限界値アウトプット
赤いユニフォームのまま、お待たせしましたーと言って出迎えてくれた人は自分と同じ目線の高さにいた。
ふわふわな黒い髪の毛。肌が真っ白で目が大きくて黒目がくりくりしている。少し濃いめのピンクのルージュを塗った形のいい唇。終始口角が上がっていた。
いつもキラキラしていて存在感抜群な姿しか見ていないので、そんな様子を見た時の印象はポメラニアン。
冷静になってから考えると、いつも飛んで跳ねて笑顔で全力疾走する姿を思うと強ち間違いではないと思った。
見てしまった瞬間、涙が溢れて止まらない私に優しく微笑んで、1秒でも無駄にしないようにとじっと見つめてくる。
話すのが下手くそな自分がああでもないこうでもないと必死で書いた手元のメモを頼りに伝えたいことを伝える。丁寧に聞いてすぐにレスポンスをしてくれる。くるくる変わる表情や紡ぎ出される言葉、全ては自分が必死で発した言葉がきっかけで反応してくれている。普通の生活をしていれば訪れることのない出来事。会話をするという当たり前のことが出来ている。
二度とない機会であることを知っていたので私は恐れ多くもお願いをした。こんなワガママを言う時間はないなと思っていたけど、その人は当たり前のように叶えてくれた。えーどうしようかなー何がいいかなーこういうのどうかなぁと私の様子を見ながら考える姿がとても愛おしかった。
最後に繋いだ手は白くて暖かくて手のひらのお肉がふわふわでとても柔らかかった。