの収益や広告での集客量はこれくらい」というデータを徹底的に取得し分析し改善をした上で、日本だとこれぐらいの広告を踏んでも黒字になるだろう、という緻密な計算をした上で、あれだけの広告を打ったから成功したのです。
なので、単に広告費をかければ売れるというのは大きな間違いで、こういったゲーム設計やバランス設計、データ分析への投資を地道かつ徹底的に積み上げてきたからこそ、無限成長モデルのゲームというのが今花を開いて売れているわけです。
元々ゲームと言えば日本企業が中心でしたし、ソシャゲバブル時代も日本企業の勢いがあったのに、時代の移り変わりでその日本企業が苦戦しているのは、我々としても非常に苦い思いを感じているので、我々としても是非これからこの無限成長モデルへチャレンジしたい!というチームと一緒に、新しいマーケットを切り開いていきたいと考えています。
【お知らせ】
プレアナでは、「数値遊びの創造」で新たな価値を創造すべく、ゲームを中心としたエンタメの面白さの数値化に日々取り組んでいます。
今回の記事で話題に挙がった無限成長モデルについても、省工数で開発運用が可能なエンジンの開発などを行っており、「数値遊びの創造」を実現するための各種プロジェクトも実施しています。
一緒にやってみたい!という方は、ぜひこちらのWantedlyページまでご連絡ください。
(記事見たよ!と言っていただけると非常に嬉しく思います!)
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