見出し画像

【エッセイ】 オーストラリアにペットを連れて移住

 今回の記事では、日本からオーストラリアに移住した時、ペット(犬)を連れて行った経験をシェアしたいと思う。以下は、実際に同じことを考えている人とっておおまかなイメージが湧くように書いてあるが、細かい規則については日本の農林水産省や相手国の同様の組織から最新の情報を得て欲しい。

 まず自分たちは、手続きが複雑なのと間違いを起こしたくないと言う理由から、代行業者を使った。代行業者を使わない人たちはどの程度の割合でいるかはわからないが、自分が想像するに非常に少ないのではないだろうか。ただし、たとえ代行業者に頼んでも、自分やらなくてはならない作業がたくさんあるので、きちんとスケジュールを管理して必要な手続きを正しいタイミングで確実に実行することが必要だ。そうでないと、自分たちだけ移住してペットは置いていかなくてはならないなどの悲劇になりかねない。

 犬の輸出を調べていく過程で輸出できない犬種があることがわかった。ブルドッグなどの短頭犬は温度変化(特に暑さ)に弱く輸出はできない。幸い、自分たちのペットはトイプードルで輸出可の犬種だった。また、航空機での長期移動やその後の検疫施設での待機に耐えなければならないので、老犬や体に不調のある犬は残念だが諦めた方がいい。我が家のトイプードルは輸出時11歳と若くはなかったが健康だったので問題ないとされた。

 ペットは航空便で送るが、少なくともオーストラリアへの輸送に関しては、プライベートジェットを使うのでなければ、自分の隣にペットを座らせて連れて行くわけではない。クレート(ペット用の籠)に入り荷物室に収納されることになる。すなわちペットは貨物として扱われる。自分で実際に入ったわけではないがペットの入る荷物室には一般の荷物室と異なり暖房がありペットが凍死することはない。航空会社で推奨されているクレートはネットでも買えるし、ペット用品店にもある。クレートの中には給水機を設置する。また規則ではないが、クレートの床には敷物を敷いて犬がくつろげるようにするのがいい。クレートは小さければそれだけ輸送料が安くなるが、犬のサイズによって最小の大きさが決まっているので、うちの犬(または猫)は狭いところを気にしない、と言って小さなクレートで安く上げるわけにはいかない。と言うことは、当然ながら大きなペットほど輸送料金は高価になると言うことだ。

 さて、最初にしなくてはならない手続きは犬の身元確認である。2023年からオーストラリアへの出発の6ヶ月以上前に行う規則になった。これは成田の検疫所などにペットを連れて行き、犬のマイクロチップを読み込んでもらう作業である。当然、その時までにマイクロチップをペットに埋め込んでおく必要がある。我々の場合、ルール変更の年で突然アナウンスされたので慌てて成田に連れていった。この後はしばらく作業がなかったが、狂犬病やその他のいつものワクチンは確実に接種させておいた。

 次は航空便の予約である。オーストラリアに到着するペットは全て、メルボルン近郊の検疫施設での10日間の待機が義務付けられている。よって、使う航空便はメルボルンへの直通便がベストだ。一機あたり運べるペットの数には限りがあるので、希望日にメルボルン直行便が確保できるように早めに予約した方がいい。我々は代行業者を使って予約してもらった。

 ところで、犬は暑さに弱いので、オーストラリアの夏が始まる12月以降の便では受付けてくれなくなる可能性があると代行業者から言われた。これは検疫施設に冷房がないせいだと考えられる。検疫施設が比較的涼しいメルボルンにあるのも納得できる。何月から再開するのかはわからないが、自分が移住しようとしている時期が犬を輸出できる時期かどうかをあらかじめ調べておかなくてはならない。

 出発便が決まったら、オーストラリア到着日も同時に決まったので、メルボルンの検疫施設を予約した。これも代行業者にやってもらった。

 また、自分たちは必要なかったが、移住先がメルボルンから遠い場合には、検疫施設での待機が終わってから、メルボルンから最寄りの空港までペットを国内輸送する必要があり、その便も予約する必要がある。

 さて、出発日の1か月程度前に、推奨される薬物による寄生虫駆除などの検疫の手続きがあった。ここが最初の忙しさのピークであった。この時、行きつけの動物病院に色々とお世話になった。日頃から融通の効きそうな動物病院を見つけておいたので助かった。その上、その動物病院はペット輸出手続きの経験があったので心強かった。寄生虫駆除したことを証明する動物病院のサイン入りの書類を揃えたり、血清を検疫所に送ったりとかの作業が必要であった。また出発1週間ぐらい前にも寄生虫駆除の作業があった。このような手続き詳細は自分だけでは間違いを犯すかもしれないので、代行業者に確認しながら確実に進めた。


成田でペットを代行業者に引き渡す

 出発日、成田空港の国際貨物の取扱所にペットを連れて行く必要がある。自分たちは代行業者を使ったので、その近くで業者にペットを引き渡し、その後の輸出手続きは代行してもらった。日本での作業はこれで終了し、ペットはカンタス便で成田からメルボルンに向けて旅立っていった。

 ペットは翌朝メルボルン到着し、係員によって空港からクレートに入ったまま検疫施設に移動させられた。この施設での待機中、食事などの世話をしてもらえる。ありがたいことに検疫施設の担当者はメールでペットの状態を頻繁に報告してきてくれた。

 ただし、我々のトイプードルは飼い主に捨てられたと思ったのか、それとも自分の住居が快適でないせいなのかわからないが、食欲がなくなり、検疫施設ではほとんど食事をしなかったらしい。我々は、別のえさにして欲しいと頼み、要望通り変えてもらったがそれでも食べなかった。犬にとっては悪夢の10日間だったに違いない。

 ペットを見送ってから、人間はその後別の便でオーストラリアに行った。ペットの待機日数は10日間あるので多少余裕があった。やっと待機が終わって、10日後検疫施設に迎えに行った時は上で述べたように食事をしなかったせいでペットはだいぶ痩せ細っていた。また、検疫施設では食事は出してくれたが体がウンチまみれになっても綺麗に洗ってはもらえなかった。

 

メルボルン検疫施設でのおつとめが終わりシャバに出てきたトイプードル
右が航空機輸送に使われたクレート

 また、排泄をケージの中に設置した吸収シートで行うようにしつけていたのだが、オーストラリアでは通常吸収シートは使わないようで、犬は混乱してしまい、ところかまわず排便をするようになってしまった。

 その後、現地でケージを購入しやっとその中の吸収シートで排便できるようになったのは検疫施設を出てから半月ぐらい経ってからだった。その間、自宅その他のところでカーペットや床が何度も排泄物まみれになってしまった。ところで、犬が使ったクレートだが、犬は「どこかに連れて行かれる」と思うのか怖がっていっさい近づこうとせず、今では我々の靴箱になっている。

 以上がおおまかな流れだが、割と簡単じゃない、と思う人がいるかもしれない。実際、ペットの移住だけに集中できるならそうかもしれない。だが、我々のように同時に人間も移住する場合は大変だ。人間の方もたくさんの手続きがある。だから、きちんとスケジュールを管理し、人間の手続きとペットの手続きがうまく流れて行くようにしなくてはならない。ところが、重要な手続きを自分が望んでいる期日にできるとは限らず、その上、関連する業者が期日を変更したりしてせっかく組んだスケジュールに狂いが生じてしまう。自分の経験では、そのスケジュール管理・調整が一番大変だった。

 さて、我が家のトイプードルはオーストラリアで無事12歳を迎え、快適に余生を送っている。最初、飛行機や検疫施設への収容に耐えられるか心配だったので誰か別の飼い主を探そうかとも考えたが、今では連れてきて本当によかったと思っている。

いいなと思ったら応援しよう!