1ヶ月
先ずは死亡された五十嵐洸太選手の御冥福をお祈り致します。
本当に悔しい。
ツールド北海道の事故から1ヵ月。
そして昨年のインカレの事故から1年と1ヵ月。
そろそろ事故の原因について解明していこう。
事故は何故起きたのか
事故当時の状況を整理
この事故の原因は様々である。先ずは判明している事実を羅列しよう。
・基本コースは片側1車線規制で、選手は対向車線に飛び出すことを禁じられていた
・事故現場を含めた区間は山岳地帯で選手の事故防止のため運営が自主的に交通規制を行っていた
・事故を起こしたドライバーは規制前に当該区間に侵入し、事故ポイントの500m手前で先頭集団と第2、第3集団の写真を撮影した後車に乗り込んでいた。
また事故当日の交通規制や選手の様子といったものは、こちらの事故車と同時刻300m程前方を走行していた動画が存在している。
https://youtu.be/tmvU5fdAgcw?si=Yh-EAzyBXViOHOowより
以後はこの動画で判明した事実を元に考察を進めていく。
交通規制の実態
先ずこの動画の1:20:00前後に交通規制の看板と、警備員が車を止めた様子が確認できる。
しかし一言二言言葉を交わしただけで車を通している。
そして1:24:00付近に交通規制が実際に開始されている駐車場を「通過」している。警備員は止める様子もない。
そして暫く進むとモトバイクやコミセールカーが見え始め、留目選手と金子選手と思われる2人が下っていく様子が撮影されている。
この時点でモトバイクは撮影者に対して「速度を落とせ」「左に寄れ」と頻りにサインを出していた。
法律上の観点から考察
私は法律の専門家では無いことから、条文をそのまま書き出したり、第○条○項によると~というような書き方はしないことをご容赦頂きたい。
まず公道を規制するにあたって、自治体や警察に規制を行う団体は届け出を出さなければならない。その届け出は様々だが、自転車競技となると、各ポイント毎の交通規制、事故発生時の対応、病床の確保、そして地域経済に対する影響などを勘案した書類となることが多い。
そしてこちらの届け出をするにあたって、道路交通法においては、交通規制を実施する際には全ての安全を確保しなければならず、片側規制でそれが担保されない際は区間を申請しての自主的な交通規制を認めるという趣旨の条文がある。
この自主的な交通規制というのが厄介で、交通規制を敷くこと自体に警察は一切介入しないという意味である。
つまり安全かどうかの判断は運営及び現場の人間に一任され、それに対する調査なども全て自主的に行わなければならないということである。
つまり運営の時点でこの事故を見るのであれば、
私達は安全だと思っていましたが、参加者の不注意により事故が起きてしまいましたというふざけた主張が残念ながら正当なものとされる可能性があるということである。
選手の視点より考察
さて、選手からすればこの事故は防ぐことが出来たのか。答えは否だ。
報道では選手のルール違反が取り立たされていたが、実際問題ルールそのものが破綻している可能性と片側規制によって生じるリスクを考慮しなければならない。
まずこの事故の状況として、選手がセンターラインをオーバーしたことが直接の原因とされている。
しかしこれはかなり情報が不足している。
そもそも当該区間は勾配-7%~-9%の区間であり、速度が非常に乗りやすい。また動画では五十嵐選手は事故手前のコーナーでは第4集団の先頭に位置していた事が確認でき、そこでかなりの減速をしていたことも同時に確認できる。
そこから後続の選手に抜かれ、そのポジションを取り戻すために動いたという論理であるが、そもそもそんなこと出来るわけがないのだ。
何故か。仮にコーナーでポジションを下げ、3番手から先頭に立とうとしたところで、200m程度の急勾配の下りで、目の前にブラインドコーナーが見えているのに攻めようとするのはアホのやることだからだ。
同時にわざわざ追い越しを掛ける理由も、第4集団という前の集団に追い付くことを最優先にしなければならない集団にいる時点で無い。
であれば前の選手がアンダーステアを出し、それを交わそうとした結果センターラインを越えたと考えるのが自然である。
さらに言えば撮影者の前にはトラックが走っており、第4集団は少なくとも山岳ポイントから2㎞の間に2台の車とすれ違っている事が確認できる。
そのリスクを背負ってまで追い越しを掛けるだろうか。
ドライバーの視点より考察
さて、問題児。
動画の撮影者はともかく、何故ニッチなツール・ド・北海道を観戦するような人が車を走らせたのか。
取材では吹上温泉に向かうためと言われていたが、どうにも要領を得ない。ただYouTubeのコメントにて考察が転がっていた。
考察では車に乗り込んでからエンジンをスタートし、発進体勢に至るまでおおよそ30秒。
撮影者が事故車両のドライバーが乗り込んだ瞬間を撮影したタイミングから500m先の事故ポイントまではおおよそ時速36㎞で走行。
撮影者が選手とすれ違ったタイミングから換算するに、事故車両は時速50㎞以上で走行していたことが考えられる。
またフロントガラスの損傷度合いからも相対速度時速100㎞はほぼ確定と見られる。
だいぶ要約したが、このような状況である。事故を起こしたドライバーは少なくともまだ関係車両が通過していないことを把握していたはずで、その理由は全選手が通過していないと推察可能な筈だった。この状態で時速50㎞、勾配を考えるとアクセルはおそらくベタ踏みだ。少なくとも安全運転とは言い難い。
私個人の見解
さて、ようやく私個人の見解を述べられる。
この事故に関する民事訴訟は既に行われていると仮定し、敢えてここでは述べないこととする。が、刑事上、どのような処分がそれぞれに下るのか、また再発防止策を述べていきたい。
刑事上の処分
・自転車→仮に生存していたとしてもお咎め無し
・ドライバー→安全運転義務違反による自動車運転過失致死
・運営→安全管理義務違反による業務上過失致死
が現状の情報より最も妥当であると判断できる。
特に運営はUCIより長年の警告を受けていたのにも関わらず、安全を確保せず、危険を認知した状態でレースを運営し続けた。更にはUCIの規則で、競技が通過する際は全ての交通をストップさせなければならないという規則があるのにも関わらず、それを「特別規則」という形でほぼ全面を片側規制として交わし続けていたのだ。
ドライバーに関しては執行猶予付きで刑罰が与えられるだろう。これは事故の当事者であるが故に妥当な処分だ。
選手に関しては、故意にショートカットを行う理由も、またはみ出して走行する理由も安全上の理由であったことから、仮に生存していて億が一書類送検されたとしても不起訴となる可能性が非常に高い。
再発防止策
ツール・ド・北海道業界のキャッシュフローを覗くと経営状態はだいぶ怪しいことが確認できる。
赤字を垂れ流しており、健全とは言えない。その状況でレースを開催し、中途半端どころかザルな警備が原因で選手が死亡した。
これは由々しき自体である。
スポーツ大会を運営するのであれば全ての外的要因による事故を無くすというのは基本中の基本である。それをツール・ド・北海道協会に限らず日本の自転車競技運営団体は強く意識するべきだろう。
そして、今後、このような事故を発生させないためには、JCFが実際の警備状況や交通状況を確認し、安全が担保される運営状況か否かを評価する体制を構築しなければならない。
事故から2週間後の会見では運営は天下り官僚の委員長を出席させ、世間から様々なバッシングを浴びたのだ。JCFも橋本聖子氏が会長の座におり、また過去の與那嶺選手への対応からするに天下り官僚が牛耳っているのだろう。
今回の事故は実際に起きたこと、そこで明らかになった警備体制、その後の対応など、全ての面においてあまりにも残念でならない。
このような悲惨な事故が少しでも減ることを願ってこの文章を閉めさせていただきます。
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