教師志望者・教採受験者・講師・正教諭の方も,24の教育トピックに精通しておくと,最新の教育動向を理解することができます。


前言


学校教育の現場には,数多くの教育トピックがあります。

教員採用試験では、教職教養や教育時事というカタチで扱われますが、既に、教員採用試験に合格して、正教諭になっている人も、以下のような24の教育トピックは、毎日の教科指導・生徒指導・学級経営などにも、大きく関係しています。

教師志望者・教採受験者・講師・正教諭の方も,以下の24の教育トピックに精通しておくと,最新の教育動向を理解することができます。

★24の教育トピック


主体的・対話的で深い学び

個別最適な学び・協働的な学び

特別支援教育・インクルーシブ教育

道徳教育

キャリア教育

情報教育・教育の情報化

いじめ

不登校

児童虐待

ブラック校則

教員の働き方改革

教員の不祥事

体罰

生徒指導提要(改訂版)

LGBTQ

発達障害・学習障害

誰一人取り残さない教育

令和の日本型学校教育

AIと教育

ウェルビーイング

自由進度学習・自己調整学習

指導と評価の一体化

観点別評価

教育におけるVUCA

いま、上に、24項目をリスト化してみましたが、これらについて、

【概説】

【課題】

【あなたの意見】

を端的に語れる人は、案外、少ないのではないでしょうか?

まず、【概説】とは、上記24項目の教育に関するトピックそれぞれを、学習指導要領や答申、あるいは、文部科学省や教育委員会が発表している文書等に基づいて、適切に説明できるということです。

そして、【課題】とは、上記24項目の教育に関するトピックそれぞれが持っている課題、特に、学校現場において教師が直面する課題について認識して、上手く説明できるということです。

上記の【概説】と【課題】が語れた後に、【あなたの意見】として、上記24項目の教育に関するトピックそれぞれについて、あなた自身の経験やエピソード、想いや考え方に基づいて、意見が言えるということです

具体的に,【概説】と【課題】の例を、

★主体的・対話的で深い学び

★個別最適な学び・協働的な学び

★教育におけるVUCA

で、考えてみましょう。


★主体的・対話的で・深い学び

★★【概説】★★

「主体的・対話的で深い学び」は、平成29年度の学習指導要領改訂で明確に掲げられた日本の教育の指導理念であり、生徒が自ら学ぶ意欲を持ち、深い知識の定着と応用を目指す教育方法です。

これは、アクティブ・ラーニングや協同学習の発展形として位置づけられ、生徒一人ひとりの自律的な学びを支援することにより、21世紀の社会で必要とされる「生きる力」を育成することを目標としています。

主体的・対話的で深い学びの要素

1.主体的学び

主体的学びは、生徒が自ら学習に取り組む意欲と責任を持って学習に関わることを重視します。

具体的には、生徒が自ら学習目標を設定し、その達成に向けて意欲的に活動することで、自己効力感(「自分はできる」という感覚)や自己決定感を高めます。

たとえば、単元の始まりに生徒が自分の学習目標を明確にし、その達成に向けて行動を計画する活動が挙げられます。

これにより、生徒は学ぶことの意義や価値を理解し、内発的な動機付けが高まります。

また、学習内容に自らの興味関心が反映されることで、学びがより身近で実感的なものとなり、生涯にわたって学び続ける姿勢が養われます。

2.対話的学び

対話的学びでは、生徒が他者との対話を通じて学びを深め、思考を広げていくことを促します。

これは教員との対話だけでなく、同級生同士の意見交換や協働作業も含まれます。

異なる意見や視点に触れることで、生徒は自らの考えを相対化し、より多角的な視点で物事を捉えられるようになります。

たとえば、討論やディベート、ペアワークなどのアクティビティを取り入れ、議論を通じて意見を磨く機会を提供することが有効です。

こうした対話の場は、共感力やコミュニケーション能力を育み、批判的思考や問題解決力を高める要素となります。

3.深い学び

深い学びとは、単に知識を暗記するのではなく、それを深く理解し、関連性を見出し、実生活や他の分野に応用できる状態を目指す学びです。

この学びの段階では、生徒が学習した内容を再構成し、新たな視点から捉え直すことが求められます。

例えば、学んだ知識を用いて身近な社会問題を分析する活動や、実際のデータを扱うプロジェクト型学習などを通して、理論と実践を結びつけることで、知識がより持続的なものになります。

また、深い学びは知識の理解だけでなく、批判的思考力や創造的思考力の育成にもつながり、今後の変化が激しい社会で自ら考え、行動する力を培います。

★★【課題】★★

主体的・対話的で深い学びの課題

1.指導方法の多様化と教員の負担

主体的・対話的で深い学びを実現するためには、教員が生徒の理解度や関心に応じた多様な指導方法を活用することが求められます。

しかし、これには授業準備や評価方法の工夫が必要となり、教員の負担が増加する可能性があります。

たとえば、生徒が主体的に学ぶためのプロジェクト型学習や協同学習の準備には、通常の授業以上に教材の工夫が求められます。

さらに、生徒ごとのニーズに応じた支援も必要であり、教員が個別対応する負担が課題となっています。

2.生徒間の格差

主体的・対話的で深い学びは、生徒一人ひとりの自主性に依存する部分が大きいため、学習に対する意欲や習慣が既に身についている生徒とそうでない生徒との間で格差が生じる可能性があります。

特に、家庭環境や学習習慣の差が顕著に表れる場面があり、例えば、家族が教育に協力的で学習サポートが受けやすい生徒に比べ、支援が受けにくい生徒は主体的に学びにくい状況にあります。

このような格差に対しては、学校全体でのサポート体制や個別指導の充実が求められます。

3.評価方法の確立

主体的・対話的で深い学びを実現する中で、その過程や成果を評価する方法が未だ明確に確立されていない点も課題です。

これまでの学力評価が主に知識の定着を測るものだったのに対し、この新しい学び方では思考過程や対話能力、問題解決力などの定性的な評価が必要とされます。

しかし、こうした側面を評価するための基準や方法は、まだ教育現場においては確立されていないため、評価の公平性や妥当性に関する課題があります。

教育現場では、評価の透明性と公平性を保つために、ポートフォリオや自己評価など新たな評価手法の導入が検討されています。

以上のように、「主体的・対話的で深い学び」は現代の教育において非常に重要な理念ですが、実現には多くの工夫や課題が伴います。


★個別最適な学び・協働的な学び

★★【概説】★★

「個別最適な学び・協働的な学び」は、日本の教育改革において「令和の日本型学校教育」として掲げられた新しい学習指導の方向性の柱です。

この理念は、「個別最適な学び」を通じて生徒一人ひとりの理解や興味に応じた学びを実現し、「協働的な学び」によって他者との交流を通じた学習体験を深め、21世紀に必要とされる社会的な資質や能力の育成を目指しています。

個別最適な学びの内容

個別最適な学びとは、生徒一人ひとりの学習ペースや理解度、興味関心に応じて学習内容や方法を柔軟に調整する学びのアプローチです。

この概念は、従来の一斉授業の画一的な進行ではなく、生徒の特性に合わせた教育を行うことで、より効果的に学力を向上させることを目的としています。

「個別最適な学び」を実現するためには、ICT(情報通信技術)の活用が特に重要視されています。

デジタル教材や学習プラットフォームを通じて、各生徒の進捗状況や理解度をリアルタイムで把握し、個々のニーズに応じた学習支援が可能となります。

また、学習支援員やサポート教員の配置により、学びの多様なニーズに応えることができるようになっています。

例えば、特定の単元で苦手な内容がある生徒には復習や補充の機会を提供し、逆に得意分野である生徒には、発展的な内容に挑戦させるといった個別の対応が可能です。

これにより、各生徒が自分のペースで深く学ぶことができ、学びの意味がより明確になります。

協働的な学びの内容

協働的な学びとは、生徒が他者との関わりの中で知識や考えを共有し、共に学ぶことで問題解決能力やコミュニケーション能力を高める学びのスタイルです。

これは、集団の中での協働的な活動を通じて、生徒が多様な視点やアイデアに触れ、自らの考えを相対化し、修正する機会を提供するものです。

協働的な学びでは、互いに助け合い、共同作業を通じて学びを深めるだけでなく、リーダーシップやフォロワーシップの育成も期待されています。

具体的な手法として、グループディスカッションやプロジェクトベース学習、課題解決型学習(PBL: Project-Based Learning)などが挙げられます。

これらの活動を通じて、生徒は一人では解決できない複雑な課題に取り組むことで、協調性や責任感、他者理解の力を養うことができます。

特に、現代の社会が求める課題解決力や創造力の育成には、この協働的な学びが重要とされています。

★★【課題】★★

個別最適な学び・協働的な学びの課題

1.教員の指導負担の増加

個別最適な学びや協働的な学びを実現するには、教員が生徒一人ひとりの理解度や進度に合わせた指導計画を立てる必要があり、これが大きな負担となることが指摘されています。

特に、従来の画一的な授業形式と異なり、生徒ごとの異なる学習プランを組む必要があるため、教員にかかる準備や対応の負荷が増加します。

また、協働的な学びを支えるためにはグループ分けや対話の促進など、教員のコーディネーションスキルも重要であり、その研修や支援体制が整備されていない学校現場では実践が難しいとされています。

2.評価方法の課題

個別最適な学びや協働的な学びの効果を測定するための評価方法が未だに確立されていない点も課題です。個別学習では、生徒の進捗や理解度が異なるため、全員に同じ評価基準を適用することが難しくなります。

また、協働的な学びでは、個々の貢献度や対話の質を評価する方法が不明確であり、これにより生徒のモチベーションが左右される可能性もあります。

現行の成績評価方法では、個別最適や協働的な要素が正確に反映されにくい状況にあります。

例えば、ポートフォリオ評価やルーブリック評価などの方法が検討されていますが、実際の運用においては標準化の難しさが残っています。

3.ICT環境と設備の不平等

個別最適な学びの実現にはICTの活用が不可欠であるため、学校や家庭によるデジタル環境の格差が問題となります。

全国の学校でICT環境が整備されつつあるものの、地域や家庭によってはデバイスの利用が難しい場合もあり、学習機会の不平等が生じる可能性があります。

特に家庭でのサポートが限られている生徒や、インターネット接続環境が不十分な地域の生徒にとっては、個別最適な学びを十分に享受できない状況にあります。

4.生徒間の学力差と協働の難しさ

協働的な学びの場においては、生徒間の学力差が協働の質に影響を及ぼすことが課題となります。

特に、学力が高い生徒が負担を感じる場合や、学力が低い生徒が疎外感を感じる場合があり、学習意欲に悪影響を及ぼすことが懸念されます。

協働的な学びを成功させるためには、生徒が互いの立場や理解度に配慮できる環境作りや、教員による適切な支援が不可欠です。

以上のように、「個別最適な学び」と「協働的な学び」は、生徒一人ひとりの特性を生かし、社会的スキルの向上を目指す新しい教育の方向性ですが、その実現には教育現場や教員の負担軽減、ICT環境の整備、適切な評価方法の確立が不可欠です。


★教育におけるVUCA

★★概説★★

「VUCA」という概念は、現代の社会やビジネスにおける急速な変化や不確実性を指す言葉で、近年では教育分野にも応用されています。

VUCAは、次の4つの要素から構成されます:

  1. Volatility(変動性)

  2. Uncertainty(不確実性)

  3. Complexity(複雑性)

  4. Ambiguity(曖昧性)

これらの要素は、急速な技術革新やグローバル化の影響で、未来を見通すことが困難な状況を表しています。

以下に、各要素を教育に当てはめて説明します。

教育におけるVUCAの詳細

1.Volatility(変動性)

変動性は、教育分野における変化のスピードが速く、予測が難しいことを示しています。

例えば、ICT技術の進化に伴う教育方法や学習ツールの変化、また新たな学習指導要領の改訂などが頻繁に行われ、教育内容や指導方法が急速に変わっています。

教員はこれらの変化に迅速に対応しなければならず、従来の教育方法だけでは対応が難しくなってきています。

2.Uncertainty(不確実性)

不確実性は、未来に起こる事象の予測が困難であることを指します。たとえば、AIや自動化の進展により、現在の職業が将来も存在するとは限らず、生徒にどのような能力を身につけさせるべきかが不明確になっています。

これにより、教育方針やカリキュラムの設計において、将来の社会のニーズを見据えた教育内容を選定するのが困難となっています。

3.Complexity(複雑性)

複雑性は、教育が複数の相互に関連する要素から成り立っており、因果関係が見えにくいことを示します。

例えば、教育は家庭環境、社会の価値観、経済的要因、地域差など多様な要素が影響しており、ある教育政策がどのような影響をもたらすかを単純に予測することが難しい状況にあります。

特に、教育政策の導入が一部の地域や特定の家庭にどのような影響を与えるかは、状況によって異なるため、一律の政策が通用しにくくなっています。

4.Ambiguity(曖昧性)

曖昧性は、物事の解釈が多義的で、正確な理解が難しい状況を指します。

教育においても、例えば「21世紀型スキル」や「グローバル人材育成」などの抽象的な教育目標が掲げられるものの、その具体的な定義や方法は明確でなく、多様な解釈が存在します。

教員や教育関係者の間で目標や方針の解釈が異なると、実際の教育実践においても混乱が生じる可能性があります。

★★課題★★

教育におけるVUCAの課題

1.柔軟なカリキュラム設計の必要性

VUCAの時代において、固定的なカリキュラムでは急速な社会変化に対応できません。

そのため、カリキュラムを柔軟に改訂し、変化に適応可能な内容を組み込むことが求められます。

しかし、これには継続的な調査や更新が必要で、教員にとって負担が増えることが課題です。

また、カリキュラムの改訂が追いつかない場合、生徒に時代遅れの内容を教えるリスクが発生します。

2.教師の専門性とリーダーシップの育成

不確実性や曖昧性が高まる中で、教員には指導力やリーダーシップ、そして新しい教育手法を取り入れる柔軟性が求められます。

特に、AIやデジタル技術に精通した教員の育成が重要となり、教育現場におけるICTスキルの向上が求められています。

しかし、ICT教育に関する研修やサポートが不足している地域や学校があり、教員の負担が増すことが課題です。

また、教員が新しい技術を身につけるための研修が不足していることも、課題として挙げられます。

3.多様な学習ニーズへの対応

複雑な社会の変化に対応するため、教育現場では多様な学習ニーズに応える必要があります。

たとえば、個別最適化や協働的な学びが注目されていますが、教員が多様な生徒のニーズに対応するには、個別指導や支援が必要です。

特に、学力差や背景が異なる生徒に対しては、柔軟な指導とサポートが求められ、教員には大きな負担がかかります。

4.評価方法の見直し

変動する社会に対応するためには、評価方法も見直す必要があります。

従来の一律のテスト評価では、複雑で曖昧な時代に必要とされるスキルや資質が適切に評価されません。

そのため、プロジェクトベースの評価や協働的な活動評価、ポートフォリオ評価など、柔軟で多様な評価方法が必要ですが、それらの基準の確立や運用方法の構築が課題となります。

以上のように、教育におけるVUCAは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の4つの要素が教育現場に大きな影響を及ぼしており、教員や教育関係者がそれに対応するためには、柔軟な指導やサポート体制の構築が求められます。


いかがでしょうか?

皆さん、上記24項目それぞれに、以上のような【概説】と【課題】を挙げることができるでしょうか?

そして、その上で、【あなたの意見】をあなた自身の経験やエピソード、想いや考えから、語ることができるでしょうか?

それができれば、個人面接、集団面接、集団討論、小論文、口頭試問、模擬授業面接などで、高得点で合格することができます。


レトリカ教採学院
河野正夫


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