Vol.4 「24 bars to kill」 Ski Beatz, Anarchy, Rino Latina II, 漢 & Maccho③
③漢 a.k.a. gami
~ 一筋縄ではいかない新宿スタイル ~
特徴
漢は言葉数が多く、前の2人と違って分かりやすい脚韻を使わないので、韻の解剖という面では非常に難儀しました。
トレードマークの頭韻を中心としながらも、たたみかけるラップの中に、1音のイントネーションでグルーヴを作っていったりするので、聴く側に「ここで踏んでいる」という安易な理解を与えません。つまり、掴みどころがないんです。
新宿スタイル
漢は長年新宿の裏社会を生き抜いており、ストリートビジネスにも精通しています。そこでは嘘やはったりを駆使し、時には真実をぼやかしながら、相手の心をつかんでいくのではないでしょうか。
何が真実で何が嘘かはっきりとしない中、膨大な情報量の中でディールを成立させていくものなのかもしれません。
漢の韻のスタイルもまさにそうです。言葉数が多く、しっかり意味のある単語を詰め込んでいるので、1回聞いただけでは処理できない情報量です。
また、入り組んだ頭韻を多用し、1音のイントネーションでグルーヴ作るため、何が韻で何が韻じゃないか、よーく聴いてもはっきりはしません。
やはりその人生、実生活が韻のスタイルにも影響しているのではないでしょうか。
リリック
そんなことを考えながら、中身に入っていきます。最初の4小節です。
メ韻は "iu" かとも思われますが、単純に"く"や "u" という言葉にアクセントを置いているようにも聞こえます。
次の4小節。
先の2小節では、"uua" をメ韻としていますが、頭韻で "oo" や途中で"oua"を入れてきます。
また後の2小節は高速フローの中に気持良い「か」の頭韻が目立ちますが、脚韻も「パンチで軽く拉致る」「巻いてラフにラリる」とかなり硬めです。
この4小節では、先の2小節では、"auu" の脚韻、後の2小節では"ae"の頭韻をメ韻としています。
この4小節では、先の2小節では明確に踏んでいるとは言い辛いのですが、よく聞くと四角で囲んだ "i" の音を強調していることが分かります。
また、後の2小節では、"i" の音を連続して使いつつ、「調達」と「聴覚」の脚韻は分かりやすく踏んでいます。
この4小節は、"a" の頭韻が継続していくのですが、特出すべきは先の2小節です。
2小節の間に "aai" の韻が実に6個も登場します。
また、後の2小節でも"a" の頭韻が止まりません。
個人的にはここが一番気持ち良いラインでした。
最後の4小節ですが、分かりやすくは踏んでいませんが、「"ずぶのド"素人」と「フルボッコ」で踏んでいると思われます。
今まで複雑な韻が多かったのと対照的に、最後はシンプルかつ強烈に「ヒ"ロポン"」と「マイク"ロフォン"」で締められます。
以上が③漢 a.k.a. gamiのバースですが、掴みどころがない、一筋縄ではいかないというスタイルだという事をなんとなく分かっていただけたかと思います。
リリックの内容も闇が深いですが、韻の構造も謎が多いです。これが新宿スタイルか…
次回はラスト、④Macchoのバースを解剖していきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?