ランニング1,000万~のシステム導入企画を2本通して分かったこと
事業会社でIT企画の仕事に携わり、毎年数千万のランニング費用が発生する、大型のシステム導入企画を2本通しました。その経験から学んだことをシェアします。
ボトムアップの企画は「安心」を作る
ボトムアップの企画、つまり企画者のアイデアを実現するための企画では、決裁者に「安心」を与えることが重要です。
決裁者は「不安」である
決裁者が企画をなかなか承認しないのは「不安」だからです。企画を通した場合、その結果は決裁者自身の責任となります。そのため、本当にこの企画を進めるべきか、効果が期待できるのか、担当者が最後までやり遂げるのか、といった不安が解消されるまで承認は下りません。
完璧なロジックでは不十分
不安な決裁者に対して、完璧なロジックを提示しても十分ではありません。むしろ、一見完璧なロジックは、逆に怪しさを感じさせることがあります。ビジネスの世界では、学問のようにすべてが明確に言い切れるわけではなく、前提も曖昧です。そのため、企画者にとって完璧に見えるロジックも、決裁者から見れば不安を解消するものにはならないことがあります。
そのため、経営上参考にしている他社の同じような立場の決裁者が承認した証拠である他社事例や、企画者が本当にこのプロジェクトを信じており最後までやり遂げる覚悟があることを示すといった"もう一押し"がなければ決裁者は「安心」することができません。
ROIは定量効果でプラスになるように作る
ROIについても、定性効果(私は「効果のうち、現時点ではどんなKPI・指標で定量化すればよいかわからない、もしくは定量化のための数値計測が現時点では困難な効果」と定義しています)が中心のもので、定量効果でプラスになっていないものは、決裁者の「不安」を払しょくできません。
現在考えているスコープを広げる、他部署の進行中の案件と連携して効果を高める、表面化していない費用削減効果を仮説で積むなど、あらゆる手段を駆使して定量ROIを改善することが重要です。
トップダウンの企画は「ロジック」を作る
ボトムアップの企画、つまり決裁者のアイデアを実現するための企画では、合理的な「ロジック」を構築することが求められます。
決裁者は「ロジック = その企画を進める合理的な説明」を求めている
トップダウンの企画では、ボトムアップの場合と比べ決裁者はそれを進めること自体に対してはあまり不安を感じていませんが、会社の予算を執行する以上、合理的な説明が必要です。そのため、企画者は決裁者が承認できる合理的なロジックを構築することが求められます。
ROIは定性効果も重要
ボトムアップの場合、企画者が定性効果を語っても「不安」な決裁者を納得させるためには不十分でした。しかし、トップダウンの場合は、定性効果は決裁者が語ることで「ビジョン」となり、定量効果を補うことができるため、定量効果がマイナスでも企画が通る場合があります。
ボトムアップ型で進めていて、どうしても定量効果でプラスにならない場合は、定性効果を「ビジョン」として語ってくれる決裁者を見つけ、味方につけることで風向きを変えることができるかもしれません。
おわりに
企画を通すためのアプローチは、その企画がトップダウン型かボトムアップ型かによって大きく異なることを学びました。
以上です。