大高理穂子

大高理穂子

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ポップスという器を満たす音ーMrs. Green Apple「Unity-EP」

ハイパーポップを飲み込んだポップス 本作は、Mrs. Green Appleのポップスとロックの中間地点にいるような立ち位置を維持したまま、近年のハイパーポップムーブメントを取り入れた作品であるかのような印象を受けた。 ハイパーポップは音割れや高速のBPMといった「過剰さ」と、生楽器も電子音もカッコいいと思ったものはなんでも飲み込んでしまう「雑多さ」が特徴とされる。Mrs. Green Appleは、雑多なジャンルを飲み込むハイパーポップをさらにポップスとして飲み込み、過

    • ひとりのラッパーが画面を飛び越えたーずっと真夜中でいいのに。「綺羅キラー(feat.Mori Calliope)」

      バーチャルとリアルの境目を打ち破るラップ 「VTuberが音楽に本腰を入れ始めている」と言われて久しい。先例ではシドのマオと明希がにじさんじの葛葉に「甘噛み」を提供したり、ホロライブでは宝鐘マリン「Unison」にてYunomiが意図的にキックの低音を削るような実験的な試みをしたりしている。 しかし、この事実がVTuberファン、あるいはコアな音楽批評家の枠を超えて支持されたか?という点については、まだ疑問が残る。強度を持った楽曲は既に数多くリリースされているにも関わらず

      • 蒼い恋は運命を飛び越えるーThe Otals「シナリオライターを撃たないで」

        音と詞で紡がれた映画 The OtalsはJune FAXxxxxxとMarina Timerによって結成された、シューゲイザー/ドリームポップデュオである。メンバーはカートゥーン調のタッチで描かれたキャラクターで表現されており、キャッチーなビジュアルも強烈な印象を残す。 「シナリオライターを撃たないで」は、瑞々しくキラキラとした音の裏で鳴るノイジーなギターというドリームポップの王道サウンドの流れを組みながら、獰猛に食らいつくように歪んで動くベースが楽曲のスパイスとなって

        • 価値のない命を生きるー夢追翔「拝啓、匣庭の中より」

          バーチャルから命の価値を問う 夢追翔は、「拝啓、匣庭の中より」において、伝えようとしているメッセージが一貫しているように感じる。それは、命への盲信に対する疑問と、それでも生き続けるという前向きな諦念だ。 「命に価値はないのだから」というストレートな曲名もあるが、人は生きているだけで素晴らしいなんて嘘だ、そんなメッセージがアルバムを貫いているように感じた。それはバーチャルを象徴するPC画面から、リアルを象徴するゴミ溜めのようなワンルームへ銃口を突きつけるジャケットイラストか

          【ライブレポート】歪さは強固な土台の上で進化する。Pot-pourri(ポプリ) 2ndフル・アルバム『Diary』発表記念ファースト・ワンマン・ギグ

          Pot-pourri(ポプリ)の2ndフル・アルバム『Diary』発表記念ファースト・ワンマン・ギグが5月8日(日)、吉祥寺NEPOにて開催された。 前後編に分かれる2部構成で行われ、『Diary』のレコ初ライブでありながら、1stアルバム『Classic』の楽曲も多く披露され、アルバムレコーディング時から時を経て進化した旧曲のアンサンブルも聴きどころの一つであった。 『Diary』ではマニュピレーターを担当するRYO NAGAI a.k.a.液晶氏がミックスを手掛けてい

          【ライブレポート】歪さは強固な土台の上で進化する。Pot-pourri(ポプリ) 2ndフル・アルバム『Diary』発表記念ファースト・ワンマン・ギグ