冬浮

冬浮です。マーダーミステリーのシナリオを書いています。代表作『地球より愛をこめて』第2…

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冬浮です。マーダーミステリーのシナリオを書いています。代表作『地球より愛をこめて』第2回新作マーダーミステリー大賞ミステリアス・トレジャー賞受賞。https://www.mysterious-treasure.com/from-the-earth-with-love

最近の記事

【ゲームレビュー】アーマード・コア6-AC6は何に火を点けたのか-

はじめに生まれ落ちた問い 先日、以下のようなニュースが流れた。 アーマード・コア6(AC6)が世界累計出荷本数300万本を突破したというニュースだ。AC6はフロム・ソフトウェアから2023年に発売されたゲームである。20年以上続くナンバリングタイトルの最新作であり、前作『アーマード・コア ヴァーディクトデイ(ACVD)』から数えて10年近くの月日が空いた。 AC6の出荷本数300万本とは特筆すべき数字である。前作ACVDの売上が約11万本。単純な比較で30倍近くになって

    • 【マダミス】マダミスの構造的分析-または『地球より愛をこめて』への応用-

      はじめに『地球より愛をこめて』の発売に先駆けて 拙作『地球より愛をこめて』が2024年8月3日に発売される。 ミステリアス・トレジャーから発売されるこちらの作品は、SFをテーマにしたマーダーミステリーゲーム(以下、マダミスと表記)である。以下、シナリオ背景を引用しよう。 一般販売する初めての作品であり、ミステリアス・トレジャーの水谷さんをはじめとして、たくさんの人に関わっていただいた。私の拙いシナリオが製品として成立できたのは、皆様の助力によるものである。この場を借りて

      • 【書評】渡邉雅子『「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル』-今、歩むべき道-

        はじめに常識とは何か 論理的という言葉がある。日々の生活でもよく耳にする言葉だ。どうやら現代社会においては、論理的であるということに価値があるらしい。実際私も論理的であるという評価を受けることがある。(それと同じくらい理屈っぽいとも言われるのだが)その部分に着目すると、論理的という一つの型があり、その型は普遍的であるという印象を受けるだろう。 だが、それは違うと渡邉雅子は主張する。 渡邉によると論理や思考の源泉にあるのは「書く型」である。その差異が結果として論理や思考の

        • 【書評】藤本タツキ『ルックバック』-凡人として生きるということ-

          はじめに3度目の正直 私が藤本タツキの『ルックバック』を読んだのはこれで3度目である。最初に読んだのは読み切りとして初めて掲載された時。当時『チェンソーマン』が話題になっていたため、この作品も大いに注目されていた。初読の感想は「面白い」であった。それ以上でもそれ以下でもなく、なぜ面白いと思ったのか追求するほど心が揺さぶられた訳でもない。 次に読んだのは『さよなら絵梨』が掲載された時である。その頃世間の注目は藤本タツキそのものに移行しつつあった。その時流に乗り、読み返そうと

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          【書評】朝井リョウ『正欲』-生きるためのたった1つの冴えたやり方-

          はじめに『正欲』が傑作である所以  朝井リョウの『正欲』を読んだ。『ゆる言語学ラジオ』の堀元氏が自身のnoteでお勧めしていたことが一番の理由である。読書後、私の心に残ったのは混沌とした感情の複合体であった。その正体は何か。それを自分なりに整理し、分析した結果見えてきたものがある。それをより多くの人と共有したい。その動機から私は今回この書評を書いた。  言うまでもなく『正欲』は傑作である。だが、その所以を私達は本当に理解しているのだろうか。この書評が、その一端を担えれば幸

          【書評】朝井リョウ『正欲』-生きるためのたった1つの冴えたやり方-