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人月商売で生産性を高めることはできる?

私はITベンダで働いているのですが、5,6年前から全社的に生産性を高めようという取り組みが行われています。しかし、個人の能力に関係なく1人が1ヶ月働いたら1人月分の仕事ができる、と考える人月商売において生産性を高めるとはどういうことなのか?疑問に思っていたので考えました。

人月商売における生産性

まず、生産性の定義については、一般的であろう下記を用います。

生産性 = アウトプット / インプット

この式においてアウトプットは、人月商売では成果物、付加価値、成果と表現されます。実際には、納品したシステムや、設計ドキュメント、ミーティングの議事録、業務改善になります。ここの記事では「付加価値」という言葉に置き換えてみます。

インプットは、人月商売では工数(人月)になるでしょう。

これらを踏まえて式を書き直すと、下記のようになります。

(人月商売における)生産性 = 付加価値 / 工数(人月)

人月商売は構造的に生産性が上がらない?

人月商売では、工数(人月)に対して報酬が支払われます。そして、工数に対する報酬のレート、いわゆる単価が会社やプロジェクトに入るメンバの職位によって大体決まっています。〇〇社のマネージャは1ヶ月800万、みたいな感じです。

人月商売における報酬 ~ 工数(人月) = 付加価値 / 生産性

この場合、工数(人月)が大きいほど儲かるので、付加価値は高く、生産性は低くするのが得であるということになります。つまり、大勢の無能で大きな仕事をした方がよいということです。このことから、人月商売において生産性を上げることは、構造的に不可能では?と思っていました。

人月商売において生産性を高めるとは?

もう少し考えると、生み出すべき付加価値を低い生産性で薄め、工数を水増しし、高い報酬を得るようなインセンティブが働くのは、単価が固定の場合であることに気が付きました。

仮に生産性を高め、競争力を上げることで単価も高めることができるのであれば、仮に工数が下がっても、これまでと同じかそれ以上の報酬を得ることができるため、「人月商売において生産性を高める」は成り立ちそうです。もちろん、ただ生産性を上げろと言っても上がらないため、優秀な人材の獲得や社員教育の強化、より魅力的な報酬の提示などの投資は必要だと思います。

タイトルに対する結論:
人月商売において生産性を高めるという宣言は、見積もり単価を変える気がない場合は妄言にすぎないが、生産性を高めるための投資を行ったうえで見積もり単価も上げる場合は「いいものを高く売る」への経営方針の転換であると捉えることができるのではないかと思います。

+α 成果報酬

生産性を上げることにフォーカスする場合、人月商売から脱却し、成果報酬の契約を結ぶようにしていくという方法も考えられます。成果報酬では成果・付加価値に対して報酬が支払われるため、生産性を上げるインセンティブが働きます。

成果報酬における報酬 ~ 付加価値 = 生産性 × 工数(人月)

ただ、この場合もはや人月商売ではなくなりますね。

(余談)生産性報酬

人月商売、成果報酬に加えて、「生産性報酬」というのも考えられるのではないかと思いました。

生産性報酬における報酬 ~ 生産性 = 付加価値 / 工数(人月)

付加価値は上げ、工数は減らすインセンティブが働くため、一見よく見えます。しかし、例えばシステム開発において、最も付加価値が出そうな重要な機能から実装していくと、工数と付加価値の関係は下のグラフのようになるはずです。

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こうなると、カーブが鈍化してくるあたりで切り上げた方が報酬が高まるので、付加価値を高めることよりも、生産性が最大となるポイントでやめようとするインセンティブが働いてしまい、これはクライアントにとってあまり良い結果にならなそうです。また、値付けの難しさもありそうです。

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