【成功する自己アピール文:教員採用試験で光る文章の極意】

【成功する自己アピール文:教員採用試験で光る文章の極意】

自己アピール文を書くというのは、意外と難しいものです。

多くの方がこの作業に苦労されているのではないでしょうか。

もちろん、自分自身のことを最もよく知っているのは自分です。

しかし、それを文章という形にしてアピールするとなると、何を書けば良いのか急に分からなくなってしまうものです。

なぜ上手に書けないのでしょうか?

それは、自分のことを話す時に、どうしても思い出話や出来事の羅列に頼ってしまうからです。

これでは、読み手に強い印象を与えたり感動させたりすることが難しくなります。

実はこれは、多くの方が小学校低学年の頃に書いた作文のクセが今でも残っているからかもしれません。

例えば、小学校低学年の子どもが「先週の日曜日」というテーマで作文を書いたとします。次のような文章になることが多いでしょう。

「日曜日は、8時に起きました。お父さんとお母さんと朝ご飯を食べました。朝ご飯のあとに、歯を磨きました。そのあとで、お父さんがデパートに連れて行ってくれました。デパートにはいろんなものが売っていました。お父さんにおもちゃを買ってもらいました。嬉しかったです。デパートから帰ってきて、晩ご飯を食べて、お風呂に入って寝ました。とても楽しかったです。」

ここで、大人の目線でこの文章にツッコミを入れてみましょう。

「日曜日は、8時に起きました。」

この情報は本当に必要でしょうか?

例えば、「昼の3時まで寝ていた!」であれば何かインパクトがありますが、普通の時間に起きたことをあえて書く必要はないですよね。

「お父さんとお母さんと朝ご飯を食べました。」

確かに事実でしょうが、これは読み手が知りたい情報でしょうか?

家族で朝ご飯を食べるのは特に珍しいことではないので、もう少し興味を引く内容にした方が良いかもしれません。

「朝ご飯のあとに、歯を磨きました。」

この情報も不要です。

「デパートにはいろんなものが売っていました。

デパートとは、そもそも多くの商品を売っている場所です。

このような情報も具体性に欠け、読者にとって新しい発見はありません。

「お父さんにおもちゃを買ってもらいました。」

どんなおもちゃを買ってもらったのでしょうか?

書き手は知っていますが、読み手もその内容が気になります。

詳細を書いてこそ、読者の興味を引くことができるのです。

「嬉しかったです。」

感情表現は重要ですが、ただ「嬉しかった」と述べるだけでは単調です。

他にどんな感情や思いがあったのかを描写すると、文章に深みが出ます。

「デパートから帰ってきて、晩ご飯を食べて、お風呂に入って寝ました。」

これも、読み手にはあまり意味のある情報とは言えません。

「とても楽しかったです。」

感情を伝えるのであれば、その楽しさを具体的なエピソードや描写で伝える方が効果的です。

もちろん、小学生の作文に厳しい批評をするつもりはありませんが、文章を洗練させるためには、こうした点を意識することが重要です。

では、次にこの子どもが次のような文章を書いていたとしたらどうでしょう?

「日曜日に連れて行ってもらったデパートで、『父の悲哀さと偉大さ』を感じました。日曜日のデパートは家族連れでいっぱい。買い物をしたり食事をしたりでみんな楽しそう。ただし、お父さんたちを除いては。デパートにいた何十人、何百人のお父さんたちは、大変そうでした。ママの買い物の荷物を持ったり、子どもに泣かれておもちゃを買ってあげたり。父親になるって大変なんだなあと思いました。でも、嬉しそうに買い物をしているママたちや、おもちゃを買ってもらって、はしゃいでいる子どもたちを見ているお父さんたちの視線はとても優しそうで幸せそうでした。お父さんって、可哀想なくらい僕たちのために頑張ってくれているんだと思いました。そんなお父さんが素敵だなと感じた日曜日でした。」

これほどの深い洞察を小学生が書けたなら、読み手に強い共感と感動を与えるでしょう。

もちろん、幼い子どもにこのレベルを求めることはできませんが、大人としての文章にはこのような深さと視点が必要です。

さて、本題に戻りましょう。

教員採用試験の自己アピール文でも、多くの方が次のような文章を書きます。

「私は中学校と高校で吹奏楽部に所属していました。最初は、なかなかうまく演奏できずに苦労しましたが、毎日必ず練習をするということを続けて、高校3年生の時に県大会で3位になりました。この経験で、私は、努力することの大切さを学びました。この経験を活かして、私は、子どもたちにも、努力することの大切さを教えることができる教師になりたいと思います。」

ここで、再び「大人の文章」としてツッコミを入れます。

「私は中学校と高校で吹奏楽部に所属していました。」

楽器は何を担当していたのでしょうか?

トランペット、クラリネット、それとも他の楽器ですか?

具体的に書くことで、読み手はより明確なイメージを持つことができます。

「最初は、なかなかうまく演奏できずに苦労しましたが、毎日必ず練習をするということを続けて、高校3年生の時に県大会で3位になりました。」

ありきたりの困難を乗り越えた話に終わらないよう、経験の中で学んだ独自の視点や工夫を交えて描写すると、より印象的なエピソードとなります。

「この経験で、私は、努力することの大切さを学びました。」

努力の大切さは、誰でも知っていることです。

ここでは、努力の本質や、自分なりに工夫した点など、深掘りした内容が求められます。

単に「努力が大切だ」と言うのではなく、どのようにしてその教訓を得たのかを具体的に示す必要があります。

「この経験を活かして、私は、子どもたちにも、努力することの大切さを教えることができる教師になりたいと思います。」

経験を活かして何を教えたいのかを明確にし、その教え方の具体例を挙げると良いでしょう。

さらに、「なりたいと思います」ではなく、もっと自信を持った表現に変えることで、説得力が増します。

自己アピール文を「大人の文章」に仕上げるためには、単なるエピソードの羅列を避け、インパクトのある事実や感情を伝え、自分自身の考えや価値観をしっかりと表現することが大切です。


レトリカ教採学院
河野正夫


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