Laver Cup が面白い!
はじめに
私は4大大会を中心にテニスをTV観戦して20年余り。実は Laver Cup はチェックしてこなかったのですが、今年はBIG4(フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マレー)が揃って参戦するという前情報があったのと、私の長年のアイドル、ロジャー・フェデラーが引退試合に選んだことから、大注目して全試合をオンライン観戦しました。
もちろん、ロジャーの引退試合とそれに続くセレモニーは涙無しには観れない美しいものでしたが、テニス・イベントとしてめちゃ面白い!と大いに感動したので、この熱い気持ちをシェアしたくなり、書いてみました。
Laver Cup とは
(Wiki をざっとまとめてみた)
ロジャー・フェデラーらが中心となって企画し、2017年から始まったテニスイベント
大会名はロッド・レーバー氏の名前を冠している。トロフィーの形もレーバー氏を表すロケット型
ゴルフの Ryder Cup をヒントに、Team Europe VS Team World の対抗試合
開催地は欧州と世界(主に北米)の都市で毎年交互に組まれる(2020年はパンデミックで延期)
2019年からはATPの公式イベント
参加選手にはATPのポイントは付かないが、ランキングに応じた参加料と優勝チームには1人当たり25万ドルの賞金が出る
両チームのキャプテンを務めるのはテニス・レジェンド(Team Europe はビヨーン・ボルグ、Team World はジョン・マッケンロー)
参加選手は6月の全仏オープン終了後のATPシングルスのランキングから上位3人とキャプテンによる選抜3人の計6人が1チーム(但し、諸事情により必ずしもランキング上位3人とならなかったり、補欠の選手を加えることもある)
3日間で9つのシングルスと3つのダブルス試合が組まれる
初日の勝者は1試合につき1ポイント、2日目の勝者は2ポイント、3日目の勝者は3ポイントを得て、チームの合計ポイントが13点になった方が優勝
シングルスに出場するのは1人2回まで。6人中4人はダブルスに出場する
試合は2セットマッチで、ワンオールの場合は10ポイント先取のタイブレーク制
公式戦とは異なり、試合中の選手はベンチでキャプテンやチームメイトのアドバイスを得られる
個人的には
個人競技のテニスが団体戦になっているところが楽しい。団体戦では国別対抗の Davis Cup もあるが、Laver Cup は欧州対世界の選抜で豪華トップ選手が集まるところがポイント。
チームキャプテンが往年の名選手なので、現役選手とレジェンドとの団結も見られる。
コートサイドで試合を観戦し、チームを応援する選手たちを観れるのも新鮮で楽しい。
前日まで
プレス・セッションやテムズ川クルーズして、ディナーに出掛けたりと、楽しそうなご一行。
練習セッションで揃う BIG4 。豪華すぎる。2003年以降のウィンブルドン優勝者はこの4人で独占されているって、ほぼ20年ですよ。
この4人でグランドスラム優勝66回、グランドスラム決勝戦104回やっているそうで、もう信じられない!
Day 1
初日のメインは何と言っても最終試合のダブルス。ロジャー最後の試合に実現したラファエル・ナダルとのダブルス(通称フェダル)。ファンが一番観たかった試合が実現して、ラファと抱き合うロジャーが観れるなんて最高じゃないですか!
第1試合
全米オープン後のランキングで世界2位のルードとダブルスのプロ、ソック戦はルードが勝利。ベンチで BIG4 のコーチングを聞くのってどんな感じかしらね。ルードは緊張しているように見えました。
第2試合
チチパス対シュワルツマン。面白そうな対戦カードでしたが、チチパスの完勝。全米オープンでまさかの1回戦負けだったチチパスはすっかり完全な状態に戻っているようで良かった。シュワルツマンはちょっと本調子の輝きがない。
第3試合
マレー対デミノー。怪我から復帰して頑張っているマレーはロジャーの引退に様々な想いを抱いているのでは。一方で、ここまで2敗の Team World は1勝が欲しいところ。ガッツ溢れるデミノーが1勝をもぎ取ってくれました。
試合中にベンチに戻ったマレーに BIG3 がそれぞれアドバイスする情景とかゴージャス過ぎて震える!こういうの観れるってところが嬉しい。
試合をケータリングルームのTVで観戦するフェダルの動画とか見せてくれちゃって嬉しいじゃないの!
第4試合
遂にロジャー引退のダブルス試合、フェダル対ソック&ティアフォー。最後にこんな試合を見せてくれてありがとう!息詰まるシーソーゲーム。
コートでプレイしているロジャーの姿に感激。現役最後にナダルとのダブルスだなんて、ファンが見たいものを見せてくれました。惜しくもフェダルは敗北しましたが、最後にラファと並んでプレイしたかったロジャーの意向が叶って良かった。
ロジャーは Laver Cup でこのダブルスのみ出場予定だったし、ラファは翌日の試合以降は個人的事情で棄権でした。色々事情があったけど、ロジャーのためにラファは無理して出場してくれたのかも。ベンチに戻ってチームメイトと抱き合うロジャー。もう涙なしに観れない。
ロジャー引退セレモニー
ロジャーのスピーチはキャリアを振り返り、仲間やファン、支えてくれた全ての人に感謝するものでした。中でも感動的だったのは、ずっと前に引退させて良かったのに、ロジャーの為にずっと支えてくれたと、妻ミルカさんへの感謝の言葉と同時に泣き崩れるロジャーの姿でした。世界中のファンがTVの前で大泣きしたよ。(断言)
ベンチに戻って並んだロジャーとラファの泣き顔がもうたまらん!ラファがコメントしていたけど、ロジャーの引退はラファの一部分が失われてしまう、そういう気持ちなんだそうな。いつも重要な瞬間には側にロジャーがいたから。ラファも故障で苦しんでいるから、自分の今後のキャリアも含めて悩んでいるのかも知れない。そんな時に大親友が引退するのは本当に悲しいのだろうなぁ。
最後に両チームがコートに出て、多分ノバクの声掛けだと思うけど、ロジャーを持ち上げたシーンは本当に美しかった。(泣)ロジャーの引退はウィンブルドンが相応しいと思っていたけど、それまで高いレベルで競技を続けるのが難しいという状況なら、ロジャー自身が立ち上げに奔走した大会で、今まで競い合ってきた仲間たちと今度は共にチーム戦でプレイして現役生活を終えるというのは、最も美しい終わり方だと納得。
セレモニーを終えて、コートサイドに登場したミルカさんと抱き合うロジャーの姿にまたまた感動。美しい夫婦愛だなぁ。それにしてもミルカさんの指輪とピアスと時計のダイアモンドは大きい!(すいません、つい目が)2組の双子のお子さんたちも泣きながら父と抱擁。双子の女の子はこの前まで2歳くらいの小さな女の子だった記憶だけど、もうティーンエイジャーなんだね、大きくなっていてびっくり。
Day 2
初日の結果は Team Europe, Team World 共に2点。1試合の勝利ポイントが2点になる2日目は両チームにとって重要度が増します。
第1試合
ベレッティーニ対オジェ・アリアシム。パワー勝負の注目試合でしたが、もつれた結果はベレッティーニ勝利。試合中にベンチで先輩たちからアドバイスを受けるベレッティーニを偵察するソックに誰も気付かないシーンとか面白過ぎる!(笑)
第2試合
ノリー対フェリックス。地元ロンドンでの試合なだけにノリ―には頑張って欲しかったけど、今一つ力を発揮できず、フェリックス勝利。ノリーは周りの先輩たちが偉大過ぎるのか、ベンチでも大人しそうに見えました。
第3試合
ジョコビッチ対ティアフォー。ウィンブルドン以降は実戦から遠のいている王者ジョコビッチと全米オープンで大活躍を見せたティアフォーの勢いが楽しみな注目カード。しかしながら、ジョコビッチが強すぎてティアフォーは自分のテニスをさせてもらえず完敗。ジョコビッチが全米オープンに出ていたら、優勝者は違ったかもと思わせるプレイでした。無敵艦隊ジョコビッチ健在だわ。
第4試合
ベレッティーニ&ジョコビッチVSデミノー&ソックのダブルス戦。ジョコビッチは試合が連続するので大丈夫かと思いましたが、グランドスラムでは5時間の試合を戦ったりするのだから、何ら問題なく、むしろ直前のシングルスが良いウォームアップになっているのかも。Team World は善戦するも、 Team Europe 勝利。無敵艦隊ジョコビッチ強し。
2日目を終えた時点で Team Europe 8 に対し、Team World 4 ポイントで、予想どおり、点差が開いてきました。3日目は1試合勝利で3ポイントだから、今年も Team Europe の優勝か。
Day 3
勝負を決する3日目は、特に Team Europe が勝つための布陣を組んできました。最強ジョコビッチがもう1度シングルス登板しているので、Team World は第1試合のダブルスで決して負けられません。
それにしても、BIG 4 は脇に置いたとして、メンバーのランキングを見ても、Team World はどうしても見劣りしてしまう。メンバーが若く、ランキングもそれほど離れていないので、誰かが突出している訳でもなく、上下なく楽しそうにやっている Team World は強力な選手を抱える Team Europe に対抗できるのか?
第1試合
ベレッティーニ&マレー対オジェ・アリアシム&ソック。この4人はダブルス巧者らしく、オジェ・アリアシムはカナダのチームメイト、シャポバロフと組んで強いらしい。マレーも兄弟でペア組んで、グランドスラムで戦っていた記憶が。
オジェ・アリアシムはシングルスでベレッティーニに負けているので、ここでリベンジしたいところ。あ、でもマレーもシングルスで負けているし、1勝したいところだろうなぁ。
白熱した試合はオジェ・アリアシム&ソック組が勝利!Team Europe 8対 Team World 7で得点はほぼ並ぶ!次の試合で仮にジョコビッチに負けても、まだ望みをつなげられる!
Team World は元気なボーイズが和気合い合いで、チームシート前で腕立て伏せをやって勝利のお祝いに集まっていました。可愛いぞ、コイツら!
第2試合
ジョコビッチVSオジェ・アリアシム。昨日のジョコビッチの出来からして、彼の勝利を予想していたら、番狂わせが起きました。オジェ・アリアシムが素晴らしいテニスをしてジョコビッチをブレークして第1セットを取りました。
ベンチに戻ったジョコビッチの顔が固まって、険しかったです。そんなノバクに声を掛けられるメンバーはロジャーしかいません。若手は皆、雰囲気を察して控え目に立つばかり。ロジャーでさえ、声を掛けるタイミングを見計らう様子で、ベンチの空気は凍り付いていましたねぇ。明確な上下関係がある Team Europe ゆえの状況。素晴らしい戦況に盛り上がる上下無し Team World とは対照的。
しかし、競り合った第2セットもオジェ・アリアシムが取り、ジョコビッチからまさかの大金星を上げました!すごい、本当に勝った!ダブルスで身体が温まり、勝利でスピリットも高揚していたのがシングルスにも良い影響だったのかも。
これで8対10で Team World がリード!次の試合で Team World が勝てば優勝、 Team Europe が勝てば最終戦の勝敗に結果が委ねられます。最後のルード対フリッツまで観たいぞ!その2人は最終戦のためにトレーニングルームでアップを始めた様子。そんな2人の様子まで覗けるなんて、この大会はファンの気持ちをくすぐる仕掛けが沢山!
第3試合
チチパス対ティアフォー。これも面白い対戦カードと思っていたら、気合の入った素晴らしいチチパスのプレイの前にティアフォーが全く力を出せません。ありゃ、これじゃジョコビッチに負けた昨日と同じだ。ところが、第2セット数ゲーム目からティアフォーが復活。競り合った末にタイブレークをモノにして、決戦の10ポイント・タイブレークへ。そして遂に逆転勝利!あんなにチチパスが完璧だったのに、テニスってわからない。
8対13で Team World が初優勝!3日目の3試合全てに勝利するという番狂わせ!大喜びするチームが微笑ましい!おめでとう!
優勝杯が渡されたセレモニーで、司会の方がスポンサーの名前を読み上げて感謝しているのを聞いて、ハタと理解しました。メルセデス、ロレックス、クレディ・スイスって、これ皆ロジャーのスポンサー。会場の壁にあったスポンサーロゴはユニクロやオン、スイス観光局など、ロジャーのスポンサーが多い。つまり、これは実質ロジャーの大会なんだね。企画を実現させるためにロジャーがスポンサーを連れてきたんだ。さすがテニス・アイコンにしてビジネスマン。
最後のスピーチでロジャーは来年バンクーバーで開催される Laver Cup に選手とは違う立場で参加することを述べました。来年かぁ、行きたいなぁ。
優勝のシャンパンかけに興じる Team World 。どこかのメディアがコメントしていました。「彼らは明らかにこれに慣れていませんね。これをやるにはゴーグルが必要です」爆笑!
おわりに
2022年の Laver Cup はロジャーの引退があり、特別なイベントとなりました。また、大会が開催されてからずっと負け続けてきた Team World が初優勝を飾ったことでも記念すべき大会になりました。
公式戦とは違う団体戦での大会は上位選手の交流の場でもあり、現役選手とレジェンド・プレイヤーを繋ぐ場でもあります。優勝したジョン・マッケンロー・キャプテンが言っていましたが、大好きな友人のボルグと再会して楽しめるこの大会が毎年楽しみだそうです。勝敗そのものよりも、この大会はテニスのセレブレーションの場なのだと思います。
数年後くらいには、Team Europe のキャプテン席にロジャーとラファが座っているのかも知れません。想像すると萌える!
一介のテニスファンとしても、注目の選手のプレイや素顔を垣間見れる楽しい大会でした。いつか現地で観戦したい!
今年はこの大会に出場した選手のうち、5人が翌月に日本で開催される楽天オープンテニスにやってきます。うう、楽しみだ!今年は有明に行くぞ!