解体韻書 Vol.7 BASI「JULIET」
第7回目は韻シストのMCでもあり、ソロでも活動しているBASIの4枚目のソロアルバム『MELLOW』に収録されている「JULIET」という曲です。(2014年リリース)
また、2018年にBASI & THE BASIC BAND名義でリリースしている『Rainy EP』には「JULIET RE EDIT」として、バンドアレンジVer.が収録されています。
これは失恋ソングです。聴けばわかりますが、男子ならこういう気持ちになったことが必ず一度はあるはずです。
凄く切ない内容なんですが、決してブルーにならないのは、少し自嘲的で陽気なトラックとBASIのユーモラスなリリックのおかげでしょう。(バンドアレンジの方はしっとりとしていて、より切ない感じですが)
表現がいちいち面白くて、ライミングもツボをついてくるので、音楽的な快楽としても、失恋のペインキラーとなってくれる1曲だと思っています。
では、そんなこの曲の韻について解剖していきたいと思います。
【Verse1】
最初の8小節です。
4小節目までは "a" の連続音を多用しています。
5~6小節目では「新品」と「神秘」で子音踏み、7~8小節目では、"o" の連続音を多用しています。
次の8小節では、"ai" がメ韻となっています。"ai" だけで言うと、8小節の間に17回踏んでいます。
特に、6~7小節目では "aaai" で4回踏んでおり、気持ち良いフロウを生み出しています。
最後は「崩壊」と「相談し」で踏み、バースを締めます。
【Verse2】
最初の8小節です。
基本的には、2~3音の脚韻ですが、1小節目と3小節目の頭は分かりづらくも、「ID」と「焼印」で踏んでいます。
最後の8小節です。
基本的には2小節1セットの脚韻です。
「狂"わせた"」と「ほつれ"たセーター"」、「塗り絵」と「"ジュリエッ"ト」などですが、
5~6小節目の「的を外し」と「後の祭り」はこの曲最長の6音での韻です。また、「とどの"つまり"」と「祭り」はアナグラムになっており、気持ち良い語感を生み出しています。
また、1小節目の「エミネム<e mi ne mu>」と前半8小節の8小節目の「眠れぬ<ne mu re nu>」は母音は完全に合ってはいませんが、2音目の子音 "m" が合っているため、韻を踏んでいると言っていいかもしれません。
~まとめ~
Verse1の後半8小節での "ai" の畳みかけなど韻が密集する部分はあるものの、基本的には2小節~4小節で完結する脚韻であり、特出すべきものはなかったように思います。
ただ、言い回しが面白いのと、単純な脚韻が心地よい(声の力もあるか…)ので決して聴く者を飽きさせない1曲だと思います。