今更何がすり減るってんだよ
本当の秘密は、こんな私でも墓まで持ってこうと思うんだなと、三十路も越えてようやく知った。
大抵、面倒ごとに巻き込まれる恐れのある秘密だけだが。
この歳になって、というより様々なものから逃げて、足掻いて、清水の舞台から飛び降りた先で「お前、いい女だな」と言われる機会が爆増した。
馬鹿な話だと思う。
その「いい女」っていう文句の前には「どうでも」と着くのも分かってる。「いい女」が指す意味が、私の肉の器を蹂躙したいというギラつきを孕んでいるのも分かっている。
だから、私は適当に応対する。
喰らいたければ喰らえばいい。
そのまま喉笛を食いちぎってくれれば尚良い。
どうせこんな身体になんの価値もない。価値をつける気も起きない。女としての私の市場価値なんてとうに底値を割っている。
それに、今更すり減る何ものも私には残っちゃいない。
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