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2010全日本選手権~高校生(女子②)

オールジャパンには、たくさんの高校生も出場します。なかでも注目を集めているのは、今年の世界選手権日本代表選手となった山口留奈選手(イオン)ですが、山口選手のほかにも、大学生を脅かさんとする力のある高校生がたくさんいます。
おおいなる可能性と魅力を秘めた高校生たちを、何回かに分けて紹介していきましょう。

☆杉本多賀江(みなみ新体操クラブ)

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ジュニアのころから力のある選手ではあったが、高校3年間を通じてもっとも安定感があり、着実に実力と実績を蓄えてきた印象の選手だ。2010年だけでも、高校選抜大会2位、代表選考会15位、ユースチャンピオンシップ3位、インターハイ2位、クラブ選手権シニアの部4位と、高校生ではトップレベルの成績を常に残してきている。
難度の確実性が際立っており、演技もミスなくまとめられることの多い選手で、能力の高さだけでなくまじめな取り組み姿勢が伝わってくる。大学生になってから、より挑戦的な演技にチャレンジしていけば、まだまだのびしろはたっぷりある! 高校生としての集大成の演技を、オールジャパンの舞台で見せてくれるに違いない。

☆三上真穂(安達新体操クラブ)

まほ

この選手は、強い。ジュニアのころから「強い」とは思っていたが、この2年間でますます強くなった。それに伴って成績もじわじわと上がってきている。2010年はユースチャンピオンシップ4位、クラブ選手権シニアの部5位。杉本とは好敵手と言える位置を常にキープしてきた。この選手の最大の武器は、その「負けん気」ではないかと思う。演技内容もリスクの高いものが多いのだが、それに負けない気持ちの強さがある。彼女の演技から「失敗したらどうしよう」というような不安はまったく伝わってこない。実際にミスをしたとしても、それがどうした、と開き直れる。もちろん、内心では不安もあるには違いないが、それが外からは見えないというのは、すごいことだ。
そんな彼女の演技は、「すてき」とか「美しい」とはちょっと違うのだが、確実に「爽快」だ。今回も駆け抜けるようなスピード感のある演技を期待したい。

☆成松エリナ(町田RG)

成松

ユースチャンピオンシップは、中3から高3までの試合だが、第8回となった今年まで続いているジンクスがある。「全日本ジュニアのチャンピオンは優勝できない」のだ。そのジンクスは、2008年度ジュニアチャンピオンの成松エリナにものしかかっている。今年のユースでは5位、クラブ選手権シニアの部では8位。悪くない成績ではあるが、やはり高校生になってから、彼女にはどこかに迷いが見えるような時期があったように思う。しかし、ここにきて何かが覚醒しつつあるようにも見えてきた。
成松選手といえば、そのチャーミングな表現力が印象的だが、じつは手具操作の巧みさにも卓越したものがある。とくにリボンでは、山口留奈選手に勝るとも劣らないほどの見事な操作を見せる。「魅力」「器用性」…努力ではなかなか補うことのできない、この2つにアドバンテージをもっている成松選手に足りないものがあるとしたら、「貪欲さ」だけではないか。それを持つことができたなら、来年は、「ユースチャンピオンシップを制した元ジュニアチャンピオン」が初めて誕生するかもしれない。それだけの期待ができる選手だ。

☆三沢真希(WingまつもとRG)

三沢

おそらく。心の底から踊ることが好きな選手なのだと思う。彼女の演技を見ているとき、つい「競技」だということを忘れそうになる。そんな演技ができる選手であり、そんな演技をしてしまう選手である。三沢選手は、1分半の演技の中盤まで、「これは今まで最高!」と思える演技をすることがよくある。そして、そういうときに限って、終盤で残念なミスが出てしまうのだ。そのミスもなんだか、演技に入り込みすぎてた? ようなことがある。もしくは、そこまでの演技があまりに気持ちよくやれて、残りをミスなくまとめたいな、という欲が出た? ように見えることもある。
いずれにしても、彼女の自分の演技に対する思い入れは並々ならぬものがあるということはいつもしっかり伝わってくる。だから、たとえミスはしても「いいものを見た」と思える演技なのだ。今年は4種目でがらりと違うイメージの作品を演じ分けているのにも注目してほしい。いつか完成形になったら、と想像するだけでも楽しくなる選手だ。

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シーナ
20年近くほぼ持ち出しで新体操の情報発信を続けてきました。サポートいただけたら、きっとそれはすぐに取材費につぎ込みます(笑)。