シューズデザイン ブーツ編
さてさて。
シューズデザインの個人的意識点の「ブーツ編」です。
ブーツはパンプスやサンダルと違って革をたくさん使います。
ちょっとカットを変えるだけで、同じように見えるブーツでも革の取り坪が変わってくるので、値段設定を頭に入れつつ、ブーツのデザインをおこさないと恐ろしく高い靴になってしまうのです。
ブーツのサンプル仕様書の絵型で絶対必要な項目は「筒丈」です。
そして足首とトップの内径を設定して書き記すのですが、ブーツを作るのが初めてなデザイナーさんだと、この内径は記載しないでメーカーさんと相談した方が安全です。
足が入らないブーツに仕上がることもたまにあるので…。
シーズンになったらたまに見かける筒幅バリエーションは、同じラストを使用して、この足首とトップの筒幅を太め細めなど調整して数種類作ったりします。
ブーツを作る時によく話にでるのが「クリッピング」
「クリッピングが必要だから革をたくさん使うので高くなりますよ?」「うちはクリッピングができないんです」とか話にあがったりします。
このクリッピングとはなんぞや?
クリッピングを簡単に説明すると上の図みたいな感じです。
「甲の立ち上げの癖つけ」です。
クリッピングは大きめに革を裁断して、専用の癖付け機械(くの字型アイロンみたいな)でぐーっと熱を加えてブーツの甲の癖をつけます。
そこから甲の形にまた革を裁断するので、革を沢山使うのです。
またブーツだけではなく、甲の深いモカシューズなどでもクリッピングをかけたりします。クリッピングで甲に癖をつけると靴がシャン!としてキレイに形作られます。
クリッピングが全部のブーツに必要かというと、そうではなくデザインで避けたりすることもできます。
左の甲型のブーツには必要ですが、センターで割ったり、甲にシャーリングを入れたりするとクリッピングは必要なくなります。
その他、筒部分もカットを工夫したりして、革の取り坪や使用デシが設定価格に仕上がるように工夫します。
クリッピングをさらに詳しく知りたい方はクリッピング屋さんのHPが詳しいので、↓を覗いてみてください。
「オリジナルクリッピング コダテ」
次にブーツの裏について。
ブーツの裏を裏革でまとめることもありますが、値段は高めになります。
値段が気になる時にはトップの部分(口裏)を革やアッパー同色や近い色の合皮にして、その下をウレタンやボアなどの素材を使います。
真冬の防寒や暖かいブーツを作りたい時には、ボア裏にした方が喜ばれたり、全面に革を裏に使うよりはウレタンの方が足を入れた時に優しく感じたりします。
一番やってはいけないのが、全面合皮PUの裏!
通気性もないので、足が蒸れてとっても辛いです。
次にブーツの中でも、難易度高めなフィットブーツ。
店頭で試着した時にがっかりすることが多くないですか?フィットブーツ。
ふくらはぎの部分がししゃもみたいだったり、太さが違ったり、自分の足の形に合うフィットブーツはなかなか見つからないですよね。
これ!
靴屋さんにとっても難しいのです。
フィットブーツはメリハリをもたすのがキレイなシルエットの条件なのですが、同じ足のサイズでも身長も体型が様々なように、人によって足のシルエットも変わってきます。またパンツインするのか、スカートに合わせたいのか、によって設定も変わってきます。
ブーツの企画の時期にうんうん唸るケースが多いので、ブーツを企画すると分かっているならば、冬の店頭にブーツが並んでいる時期にたくさん試し履きして、自分が良いと思うシルエットのブーツをサンプル買いしておくことをオススメします。
サンプルしかないと修正が本当に難しいので、見本のブーツがあるととっても助かります。
も一つ最後に。
ブーツの内側ファスナーはまっすぐ踵におろすのではなく、踏まずの部分に逃がしてください。たまに踵におろしているブーツを見るのですが、薄いストッキングを履いたりすると歩くたびにファスナーが擦れるのが気になります。
ブーティはくるぶしがあたらないように気をつけてください。
歩くたびに擦れて痛くなったりします。
デザインによってはくるぶしにあたるくらいならば、思い切ってかぶせた方が良いケースもあります。
つらつらと書き連ねましたが、シューズデザイン ブーツ編は以上になります。