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「あかいふうせん」 イエラ・マリ/作

 特に自分の嗜好に由らず、図書館の棚の端から順に絵本を読んでいると、え、そこで終わるの? という本が多いなあ、と思う。絵本にオチを求めるのは間違っているのか、そこは最早子供でもないし、子供時代好きだった絵本が「かぐやひめ」と「つるのおんがし」と「フレデリック」だった私にはよくわからない。終わるんかい! と突っ込むのではない楽しみ方がきっとあるのだ。多分。

 「あかいふうせん」は一見そういったことと一線を画す絵本である。
 グラフィック作品に近く、言葉は一切ない。ただ洗練された画面だけで物事のうつりかわりと時間の流れを物語る。

 ここでその内容を説明してしまうとつまらないので、是非読んでいただきたい。赤く塗られた図形と、ただ黒い、数学的で均一な線で描かれた記号が織りなすささやかな物語がそこにある。
 白、黒、赤の三色だけの画面の向こうに、風が渡り、草が鳴り、雨のにおいがするような気がしてくる。

 絵本のページをめくる醍醐味だなあ、と思わせてくれる一冊である。

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