りろ◆京町家の女将

京都ぶぶ漬け伝説研究家・ 取り壊す京町家の運命を変えて活用しています・ 食と旅のライタ…

りろ◆京町家の女将

京都ぶぶ漬け伝説研究家・ 取り壊す京町家の運命を変えて活用しています・ 食と旅のライター31年・ USJ裏ワザ研究家・ ミニチュア作家・ 作詞作曲する文筆家

最近の記事

らっきょう畑がキラメキに満ちる時 ~鳥取砂丘周辺~

 見渡す限りの丘陵が赤紫色に染まるというらっきょうの花畑を見に行く鳥取~島根~広島~岡山① りろの旅エッセイ  「らっきょうの花が咲くのって、確か今頃のはず」  相方の言葉を聞くなり、私は手あたり次第に着替えをかき集めてかばんに詰め込み始めた。  「もう咲いてるの? 間に合うかな……」    以前、相方が福井県で見たという、らっきょう畑が濃いピンク色に染まる光景。普段あまりなじみのないらっきょうの花だけれど、小さな花々が一斉に咲きそろう様子はどんなにか華やかなんだろうな。ラ

    • 過去のサイズ ~それは心が決めた記憶~

      半径50メートルの舞台。 例え檻に閉じ込められたような人生であったとしても、 そのステージは自分が思うより広く深い。 だから、どんな人でも作品が書ける。 そんなメッセージを伝えたくてメルマガを書き始めたのが2002年の冬だった。 1993年、24歳の9月にライターという職業を始めてから、 いろんな人にこう言われるようになった。 「文章を書ける人がうらやましい」 「私も書けたらいいのに」 「私なんて書くことが何もないから」 「書きたいけど何を書いていいのかまったく思いつかな

      • ども。恐竜時代からライターしてます

        うわー! ライターさんいっぱーい! 編集者さんもいっぱーい! パーティみたーい! noteを書き始めて最初に思ったのがコレでした。 ひゃ~おもしろ~い~楽しい~~とウキウキして 皆さんの記事、いっぱい読みました。 いやぁ~ほんま、おもしろいわぁ。 ライターを始めたところです、とか 3年目です、8年目になります、もう13年やってます、とか。 みんながんばったはるねんなー。 そしてみんな、めっちゃマジメ。 えらいなぁ。 私なんかぜんぜん知らんかった。 ライターのジャンル

        • 2・餃子240個の日常と苦悩の始まり

          《りろの食・旅エッセイ》~食べることは生きること編~連載・2 「餃子240個の日常と苦悩の始まり」    いつの日からか、キッチンに小さなイスが置かれるようになった。 母の鏡台にセットされていた少し低めのイスだ。 私の背丈の半分近くはあるそのイスに「うんしょ」と上りついて立ち上がれば、どうにかキッチンの台に手が届く。 私専用のお立ち台だ。 そこからの眺めが大好きだった。 料理している母の手元がぜんぶ見える。 ピーラーでジャガイモの皮をむき、例の禁断の包丁でトン、トンと切って

        らっきょう畑がキラメキに満ちる時 ~鳥取砂丘周辺~

          ◆町家の声がきこえる・1

          ◆町家の声がきこえる・1   ~はじめに~    消えゆく運命だったこの京町家が命をつないで19年目の秋。 想像もつかなかった激しい波にもまれながら過ごした日々を、今、静かに思い返しています。 悲喜こもごもの出来事、かけがえのない出会い、温かい方々の笑顔。 自分の命があるうちに、どうしても伝えたいことがあります。 2006年から1年余りの間、私はこの京町家を残すための格闘をメルマガで生中継していました。 その時の思いに立ち戻りながら、改めて19年の軌跡をまとめ直してここに連載

          ◆町家の声がきこえる・1

          尻ぬぐいの記憶

           インターホンを押す指先に冷や汗がにじんでいる。 黒い箱から返ってきた低い声は猜疑心に満ちていた。 ああ、やっぱりな…… 重い足取りでここにたどり着いたが、声を聞いて頭まで痛くなってきた。    そもそもフリーランスでライターをやっているのに、なんで私が部下の尻ぬぐいみたいなことをしなければイカンのだ。 おとといの電話が始まりだった。 「お願いしたいお仕事があるんです。じつは昨日、うちの社員がAさん宅へインタビューに伺ったのですが、泣いて帰ってきたんです。なんでもAさんをえら

          「昼間の気温」  作詞・作曲:りろ

          昼間の気温を今日も知らない   ビジネス街はマザーボード 取り込まれた私は CPUにもなれず ひたすら冷却器を回しながら 上着を羽織る 温暖化の地球   繰り返されるイノベーション 崩れゆくモチベーション 生きるために食べる 食べるために稼ぐ 稼ぐために生きる   メビウスの輪にナイフ かざす どこを裂けば断ち切れる 陳腐な日常の中で 何を守りたいのか 見果てぬ夢       息苦しい通勤列車は肌寒く 朝の温度はいつも設定通りで ブラインドで遮断された風景 プログラミングされ

          「昼間の気温」  作詞・作曲:りろ

          昼間の気温を今日も知らない

          「昼間の気温を今日も知らない」 こんな歌い出しの曲を作った。  廊下を歩きながら、色づき始めた南天の実を眺める。瓦を額ぶちにした四角い空に少し茶味を帯びた黄緑色がコロコロ揺れている。こういう色を威光茶と呼ぶらしい。伝統色の名称はなんとも多彩だ。いにしえの人々はよほど繊細に自然の色合いを見分けたのだろう。  京町家で暮らし始めてから、私は一日に何度も南天の色づきを観察するようになった。お手洗いに立つ度に庭が目に入るからだ。下水がなかった時代、お手洗いを母屋の外に置いたのは必

          昼間の気温を今日も知らない

          映画『焼きナス』         

          《りろの 食・旅エッセイ》~食材への愛 編~1    ポンッ……プスウゥーーーーーー  網の上に転がったナスが音を立てる。堰を切ったように真っすぐ立ち上る湯気。相槌を打つごとく鳴き始める中庭のひぐらしの声。夕立はもう上がったようだ。  もし私が映画を撮るなら、こんな始まり方の作品を記録してみたい。それほどまでに焼きナスはドラマティックなのである。  出来れば火鉢に炭火がよい。白い灰に埋もれたゴトクに目の粗い網を置き、艶めかしいナスを丸ごと四本並べる。魚は殿様に焼かせよ、

          映画『焼きナス』         

          京都「ぶぶ漬け伝説」。ぶぶ漬けは出さない?ヘタすりゃ命にかかわるってどういうこと?生き証人が語る真実とは。

          《リアル京都》~ホンマの京都編~1 ・りろエッセイ・ 京都人、消えろ  肩書きを「京都ぶぶ漬け伝説研究家」にしようかと考えあぐねている。 ある“ひと言”を目撃してしまったからだ。 寝床でスマホをいじりながらXを開いた時だった。上へ上へと画面をなぞっていた親指が思わず止まった。   ――京都から京都人が全て消えればもっと京都を好きになるのにね――   いや別に泣きはしない。ズラッと並んだコメントに 「ほんとそれ!」 「京都人さえいなければいい町だよな」 「京都人いない京都サ

          京都「ぶぶ漬け伝説」。ぶぶ漬けは出さない?ヘタすりゃ命にかかわるってどういうこと?生き証人が語る真実とは。

          1・我は何も食べずに生きとうございます

          《りろの食・旅エッセイ》~食べることは生きること編~連載1    絶対ウソやろ。 幼少の頃の自分について人に話すと必ずこう言われる。 しかし本当なのだ。本当に何も食べたくなかったのだ。 「ああ、何も食べんでも生きられたらええのになぁ」 本気でそんなことを考えていた人間が、 数年後にはこんなに「食べること」が好きになり、 しかもそれを職業にするとは。 人間ってヤツは全くようわからん生き物である。  そもそも生まれた時から「生きようとする力」が弱かった。 授乳に何時間もかかっ

          1・我は何も食べずに生きとうございます

          47都道府県を旅し京都の真実が見えた。文筆業りろのプロフィール

          日本全国を旅し、人や町に“京都のあり方”を教えられた。 そんな私が人生をかけて守った京町家の魅力と意義  20年前、街並みが激変していく京都に危機感を抱く人は少数派だった。京町家がみるみるうちに姿を消していくこの町で、未来を案ずる声はまだまだ人々に届いてはいなかった。そんなご時世で、取り壊される運命にあった一軒の“古ぼけた庶民の家”をどうしても守りたいと言い出した私は、単なる“迷惑な夢想家”でしかなかった。実際、この町家を守る意義について必死に訴えた時、返ってきた言葉は「ハ

          47都道府県を旅し京都の真実が見えた。文筆業りろのプロフィール