2■トーフプレス機に右腕を奪われた男の怒り、そして夢■ニンジャスレイヤー感想まとめ

ドーモ、こちらはライスカントリーがツイッターで書いてた感想まとめの2番目です。

ボケっとしてたら前回まとめから3ヶ月経ってますが、ツイッターで書いてた当時は1週間ぐらいしか経ってないので気にしないでください。人の営みとはそういうものです。

  • 読んだ順番は書籍版に準拠

  • でも読んだのはツイッター連載版

  • ネタバレがいっぱい

  • 前回までのあらすじ:忍殺ドネート企画とかスパイダーリリィとか本編外の情報をツイッターヘッズたちに聞いて心が乱れたライスカントリーが読み進める本編に待ち受けていたものとは……?

キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー

カチグミ』とラベリングされた未来へのレールに乗せられ、社会の上層への道を行く少年は知っていた。自分は本当はこの社会について何も知らない事を。

レールの外で戯れる少女との出会いで彼は知る。すぐ傍にあった解放と熱狂を。理由なき暴力がもたらす惨劇と絶望を。血塗れの夜を越えて触れた、彼女のその手の温もりを。

2月5日

キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー・ハ・ヨミゴタエタップリ・デ・ギンイチ・クン・ガ・カワイカッター

いや味濃……内容が色々複合的にバリキ・ドリンクめいて脳に打ち付けられた

色んな観点から見所あったけどやっぱ全てはギンイチ=クンのかわいさに帰結してしまうな~~~こんな青々しい男の子の心情に迫ったエピソードもあるんだ……ラスガより青春してんじゃん

重金属雨の気配が漂う曇天の下の血と錆の匂いのする青春だけど

書籍の収録順がスモトリ→マザーファッカーなのめちゃめちゃ皮肉効いてんねぇ!
カチグミ・サラリマンの哀れな末路描いた直後に、カチグミ人生のレールに乗せられた少年の懊悩に満ちた青春の1ページ持ってきますか……そうですか

いやそれにしてもギンイチ=クンかわいかった……ドネートあげたい

「かわいい子見つける度にドネートあげたいとか言う思考はなんかよくないと思う」

そうだね

ただでさえ独自用語が飛び交うネオサイタマの中で更に先鋭化された文化にダイブしてく話だったから、いつにも増してトンチキワードがワッショイしてたけど、この回で唯一の訳註がそこでいいの?

ネオサイタマ市民の息苦しい日常と、そのすぐ傍にある暴力と殺意な……それら二つがあまりにも近くにあるためにふとした拍子に交わってしまうエピソードすき

ネオサイタマの市井の描写は解像度的にも大変たすかる

ギンイチ=クンがマッポ・ステーションに助けを求めた時に返ってくるのが、あからさまな悪意や怒号みたいなパワー型の理不尽じゃなくて、歪んだ社会に折り合いをつけるため諦め方を覚えてなんとか生きてる大人たちの悲壮な拒絶なの、いいよね……

職務怠慢マッポたちを責め切れないあの空気こそがネオサイタマの秩序であり、それを破る存在こそがニンジャスレイヤーなんだなぁ

ところでトレンチコードにハンチングというあのフジキド私服スタイルが初めて原作で出てきてうれしかった

精悍にして冷酷な眼差しが目に浮かぶ……グッドルッキング……

今回の登場の仕方はだいぶヒロイックだったけど、前回のエピソードで普通にサラリマン見殺しにしてるのも知ってるからまぁ……市民の視点からすると地震・雷・火事・ニンジャっていう災害めいたものというのが的を射ているのかなという

ドラゴンセンセイのあの感じはまだ出会ってインストラクションする前の時間軸って事かな

はやく出会ってくれ

アゴニィ=サンとかいうスゴイヘンタイ・ニンジャが出て来たけど、うわさを聞く限りこういうニンジャは「わりといる」んだろうなと震えながらフンドシを締め直してますよ

ギンイチ=クンの世界はもう一変してしまったけれど、それでも彼の人生に纏わりつく何もかもは依然としてそこにあり、抜け出す術も持っていないその無力な手に……ただイチジク=サンの温もりを感じていたEND
実際いいです

サラリマン回もそうだったけど、市民の日常を壊す暴力と、それを更なる暴力で壊し直すニンジャスレイヤー、その後に立ち尽くす日常の残骸みたいな流れめっちゃ好き

やっぱニンジャスレイヤーの主人公ってマッポーの世界そのものでは?

ニンジャのこういう話、今後もいっぱいありそうな気配で嬉しい
っていうかよくよく思い出してみるとキョート編だけじゃなくてベルリンの話とかも後々あるらしいと耳に挟んでるので、海外の……ニンジャ!たのしみ

コミカライズ キルズ

いやアゴニィ=サン……私の想像力を軽々と超えて行ったな…… 確かに「腰のバイオ巾着袋」って原作描写と矛盾しないけどそういう……それは……さすがに反則では?(めまい)

それはそうとイチジク=サンは正統派ヒロインめいてかわいかった


■まとめ■

社会の上部に居るはずなのに見通せるものなど何もない少年の抱える閉塞感……。
ニンジャスレイヤーにおける『マッポーの世』というのはもっとヒャッハーしたクレイジー世紀末めいたイメージだったので、こんな生々しい温度感で希望の見えない日常の視点を見せられてビックリしました。しかも味付けが甘酸っぱい青春味だ!?

ニュービーヘッズとしてはネオサイタマのパンクス文化とか、「ニンジャってここまで変態なのが居るんだ……」とか、フジキドとナラクの意識の衝突とか、色々情報量が多かった回ですが……やはり「こういう視点のエピソードもあるんだ」という『作風』を示された事自体のインパクトが大きく、ニンジャスレイヤーという作品への私の期待値を押し上げて行きました。ポイント倍点!!

アポカリプス・インサイド・テインティッド・ソイル

通りすがりの美女にニンジャ婚活を試みたヨロシサン退職ニンジャは、美女の知人のタフガイに殺されかける。そこに差し出されたのは退職仲間ニンジャの救いの手?否、それは救いの舌だ!!

2月5日

フォレスト・サワタリ=サンだ!アニメイシヨンで見たぞ!

サヴァイヴァー・ドージョーとかいうニンジャたち、シヨンではちょっと顔見せしたぐらいだった気がするけど原作ではちゃんと読めるんだよな

他メディアから原作に入るとこういうたのしみがある

ニンジャっていうと、超常的暴力で互いを捻じ伏せあう存在としてしか描かれてないこれまでのエピソードの中で登場するサヴァイヴァー・ドージョー……

勝手に女にちょっかいかけて勝手に戦闘不能になってる変なニンジャをあくまで「大将」と担いで、数の有利がある状況でも大将を失うリスクを「俺たちも無事じゃすまねぇ」と表現し、仲間たちの保身と自由のために「交渉」という手段で事態解決してんの、その容貌よりも立ち回りの方がよほどニンジャとして異質で好きだな

あんなちょっとの出番で既にだいぶカッコイイフロッグマン=サンの活躍たのしみ

悪の組織の人体実験で生まれながら、悪の組織を裏切った超パワー戦士……って実質仮面ライダーでは?


■まとめ■

後に大好きになるフジキドとナンシーの初バディ回であり、後に設定の詳細を知りサワタリの背負ってるものの重さに衝撃を受ける生き残り達が道場サヴァイヴァー・ドージョーの初登場回。読んでた当初はまだそんな事知る由も無かったため感想があっさりしてて懐かしさを覚えます。

ナンシーを顧みなければ多少苦戦しようと「ニンジャを殺す」ことは出来ただろうにそれをしなかったフジキドや、「仲間と生き残ることを優先したいのはお互い様のはずだ」と踏んで舌戦を仕掛けたフロッグマン=サンの心情、あとサワタリ大将のだいぶどうしようもない感じとか……今読み返すと色々刺さるポイントの多い回で楽しいですね。

在りし日のノトーリアス=サンの勇姿……。

レイジ・アゲンスト・トーフ

スシを食い、バリキを飲み、トーフヤを襲ったその男の末路に、全てを見下ろす月は「インガオホー」と呟いたかのようだった。

2月9日

「マグ……いや、タマゴだ」だ!!(あの有名な)

スシ・バー、暗黒メガコーポ、ラオモト・カン、クローンヤクザ、バリキドリンク、カチグミ/マケグミ、ミヤモト・マサシ、ユウジョウ!ニンジャソウル、フジキドとナラクによる体の奪い合い、ダークニンジャ……

物語の基礎的要素がこれでもかと詰まった回だった
実質ネオサイタマチュートリアル回では?

掲載順的にはサンスイに次いでの初期エピソードなんだなー。実際これ読んでからだと他のエピソードがぐっと解りやすくなる感じだ

書籍版掲載順だと1巻の後ろの方なのは、それまでのエピソードの総決算というか答え合わせめいたアトモスフィアなのかな

掲載順に重点して読むのやっぱ面白い

ネオサイタマのピースの散りばめ方……

当初は枯れ果てた男の胸に残った僅かな夢の灯ぐらいに描写されてたシガキ=サンの墨絵への情熱が、修羅場をくぐるほどにどんどん浮き彫りになって、最後には泣きながらドゲザするほど激しく燃え上がって行ったのとてもワビサビだな……

シガキ=サンめっちゃよかった~~ドネートあげたい……

いやほんとシガキ=サンこそこのドネートを必要としているのでは……通常ドネートでもマグ……タマゴ5個食べられるしカルテットに至っては50個食べられるぞ……

社会の裏側に触れた一般市民の辿る数奇な運命……エコロジカル・ヒーローもギンイチ=クンもシガキ=サンもそれぞれ違った味わいで面白い

というかどのエピソードにも「カチグミ/マケグミ」というレッテルが密接に絡んでるあたり、それだけあのアイコニックな概念は市民の間でも支配的なんだろうなと

救急医療の現場ですらそれで生死が分かれるんだからそりゃそうか

ネオサイタマ的には500円の論理チョコってめちゃくちゃ高級品なのでは……

コケシ労働者たちが拘束されながら大豆100%トーフ貪ってるシーンすき

美味いトーフは美味いよな……

『ジツに操られたシガキの眼は冷凍マグロのように虚ろだが、その目からは自らの夢が潰えようとする無念の涙がいまだ流れ落ち、口はぴくぴくと引きつっていたのだ』

(このシーンだいぶえっちでは……)

今更だけど「古事記にも予言されしマッポーの世の一側面」ってもしかして「聖書にも予言されしアポカリプス」的なニュアンスで使われてんの……? エイジ・オブ・マッポーカリプスってそういうこと……?

そんな雑なことある??

ユウジョウ!の真の初出はどうやらこのエピソードなのか

「ユウジョウ!」ってフレーズの持つスラングめいた意味は具体的に説明せずに、その欺瞞的用例を繰り返し描写する事で「皮肉な文化なんだな」と暗に印象付け、その上で大人たちの欺瞞などひっくり返す青々しく真っ直ぐなユウジョウをラスガのラストシーンとして描いたのだすると、なんとも奥ゆかしいことだ……

この回って別に「ハマチ粉末の精製工場」とかでも話は成立したと思うけど、敢えてのトーフなのはやっぱ安価で無味乾燥で脆くて弱そうなイメージを重点してのことなんだろうか

「トーフプレス機の事故で右腕を失った男」ってフレーズだけでだいぶインパクトあるしなぁ

シガキ=サンは無闇に人と関わる事を疎んでたようだけど、でも実際あそこまで追い詰められてたのはやっぱ孤独に毒されてた部分もあると思うんだよな

必要だったのはビホルダー=サンの欺瞞演説の中にあったような、同じ境遇で苦しみを分かち合える仲間だったのだろうから、まぁ単に周りに人がいればいいってわけでもないんだろうけど……

夕食にスシを食う日銭もままならないマケグミの身で墨絵師の夢を胸に抱き続けるのって、あのネオサイタマでは私の想像以上に異常な精神のあり方なのかも知れないなともちょっと思った

夢を捨て去ってマケグミたちと一緒にバリキにでも溺れていれば、堕落しながらも心には安楽を得られたかもしれないけど、夢を抱いたまま身も心もやつしていく生き方をシガキ=サンは選んだ……そういう意味では夢によって孤独に覆われていったとも言えるかもしれない

マジで暴走の果てに何も得られずただただ傷と修羅場の記憶だけが残ったってあの顛末は、インガオホーと言われればまったくその通りで物語の結末としても正しいんだけど……いやそれにしてもっていう……

理不尽な陰謀に身を委ねれば相応の末路が待っている……しかし理不尽な社会に打ちのめされた男に他に選べる道などなかったのではないか……

ところでシックスゲイツってほんとに構成員が6名だからシックスゲイツなのか

ニンジャスレイヤー=サンに殺されまくってるから下弦の鬼めいて入れ替わりが激しいってこと?

欲望と悪意で腐りきった社会の不条理に喘ぐ人々をあれだけ生々しく描いておいて、それを救う存在を描かないってのも中々すごいよな

ニンジャスレイヤーは暴力で支配するニンジャを更なる暴力でぶっ殺すけど、被害者たちに手を差し伸べないどころかそもそも目を向けてすらいない……

この回でネオサイタマ市警にはケンドー機動隊なるものがあると知ってしまったので、スモトリ回でエコロジカル・ヒーローが着てたケンドー型装甲服ってマジで『ヒーローのコスプレ』だったんだな……となんとも言えないきもちになった

油断してると世界観からこういうの食らうネオサイタマ

あのケンドー型装甲服ってキルゾーン参加者に支給されるものなのか、サラリマンたちの私物なのか……あのカチグミたちならマイケンドー型装甲服とか持ってそうではあるけど


■まとめ■

やっぱモータルの人生ドラマ回面白い……ッ!と噛み締めた回ですね。ネオサイタマ基礎知識もある程度見えて来たので、この辺りからニンジャ没入度もだいぶ高まってきたような。

とにかくシガキ・サイゼンがいいキャラだった~~~。
シガキ=サンの夢への執着って必ずしもピュアで一途な情熱というわけでもなく、もしかしたら社会の底辺で「自分は他のマケグミとは違う」という自尊心を守るために墨絵という夢の虚像に縋ってた部分もあるんじゃないかなーとも思ったりするんですが、なんにせよそうして抱え続けた夢への思いはあの修羅場の中でもシガキの心を支え続け、ニンジャへの恐怖を前にしても恭順する事を許さなかったわけでね……。『絶対的暴力存在であるニンジャ』と『無力な人間』という構図で描かれるこの作品で、それでも屈さなかった人間が武器とした物はテクノロジーだったり数の力だったりヤバレカバレだったりするわけですが、シガキという男がドゲザまでしてニンジャに抗った理由が『譲れない夢』の存在だったのはなんともロマンチックで味わい深い……。それもまた『人間』の強さの形……。

補足とか

ちょうどギンイチ=クン回を読む前ぐらいに忍殺がやってるドネート企画の詳細を教えてもらって「アイエエエエ!?」となってたので、この辺のエピソードはちょうど期間中だったバレンタインドネート企画で誰にチョコあげるのかという事も考えながら読んでました。

そして期限ギリギリまで考えてドネった結果はこちら。

今回の記事で登場したギンイチ=クンとシガキ=サンについて語ると見せかけて推しのショーゴー=サンについて語りますけど、いやマジでカリアゲ時代のショーゴー=クンの何がいいって『佇まい』がいいんですよね……おそらくは当時のショーゴー少年は口数少なく感情の起伏も薄く、感情を表出させる機会も特にない虚無的な日々を送っていたんだろうなという解釈が深まるあのとぼとぼと歩きがまずめっちゃよくて……そんなふうに寂寞に凪いだ感情の湖面に不意に投げ込まれたチョコという異物。そして僅かに生じた喜色の波紋……その『僅かさ』がなんとも味わい深い。ドネート時空は本編とはまた違うお遊び世界なんだろうという事を前提としても、とぼとぼ歩き描写の生々しさによって「あったかもしれない」感が担保されていてチョコを渡すイベントの特別感が際立ってますよね。私のあげたチョコの!!リアル感が増している!!!!!上がりますね否が応でもテンションが。勉強も運動も冴えず友達もおらず好きなアニメコンテンツもなかった推しの過去の日常に、焦げ茶色の彩りをほんの一瞬でも添える事ができたとすればオタクとして恐悦が至極すぎるだろ。彼が後に辿る壮絶な運命を思えばあまりにも些末な、ニンジャとなった後はもう思い出す事などないかも知れない程度の温度感が絶妙にいい。奥ゆかしさ……。また会いてぇな……カリアゲ時代のショーゴー=クン……4月のドネート企画ではこべつドネ要素がなかったから会えなかったんですよね。6月はどうなんでしょう。楽しみですね。(5月29日現在)

あ、1巻エピソードの感想まとめはその3で終わりそうです。

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