共通化はボトムアップで標準化はトップダウン
「業務の共通化・標準化」など、しばしば類似概念として語られますが、実は全然違うものなんじゃないか、そしてよくある「標準化」の名のもとに始まる多くの活動は単なる共通化を行っているだけで標準化できていないのではないか、と思ったので、考えをシェアします。
共通化: 複数の個別の共通項をくくりだす
共通化は、まず個別を考え、その上で複数の個別の共通項をくくりだします。
経理部や総務部も共通化の一つです。各部門や各事業所で必ず発生する業務を、部門や事業所横断で共通化し、一つにまとめているわけです。このようなパターンでは、全ての個別に共通するものをくくりだすケースが多いでしょう(図の左)。
一方で、製品やシステムの製造・開発において、複数の個別で使える部品を共通的に作る、という場合は、必ずしも全ての個別に共通している必要はありません(図の右)。
目的: 生産性向上
共通化の目的は生産性の向上です。各部門や各事業所で必ず発生する業務を一つの部署でまとめて行ったり、複数の製品やシステムで使うパーツを一か所でまとめて生産・開発することで、生産性を向上させます。
アプローチ: ボトムアップ
共通化は、まずは個別を議論するため、ボトムアップのアプローチです。
また、初めは共通化を考えずに個別を考え、その中でくくりだせそうなところを見つけていけばよいので、簡単に始めることができます。
標準化: 標準を決めた上で標準に合わせて個別を考える
一方で、標準化はまず標準を決めます。そして、個別を考える際に、標準を満たすように個別を考えます。
ニンテンドースイッチなどのゲームのハードや、部品の規格・通信規格などが標準化の例です。
共通化は個別を考えた結果、自ずと共通化すべき部分が明らかになるのに対し、標準化では、"誰か"が「これが標準である」と定める必要があります。
目的: 生産性向上 + 互換性の確保、品質の担保など
標準化は、共通化の目的でもある生産性向上に加え、互換性の確保、品質向上など多くの目的があります。
アプローチ: トップダウン
標準化は、"誰か"が「これが標準である」と定め、使う側がそれに従うため、トップダウンアプローチです。
仮に標準化をボトムアップアプローチで推進しようとしても、失敗する可能性が高いです。なぜなら、標準化の目的は管理者や経営者目線のものが多く、現場の担当者たちは基本的には個別の事象に最適化して考える方が楽だからです。そのため、何らかの強制力を持って標準を守らせる必要があるのです。
「標準化」を行う際はどのように「標準」を決定(fix)するかを事前に明確にしておく
標準化における最も大きな問題は、どのように「標準」を決めるかということです。厳しすぎる標準にしてしまうと、個別を考える際にあまりに不都合が多く、その標準は浸透しません。逆に、多くの個別に対応しようとして柔軟性を持たせすぎると、今度は標準化のメリットである互換性の確保や品質の担保ができなくなってしまいます。
そのため、実際は何もないところから「標準」を考えるのではなく、基本的にはある程度個別を考慮した上で、知識や過去事例を踏まえて「標準」を決めることが多いでしょう(下図のイメージ)。
この「標準」の決定(fix)というのは非常に難しい判断です。なぜなら、どのように標準を定めたとしても、新たに個別を考えた際に、「こんな場合にこの標準では対応できないよね」という点(上図の"個別3"のはみ出た部分)が必ず出てくるためです。
このようなことが起こるたびに「標準」に変更を加えたり、「例外」を許すと、それはもはや標準化ではありません。そのため、「標準化」を行いたい場合は、どこまで個別を考慮して「標準」を決定(fix)するのか、それ以降の個別を考えた際に標準の変更や例外はどの程度許容するかを決めておく必要があります。そして何より、大前提として一度標準が決まった後は、トップダウンで標準に従わせるという体制を作っておくことが重要です。
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