ポップスという器を満たす音ーMrs. Green Apple「Unity-EP」

ハイパーポップを飲み込んだポップス

本作は、Mrs. Green Appleのポップスとロックの中間地点にいるような立ち位置を維持したまま、近年のハイパーポップムーブメントを取り入れた作品であるかのような印象を受けた。

ハイパーポップは音割れや高速のBPMといった「過剰さ」と、生楽器も電子音もカッコいいと思ったものはなんでも飲み込んでしまう「雑多さ」が特徴とされる。Mrs. Green Appleは、雑多なジャンルを飲み込むハイパーポップをさらにポップスとして飲み込み、過剰な音をあえてもう一度削ぎ落とすことで、ハイパーポップのノイジーさをポップスの枠に収めたのではないか。
特にそれが顕著なのは「ブルーアンビエンス(feat.asmi)」で、忙しないギターリフの上をさらに塗り固めるようなシンセ、随所で挟まれるグリッチなど、ハイパーポップに通じる過剰さを感じさせる音作りがなされている。また、ハイパーポップはZ世代の間で勃興したユースカルチャーとして語られることも多いが、中堅と言って差し支えない世代のバンドがユースカルチャーを飲み込んで作った曲が「焦らずに大人になってみる」と歌うことには、近年のユースカルチャーに見られる自暴自棄的な「病み」に対して差し伸べられた手のようにも感じる。

ハイパーポップの文脈から本作を語ったが、EPのラストを飾る「Part of Me」は伸びやかなメロディーとピアノの音色が心に沁みる王道のバラードだ。時代を柔軟に飲み込みながら、素直な詞と表情豊かな歌という骨の部分で十二分に聴かせられるバンドであることも示している。

「バンドの時代は終わった」と言われることも少なくない中、「Unity-EP」は、彼らが常にフレッシュな存在感を放ちながら支持を受けている理由を垣間見ることができる作品だ。

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