教員採用試験に不合格になる10の呪縛と、それを克服するための考え方とは?
教員採用試験の「呪縛」についてのご質問がありましたので、陥ってはいけない教採の呪縛についてお話をしますね。
教員採用試験で,自信をもって,余裕をもって,合格を勝ち取るためには,いくつかの呪縛から解放されなければいけません。
呪縛とは,根拠のない「都市伝説」,理由のない「先輩や友達の話」,合理的に説明できない「思い込み」などのことです。
教員採用試験での「10の呪縛」をあげてみましょう。
(1) 集団討論やグループワークでは,司会(まとめ役)をした方が,合格しやすい。
(2) 面接では,面接官のネクタイの結び目を見て,話すとよい。
(3) 原稿は用意せず,自分の言葉で,ありのままに語った方がいい。
(4) 面接では,短いワンセンテンスくらいの回答にして,面接官と短い一問一答を繰り返す方がいい。
(5) 結婚や婚約といった,プライベートなことは言わない方がいい。
(6) 志望県のパンフレットに書いてある教育政策などのフレーズを使って話した方がいい。
(7) 論作文(小論文)は,起承転結で書いた方がいい。
(8) 問題集は1冊を何度も何度もやった方がいい。
(9) 講師をしていると,いつかは合格する。
(10) 頑張れば,合格できる。
以上,10の呪縛をあげてみました。
この10の呪縛を信じているようでは,教員採用試験に合格することは,難しいです。
なぜ,この10の呪縛は真実ではなく,教採合格のヒントにならないだけでなく,教採合格を阻害するような怖さがあるのでしょうか?
まず、10の呪縛の例の中の,呪縛1から呪縛5までを見ていきましょう
(呪縛1)集団討論やグループワークでは,司会(まとめ役)をした方が,合格しやすい。
これは,無責任な先輩や友人が,思いつきで受験者にアドバイスします。
悪気はなく,親切心から助言しているのでしょうが,有難迷惑です。
司会(まとめ役)をして合格した人もいるでしょうが,司会(まとめ役)をして不合格になった人もいます。
司会(まとめ役)をすることと,合格することとの間に,有意味な相関関係は特にありません。
もちろん,語りが上手く,集団の中でのコミュニケーションが上手い人が司会(まとめ役)をすれば合格しますが,語りが上手く,集団の中でのコミュニケーションが上手い人は司会(まとめ役)をしなくても合格します。
つまり,合格の要因は,語りが上手く,集団でのコミュニケーションが上手いかどうかです。
司会(まとめ役)をしたかどうかではありません。
そんなことも考えず,「司会(まとめ役)をやった方がいいよ。」なんて,思いつきのアドバイスをしないでくださいね!
(呪縛2)面接では,面接官のネクタイの結び目を見て,話すとよい。
面接対策本などに,しばしば書いてありますよね。
そういう作法的なことを書くと,読み手(受験者)も安心するし,本も売れるのでしょう。
本が売れるのはいいかもしれませんが,それで,合格につながらず,ましてや,不利に働いたら「詐欺的」です。
多くの面接対策本が言いたいことは,おそらく,
A. 目(視線)が泳いでいては,いけない。
B. 面接官の眼を見つめるのは,お互いに気まずいので,どこか焦点を決めておきたい。
C. 面接官が3人なら,質問者を中心にしながらも,3人に目配りをするので,その時の見るポイントを決めておきたい。
というようなことを言いたいのでしょう。
でも,演劇や身振りが素人の受験者には上手くはいきません。
ネクタイの結び目くらいと決めて視線を動かすと,面接官から見ると,自分と目を合わさないように見えます。
つまり,アイコンタクトを避けているように見えるのです。
にらめっこみたいに瞳と瞳で見つめあう必要はありませんが,やはり,面接官の眼・表情・顔を見て話す必要があります。
大体,「ネクタイの結び目を見ていればいい」なんて言う人は,そもそも,視線をきちんととらえて,カメラなどで撮影し,検証をしたことがない人です。
きちんと検証をすると,ネクタイの結び目だけを見て話していると,アイコンタクトを避けているように見えます。視線をあまりにもネクタイの結び目に固定すると,面接官とのアイコンタクトを避けているように見えてしまうんですよね。
そして,アイコンタクトを避けるというのは,一般に,自信のなさか,ウソごまかしをいっていると感じられてしまいます。
やはり,面接官の目,表情,顔を確認しながら,随時,アイコンタクトを取りながら話す必要があります。
(呪縛3)原稿は用意せず,自分の言葉で,ありのままに語った方がいい。
諸悪の根源のようなアドバイスです。
素人中の素人,ど素人のアドバイスです。
まず,無視してください。
こんなアドバイスをする人は,スピーチ・ライティングもパブリック・スピーキングもレトリック理論も知らないど素人です。
原稿は必要です。
日本人は,自然さを強調するあまり,原稿を嫌いますが,自然さを作るのは,原稿と戦略と練習・練習・練習です。
何度も言いますが,例えば,皆さんが感動したドラマや映画や舞台には,すべて台本があります。
俳優や女優たちは,台本をもとにしながらも,役作りをして,何度も何度も練習・リハーサルをして,自然さを作り上げていきます。
自然さとは作り上げるものです。
これは,演劇だけではありません。
日本が誇る職人芸でも,自然な趣を表現するには,職人の何十年もの修行によって身に付けた技が必要です。
自然さとは,準備と修行を重ねた結果,やっと表現できるものです。
準備をしないこと,努力をしないことが,自然だなどという人は,はっきり言って,素人,いや,愚か者です。
自然に語りたければ,原稿を準備し,推敲を重ね,練習を繰り返すことです。
スピーチ・ライティングも知らず,スピーチの技法もしらず,演劇の手法も知らず,レトリック理論も知らず,ただ,「原稿なんか準備しないで,ありのままに話す」なんていうアドバイスは,徹底的に無視してください。
もちろん,これは,大人の戦略なので,教育委員会(面接官)によっては,「あなたのありのままの言葉で語ってください」と言うかもしれません。で
も,それは建前です。
「これはつまらないものですが」というのと同じレベルです。
いずれにしても,原稿もない語りは,原稿がしっかりとあって練習を重ねた語りには,絶対に勝てません。
(呪縛4)面接では,短いワンセンテンスくらいの回答にして,面接官と短い一問一答を繰り返す方がいい。
これも情けないくらい,愚かなアドバイスです。
面接では,確かに,簡潔に答えるのが常道です。
しかし,少なくとも30秒程度は話して,ある程度の内容を伝える必要があります。
何かを聞かれて,一文で答えて,面接官からさらに聞かれて,また一文で答えて,またさらに聞かれるというのを,面接官とのコミュニケーションが成立していると考えているのなら,大きな間違いです。
面接官は,あなたの答えが不十分だから,より多くの情報を聞きだすために,さらなる質問をしているだけです。
面接官に興味関心を抱かせたからではなく,あなたが語った情報があまりにも少なすぎるから,補充を求めているだけです。
これを繰り返すなんて,言語道断です。
こんなことをしたら,あなたが内容あることを適切に話せないことを証明するようなものです。
確かに,面接官とは,一問一答のように,質問と回答が続きます。
でも,それは,あなたの語ることが不十分だから,さらなる情報を要求されているだけです。
こんなやりとりを,面接官とのコミュニケーションだと思う人は,やはりコミュニケーションのど素人です。
やりとりがあれば,俗にいう言葉のキャッチボール的なものがあればいいと思っているような,外見的な形式だけで判断する愚か者です。
こんな愚かな言葉のキャッチボールでは,好感も共感も勝ち取れません。
相手をイライラさせるのが関の山です。
(呪縛5)結婚や婚約といった,プライベートなことは言わない方がいい。
これは時と場合によります。
確かに,教師という仕事をするために,教員採用試験を受けるわけですから,ただ単に,「友達がXX県はにたくさんいるから,XX県を受験します。」では,だめですよね。
でも,結婚や婚約は,その受験者が,その志望県に本気で移住,定住,永住しようという証になります。
例えば,広島出身で,広島の大学を卒業しようとしているものが,神奈川県の教採を受験するとします。
当然,神奈川県の面接官は,どうして神奈川なの?と思いますよね。だから,聞いてきます。
でも,それへの答えが,パンフレットやホームページを見ただけの「~という施策に感銘を受けて」では,絶対に信じてもらえません。
たった1回だけ,横浜観光をしたくらいで,神奈川の魅力は語れません。というか,そもそも,横浜市は,横浜市の教採で受験するので,神奈川県の教採で話しても仕方ないです。
それならば,本当に神奈川の人と結婚するのであれば,
「私事ではありますが,神奈川の人と結婚し,神奈川に住むことにしています。神奈川で,家庭を持ち,子供を育て,神奈川で一生涯暮らすつもりです。私の第2の故郷になる神奈川,これから,60年以上,私の故郷となる神奈川で・・・・・」
などと言えば,なぜ神奈川を志望するのかは,納得してもらえます。
要は,プライベートなことは話さないというような杓子定規な外見的なアドバイスは,まったく意味がないということです。
どうでしょうか。
呪縛1から呪縛5までを解き明かしてみましたが,呪縛のようなアドバイスを聞いたことは,きっとありますよね。
こんな呪縛から解き放たれることが,教員採用試験で合格を勝ち取るための秘訣です。
では、呪縛6から呪縛10を解き明かしていきましょう。
順に解き明かしていきます。
(呪縛6)志望県のパンフレットに書いてある教育政策などのフレーズを使って話した方がいい。
こんなことをしたら,よくパンフレットを読んでくれたというより,「はいはい。また,知りもしないのに,パンフレットの中の言葉を使うだけの軽い人だな。」と思われてしまいます。
確かに,志望県のパンフレットやホームページは読んでおくべきです。
でも,そこにある,いかにもそれらしい言葉を,さも自分の想いのように話しても何にもなりません。
そんなことで媚びを売っても,得点なんかもらえませんよ。
相手を知ることは重要です。だから,パンフレットやホームページは読んでください。
でも,その中の言葉をそのまま使って話すこととは違います。
大体,パンフレットやホームページには,どの都道府県(政令市)でも,同じように取り組んでいることが書かれています。
その県の一押しの教育政策も,言葉尻では,そんなに目新しいものではありません。
特に,あなたが感銘を受けて,一生をかけて貢献したいようなものは,おそらくないはずです。
いくら合格したいからと言って,本当は興味もないのに,パンフレットにあるからと言って,その言葉だけを空虚に使って話すというのは,あまりにも姑息で,あまりにも軽薄です。
もちろん,面接官も,あなたの姑息さと軽薄さと中身のなさを感じます。
本気で興味があるのであれば,その施策を見学に行きましたか?
その施策について,調べに出かけましたか?
あなたの大学時代の研究は,その施策に関するものだったのですか?
きっと違いますよね。
姑息な言葉遣いは,軽蔑心をもって扱われるだけです。
(呪縛7)論作文(小論文)は,起承転結で書いた方がいい。
まさか,今時,こんなことを言う人なんていないだろうと思っていたのですが,いるのですね。
アカデミックには、愚かです。
ただ単に愚かです。
起承転結は,漢詩や歌詞や4コマ漫画などでは,盛んに使われます。
しかし,主張文たる論作文(小論文)では,絶対に使ってはいけない形式です。
あえて,繰り返します。
起承転結の形は,論作文(小論文)では,絶対に,絶対に,使ってはいけません。
理由は明白です。
起承転結の形式は,本来的に,「ごまかし」の論法だからです。
起承転結は,起で始め,承で受け,転で関係ない話にとび,結でむりやりにこじつけてまとめるという形式です。
主張文や学術論文には絶対に使えない形式です。
起承転結のステレオタイプとして,青島幸男さん作詞で植木等さんが歌って有名になった「だまって俺についてこい」の歌詞を見てみてください。(著作権の関係で1番だけ)
ぜにのないやつぁ,俺んとこへこい。
俺もないけど心配すんな。
見ろよ青い空白い雲。
そのうちなんとかなるだろう。
典型的な起承転結です。
起で,金のない奴は俺のところへ来い,と始める。
承で,俺もないけど心配するな,と承ける。
転で,いきなり,見ろよ青い空白い雲,という関係のない話を持ち出す。
結で,無理矢理にこじつけて,そのうちなんとかなるだろうで,まとめる。
歌としては面白くできています。
でも,主張文としては,無理です。
これが主張文,論文になるのならば,
いじめに関して,
いじめられたことがある人は,私のところに来なさい。
私もいじめられたことがあるから,心配はいりません。
青い空と白い雲を見てごらん。
いじめはそのうち解決するよ。
程度のことしか言えません。
ここで誤解しないでください。
文学の形式,詩歌の形式としては,起承転結は面白く,読む人の心を揺さぶることもあります。
しかし,主張文,論作文(小論文)では,絶対に使えない形式なのです。
もし,論作文(小論文)は,起承転結で書けとか,新聞のコラム欄(朝日新聞の天声人語)などを模範にして書けというような愚かなアドバイスをする人がいたとしても,無視しておいてくださいね。
(呪縛8)問題集は1冊を何度も何度もやった方がいい。
既に何度もお話ししていますが,こんなのは,昭和の時代の思い出みたいなアドバイスです。
1冊2,000円弱の問題集や参考書,5冊で1万円です。5冊くらいは買ってやってください。
問題集を1冊だけ何回もやっても,必ず漏れがあります。
1冊を何度もやって,やった気になるのは,自己満足です。
よく言っても,単なる美学です。
美学は,所詮は根性論です。
1冊の問題集を何度もやるよりも,5冊の問題集を1階ずつやった方が効果的です。
学習方法は進化します。
いつまでも,昭和の貧しい時代の美学にとらわれないでくださいね。
(呪縛9)講師をしていると,いつかは合格する。
絶対にそんなことはありません。
優れている人,魅力のある人ならば,たとえ,最初の受験では不合格でも,その次,あるいは,その次には合格します。
特に定員が1名とか2名とかの難関教科ですと,受験者も数十名あるいは100名以上いますから,かなり優秀でも,なかなか合格できないことがあります。
こういう場合なら,講師をしながら,地道に教採を受験していると必ず合格します。
でも,あなたに優れたところがなく,魅力もないのならば,講師をしていても(それでも講師はできるのが,日本の学校教育の不思議なところですが),何年たっても合格することはありません。
十回,十五回,二十回と教採に連続不合格になった人はいます。
講師をやっていれば,いつかは合格するなんて,絶対にありません。
合格には,それなりの理由があります。
もし,あなたが十回以上,教採に落ちているのであれば,何かを根本的に変えなければ,あと10回受験しても合格することはないでしょう。
私は,10回以上不合格だった人を指導して,ほぼ全員を合格に導きました。
何かを変えなければ絶対に,合格はありません。
講師をしていることで安住していたら,一生,講師のままです。
(呪縛10)頑張れば,合格できる。
「頑張る」の意味が,戦略的に準備するというものであれば,合格できます。
「頑張る」の意味が,ただ単に,やみくもに勉強する,苦労するだけなら,不合格が続きます。
自分自身の「頑張る」の定義を分析してみてください。
戦略もなく,なんとなく,とりあえず,一応,やってみても,教採合格は勝ち取れません。
戦略のない頑張りなんて,やらないのと同じです。
戦略もなく頑張っている自分に酔いしれても,合格は絶対に勝ち取れません。
むしろ,合格も勝ち取れない頑張りは,頑張りと呼ばない方がよいのかもしれませんね。
というわけで,重要なのは,戦略的な準備です。それに尽きます。
以上で,10の呪縛を解き明かしてきました。
呪縛を信じず,呪縛から解き放たれて,教員採用試験に,今年の夏こそ,合格しましょうね!
河野正夫
レトリカ教採学院
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