低い競争倍率での合格戦略とは?教員採用試験の低倍率化に伴う合格戦略とは?
本日のテーマは,
【低い競争倍率での合格戦略とは?教員採用試験の低倍率化に伴う合格戦略とは?】
です。
ここ最近,教員採用試験の倍率が低下しています。
特に小学校教諭志望では,その低下が激しく,競争倍率が2倍未満,場所によっては,1倍未満というところも出始めています。
中学校・高校でも,自治体や教科によっては,出願時の倍率で,1倍台の低倍率の自治体もあり,これに受験辞退(欠席)などを含めると,実質的な倍率はさらに低下します。
こうなってくると,1次試験の合格率が,90%以上などになり,2次試験の合格率も,80%や90%くらいになっている自治体も多くあります。
例えば,2022年夏に実施された神奈川県の教員採用試験では,
小学校志望で,1次試験受験者875名のうち,850名が合格しています。最低合格点は,100点満点で,30点です。
中学校国語では,1次試験受験者96名のうち,94名が合格しています。最低合格点は,100点満点で,33点です。
高等学校校英語では,1次試験受験者178名のうち,176名が合格しています。最低合格点は,100点満点で,32点です。
もはや,全員合格に近づいています。
このようなところでは,1次試験の合格発表,2次試験の合格発表を見ても,受験番号が,ほぼ連番で続いているという光景が見られます。
さて,では,競争倍率が,1倍台とか,2倍台というように,低倍率になるということは,どういうことなのかを考えてみますね。
一般には,競争倍率が,4~5倍を切ると,優秀な人材を選び出すのが難しくなると言われています。
3倍を切ると,危険水準で,優秀な人材だけで,採用定員を満たすのが困難になります。
2倍を切ると,もはや,実質的には,全入に近づく状態となり,1次試験,2次試験等の各段階で,合格率が,80%,90%になることもなります。
2倍を切り,1倍台になるようでは,もはや,教員採用試験の1次試験,2次試験の各段階での,選抜機能はほぼ失われて,実質的に全入となります。
このような状態になってくると,本来は,大掛かりな追加募集などの方策を用いるのが常道ですが,官僚的な教員採用試験は,夏の1セットの教員採用試験だけで,募集定員を満たそうとします。
もちろん,教育委員会もバカではないので,2倍前後の競争倍率では,1次試験,2次試験等の各段階で,80%を超えるような合格率となり,それぞれの段階の選抜機能が実質的に失われることくらいは,わかっています。
そして,もちろん,教育委員会も,優秀な人材だけを採用したいと願っています。
このような場合,どのようなことが起きるかと言いますと,おおむね,次の3つのことが起こります。
(1)筆記試験の選抜機能がほぼ失われる。
(2)面接などの人物評価での,「変な人」を排除するという圧力が極めて高まる。
(3)教員採用試験での面接等の人物評価以外の要素(いわゆる,vetting)が行われる。
以下,順に,この3つを考察していきますね。
(1)筆記試験の選抜機能がほぼ失われる。
完全に白紙で出すとか,0点近くを取るとか,そのような明らかな棄権的なものでない限り,筆記試験で,非常に低位の合格者が続出します。
事前に,各教科・各分野で,明確な「足切り点」とかが,決まっていない場合は,例えば,教職教養試験で,20点台~30点台でも,1次試験を通過するということもあります。
そこまでひどくなくても,20点台~30点台で,筆記試験がメインの1次試験を通過できる自治体も増えてきました。
また,これを予想してか,年々,筆記試験の難易度が低下しています。
採用側も,できるだけ,簡単な問題を作って,あまりにも低得点で合格することがないようにしているようです。
ここまで,書くと,受験者によっては,「それは,ラッキー!」と思えるかもしれませんが,以下の(2)や(3)を読むと,そうは喜んではいられません。
(2)面接などの人物評価での,「変な人」を排除するという圧力が極めて高まる。
ここが,低倍率での合格戦略で,最も重要なところです。
低倍率となり,面接などの人物評価が中心の2次試験(3次試験)などで,80%,90%の人が合格するようになると,採用側としては,ほとんどの人が合格するのなら,せめて,「変な人」だけは採用しないようにしようという傾向が強まります。
つまり,「優秀な人を選んで採用する」という採用方法から,「変な人だけは選び出して不合格にする」という採用方法にシフトしていきます。
ほぼ全員近くが合格するのなら,「変な人」だけは,採用したくないというメンタリティになるのは,考えてみれば,自然なことですよね。
でも,ここで,重要なことがあります。
たかだか,20分前後の面接等で,本当に,「変な人」を識別できるか,ということです。
もちろん,何が「変な人」かの定義から,本当は大変なのですが,ここでは,「変な人」を,採用側が合格させたくない人という風に考えておきましょう。
そうすると,採用側が合格させたくない「変な人」というのは,次のような人でしょう。
★学校組織に順応できそうにない人。
★不祥事を起こしたり,問題行動を起こしそうな人。
★教師として,授業が成立しなかったり,生徒指導等ができそうにない人。
★合格しても,採用を辞退しそうな人。
★児童生徒や保護者,同僚教師等と,上手くやっていけそうにない人。
こういう人は,絶対に採用したくないと思いますよね。
でも,こういう人を,20分間程度で,見分けることができるかどうかですよね。
本当は,20分程度では,こういう人を見分けることはできません。
科学的には,極めて困難です。
だから,面接官の主観で判断するしかありません。
どんな主観になるかというと,次のようになることが予想されます。
★学校組織に順応できそうにない人。
➡過去に組織で順応できなかった人は,これからも順応しにくい。従って,過去にいじめられていたとか,過去に同僚・上司と衝突したとか,そういうエピソードは,危険信号として受け取られる可能性が高い。
★不祥事を起こしたり,問題行動を起こしそうな人。
➡さすがに本当に不祥事を起こして,懲戒処分になっている人は,受験しても門前払いですが,懲戒処分にならない範囲で,教採受験までに,注意処分や,口頭で注意された人や,校長や教育委員会と何らかの理由でもめたり,いざこざ等があった場合は,危険信号と受け取られる可能性が高い。
★教師として,授業が成立しなかったり,生徒指導等ができそうにない人。
➡話下手であったり,話が分かりにくかったり,表情が暗かったり,模擬授業が詰まらなかったりすると,それが,危険信号だと受け取られる可能性が高い。表情やパフォーマンスの不出来によって,不合格になる可能性が高い。
★合格しても,採用を辞退しそうな人。
➡その自治体を受験する志望理由が薄弱な場合は,合格辞退すると考えられやすい。人材不足の時代には,合格辞退(内定辞退)は,教育委員会の採用計画にとって,致命的な問題となるので,そもそも,合格しても採用を辞退しそうな人は,最初から,合格させない可能性が極めて高い。
★児童生徒や保護者,同僚教師等と,上手くやっていけそうにない人。
➡「明るく,元気に,爽やかに」を徹底していないと,全体としての印象が低下し,協調性やコミュニケーション能力がないと感じられる可能性が高い。また,自分の意見に固執したり,話し方にクセがあったりすると,危険信号だと受け取られる可能性が高い。
このように,超低倍率の面接等の人物試験では,「変な人」から排除していくという圧力が強まるために,面接等では,受験者が発する「危険信号」を探して,その「危険信号」があれば,その受験者を排除するという傾向が非常に強くなります。
(3)教員採用試験での面接等の人物評価以外の要素(いわゆる,vetting)が行われる。
教育委員会も,バカではありませんから,超低倍率時代には,20分間程度の面接などでは,正確な人物評価などできないくらいは自覚しています。
優秀そうな人だけを,数倍以上の競争倍率から,選び出すという選考方法でなければ,ほぼ確実に,「変な人」も採用してしまう可能性があることくらいは,教育委員会だって,当然,自覚しています。
だからこそ,低倍率が進めば進むほど,教育委員会は,面接等の人物評価以外の要素,つまりは,vettingを重視することになります。
vettingとは,アメリカ英語で,「身辺調査」という意味です。
典型的には,政府高官や,企業幹部に誰かを任命するときに,あらかじめ,その人にスキャンダルがないか,問題となる過去の不祥事がないかなどを,あらかじめ調べることです。
教員採用試験におけるvettingは,その受験者が,その自治体で,講師・臨採として働いた経験がある場合は,その時に,何か問題を起こしていないか,校長の評価はどうかということを,内々に,聞き取るというものです。
もちろん,正式な懲戒処分があれば,ひとたまりもありませんが,正式な懲戒処分でなくても,訓告,厳重注意,口頭注意などがvettingされる可能性が高くなってきています。
従来は,そこまで,していなかった自治体でも,競争倍率が低下してくると,「変な人」を排除するためにも,vettingを重視し,vettingで問題になった場合は,採用を控えるということが増えています。
ここで,よく議論されるのが,厳重注意や口頭注意はあったけれども,その後も,その翌年も,講師・臨採としては,採用されているので,問題にならないはずだという主張です。
残念ながら,この主張は間違っています。
講師・臨採は,非正規雇用です。
言ってみれば,「アルバイト」です。
子供たちとっては,同じ先生かもしれませんが,採用側から言えば,正規と非正規では,採用の基準が全然違います。
懲戒処分を受けたことがあるというのであれば,正規でも非正規でも,採用は難しいでしょうが,厳重注意や口頭注意であれば,非正規の講師・臨採であれば,人材不足のおりから,採用するけれど,正規採用は見送るという例は,たくさんあります。
受験者は,自分がvettingに耐える過去の勤務経歴を持っているかどうかを精査する必要があります。
実は,不合格要因を精密に分析していると,このvettingによる不合格というのも割合的にはかなりあります。
ただ,vettingによる不合格は,受験者ごとに,その背景が違いますし,高度に個人情報なので,ここに書くことはできませんが,相当の戦略がないと,不合格を覆して,合格を勝ち取ることは難しいものです。
このように,
(1)筆記試験の選抜機能がほぼ失われる。
(2)面接などの人物評価での,「変な人」を排除するという圧力が極めて高まる。
(3)教員採用試験での面接等の人物評価以外の要素(いわゆる,vetting)が行われる。
という3つの現象について,考察してきましたが,この考察の結果,言えることは,次のことです。
超低倍率の教員採用試験では,多くの人(場合によっては,ほとんどの人)が合格するけれども,不合格になる人は,いつまでたっても,不合格になる可能性が高い。
言い換えると,1倍台の低い倍率で,ほとんどの人が合格するような場合でも,不合格になる人は,不合格になり続けるという厳しい現実です。
そして,それは,筆記試験を頑張るくらいの,通常の受験的な努力では,克服できないものであり,さらに言えば,通常の面接の準備や練習でも,克服できないものである。
こういった不合格に当たる可能性がある人は,徹底的な不合格の分析と,徹底的な戦略の立案が必要です。
そして,その分析と戦略に基づいて,合格のための脚本と演出をしていく必要があります。
超低倍率だからこそ,合格できない人がいるということをお忘れなく。
でも,安心してください。
それでも,ゲームチェンジャーは,可能です。
一発大逆転は,可能です。
河野正夫と,合格のためのゲームチャンジャー,一発大逆転を,一緒に,完成させていきましょう!
河野正夫
レトリカ教採学院