
2010~花園大学(団体)~
花園大学の演技には、独特の味わいがある、と思います。
男子新体操ならではのかっこよさ、スピード感、迫力、美しさ・・・それらも十分に備えているうえで、花園大学の演技にはいい意味での「妙な感じ」があるのです。
2009年の花園大学の演技を見ていると「じわ~っ」とした動きが目につきます。なんともぼんやりとした表現ですが、「じわ~っ」としか言いようのない、そんな腕や上体の動きを見せるのが花園大学の演技なのです。
男子新体操の美しさは、全身をくまなく伸ばした姿勢にあると思います。このブログを書くにあたって多くの選手、チームの写真をたくさん見ましたが、やはり「伸びた姿勢」の美しい選手は、演技中のどのひとコマを切り取っても美しいのです。団体もそう。やはり、静止画で見て美しいのは、6人そろってぴしっと伸びた姿勢をとっているもの、が多いです。
しかし、演技を見ているときに受ける印象は、静止画とはまた違います。花園大学に関しては、静止画にしたらやや不恰好に見えてしまいそうな、曲線的な表現が随所にあったように思います。ただ、それは決して悪いものではなく、その表現こそが演技の幅を広げ、個性的な味つけを実現していたように私は感じました。
男子新体操は、女子に比べて、チームや選手ごとの個性が色濃く出るところがおもしろさにつながっていると思うのですが、花園大学などはその最たるものではないかと思います。本来の男子新体操ではあまりなかったであろう、または良しとはされなかったのではないかと思われる、背中を丸めた姿勢や、脱力した動きなどは、いい意味で、見ているほうの期待や予想を裏切ります。また、あえてフロアの一番前で6人を横一列に並べてみたりする、(フロア後方に5人横並びもありました)フォーメーションにも独自性を感じました。「え、次はどうなるの?」「うわ、そうきたかー!」というスリルと意外性のある演技、それが花園大学の特徴と言えるでしょう。
一方で、「ぴしっ!」とした動きに比べると、合わせるのが難しそうな「じわ~っ」とした動きであっても、そろえるべきところがそろっている、というところが、ただ「個性的な演技(能力や完成度はどうであれ)」を追求しているのではなく、きちんとした実力が伴ったものであるということを証明しています。意表をついた動きや振り付けで評価されようとしているのではなく、花園大学は、男子新体操の王道は王道として、尊重していることがわかります。やるべきことはやったうえで、自分達なりの味付けにもこだわっている、のでしょう。
「パクチー」という香草があります。タイ料理やベトナム料理によく使われていますが、その独特なにおいゆえに苦手な人も多いようです。しかし、一方で、パクチーの入ってない料理なんて! と熱烈に支持する人もいます。もとはと言えば、日本ではほとんど食されることのなかった香草でありながら、今では「なくてはならない」存在になっています。たとえその個性ゆえに嫌いだという人が少なからずいるにしても、です。
花園大学の演技は、どこかパクチーに似ています。あくが強いから、好きじゃない人もいるかもしれないな、とも思います。だけど、そのあくの強さゆえにクセになる、なければ物足りない、そんな不思議な演技を見せてくれるのが花園大学なのです。
<「新体操研究所」Back Number>2010.4.11
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