英語教師は英語の学習方法を知るべし!
英語教師の英語力向上の必要性は、従来から言われていましたが、私は、むしろ本当の問題は、英語教師が英語学習法を知っていないところにあるのだと感じています。
私は過去20年間に100人以上の英語教師志望者を指導してきましたが、彼ら・彼女らの多くの人の最大の問題は、英語力が低いということではなく、英語の学習法を知らないということでした。
英語をただ何となく、惰性にまかせて、勉強している人が多すぎるのです。
そう言った人の特徴は次の5つです。
1.いわゆる英語のネイティブスピーカーと話す(雑談する)ことが英語上達の秘訣だと勘違いしている。
2.日本語で表現したことを英語で表現できれば、英語力があると勘違いしている。
3.リスニングを会話レベルでしか練習しないので、まとまりのある内容や文章が読まれたときに、それを聞いても、全くついていけない。
4.かなりの長さのある英語の文章を読む際に、全体の内容を要約して英語で(日本語で)話すという訓練をほとんどしていない。
5.英語のセンスを向上させる訓練をほとんどしていない。
順に考えていきましょう。
1.いわゆる英語のネイティブスピーカーと話す(雑談する)ことが英語上達の秘訣だと勘違いしている。
これが最大の勘違いです。
なぜ、英語のネイティブスピーカーと話すことだけで、英語が上達すると思うのでしょうか。
ある程度の慣れにはつながりますが、それだけです。
挨拶的な表現や相槌は上手くなるかもしれませんが、その程度です。
これは、日本人同士が日本語でいくら会話をしても、国語力や面接力は、あまり向上しないのと同様です。
目標や戦略もなく、雑談だけしても、言語能力は向上しません。
乳幼児が初めて母語を習得するような方法は、大人になってからは無理なのです。
英語のネイティブスピーカーと会話をしていれば、英語が上手くなると思うのは、まったくの誤解・勘違いです。
英語のネイティブスピーカーと毎日のように会話したとしても、アメリカの映画やドラマを字幕なしで見ても、まずは理解できないでしょう。
雑談としての会話を積み重ねた程度では、英語だけの映画やドラマを字幕なして見て、しっかりと理解できるレベルには到達しません。
2.日本語で表現したことを英語で表現できれば、英語力があると勘違いしている。
英語にちょっと自信がある人、例えば、英検1級とか、TOEIC900点以上を取得している人によくある勘違いです。
確かに、英語力をある程度持っている人たちですが、その英語は、日本語の裏返しなのです。
日本語をいかにして英語に直すかということに終始した英語であることが多いのです。
こういう人は、比較的、英語で物事を伝えることはできます。
でも、その英語があまりにも、日本語の文体を直訳したもので、日本語を母語とする人以外には、分かりにくい英語なのです。
また、日本語を母語とする人にとっても、回りくどく、少なくともインパクトある語りになっていないのです。
こういう人の最大の欠点は、正しい英語で言えば通じると勘違いしていることです。
母語である日本語で考えてみてください。
日本語を母語とする人は、日本語の文法を日常的には間違えないでしょう。
でも、文法的に正しい日本語を話すだけでは、魅力ある語りはできません。
文法的に正しい日本語を話すだけでは、上手いスピーチや、合格に値する面接の語りはできません。
英語として正しければよいと思いがちなのが、こうした人たちの特徴です。
3.リスニングを会話レベルでしか練習しないので、まとまりのある内容や文章が読まれたときに、全くついていけない。
「リスニング」を会話レベルでしか練習していない人は、まとまりのある内容を聞き取ることができません。
特に、英語のネイティブスピーカーと雑談をすることが英語のリスニングを向上させることだと勘違いしているような人は、この落とし穴にはまってしまいます。
英語でチャラチャラと雑談ばかりしていても、英語でのニュースや、英語でのスピーチや、英語でのアナウンスメントなどは聞き取れません。
雑談での英会話は、せいぜい、一人につき数秒から十数秒のやりとりを繰り返しますが、まとまった英語のリスニングは、1分から数分程度の英語を聞いて理解する必要があります。
英語で雑談をする能力よりも、英語でニュースを聞き、英語で説明を聞き、英語でプレゼンを聞き、英語でスピーチを聞いて理解する能力の方が、はるかに重要です。
私が「チャラチャラ雑談」と呼んでいるような英会話をいくら積んでも、まとまった内容をもった英語のリスニングができるようにはなりません。
まとまった英語のリスニング力の向上には、それに適した学習法があります。
4.かなりの長さのある英語の文章を読む際に、全体の内容を要約して英語で(日本語で)話すという訓練をほとんどしていない。
相当に英語力がある人も、英文を読むときは、やはり逐語理解なのです。
最初から順番に読んでいって、一文ごとに理解していくやり方です。
逐語訳ではないにしても、逐語理解なのです。
でも、私たち日本人が、日本語を読むときはこうではないですよね。
例えば、新聞の社説を読んだとします。
その社説を読んでいない人から、「今日の社説は何が書いてあった?」と聞かれたら、その社説の内容をうまくまとめて話しますよね。
社説をそのままリピートする人はいないでしょう。
これは、どんな文章を読むときもほぼ同じです。
新聞記事、説明書、百科事典の記事、こういったものを読んだ後、少なくとも口頭では、読んだ文章をそのまま繰り返すのではなく、適宜、要約して伝えます。
要約する力は、その言語の運用力がそのまま表れる能力です。
ある言語の文法や語法をいくら学んでも、その言語で書かれた文章を自分なりに要約できなければ、その言語を知っているとは言えません。
この意味で、英語で書かれた文章の要約する力は、英語力を測る最適の方法の一つです。
要約力を養成することは、その言語を運用する力を飛躍的に向上させます。
5.英語のセンスを向上させる訓練をほとんどしていない。
英語のセンスとは、大きく分けると3つあります。
① 英語をインパクトをもって語る表現のセンス
② 英語に関わる、文学、文化、歴史、伝統、芸術に関する基本的な知識と教養
③ 英語の名文、名言、名スピーチなど、優れた英語表現のストック
英語教師志望者のこうした英語のセンスのレベルは、残念ながら、あまり高いものではありません。
でも、こういった英語のセンスを磨けば、英語力・英語表現力は飛躍的に向上し、英語のネイティブスピーカーを超える英語を話せるようになります。
今日のこのブログ記事で指摘した5つのポイントを徹底的に改善・向上させれば、次のことが実現可能です。
(1) 教採の英語の専門教養の試験で、高得点で合格できる。
(2) 英語のネイティブスピーカーを唸らせるようなインパクトある英語が話せるようになる。
(3) 英語の文章、スピーチ、ドラマ、映画などが、翻訳や字幕なしで、普通に理解できるようになる。
英語教師には、このレベルの英語の使い手であってほしいと私は願っています。
河野正夫
レトリカ教採学院