二人で映画を観た日
また次の日曜日も妻と過ごした。
埼玉の田園地帯にポツンとあるラーメン屋で昼ごはんを食べ、ホームセンターで冷蔵庫を買った。
2万5千円の小さな冷蔵庫、展示品に傷がついている。妻は、展示品でいいから安く購入させてくれないかと交渉した。交渉の結果、2万円にまで下がった。
傷がついてる冷蔵庫にしちゃ、まだまだ高いとこちらも粘る。
店員のおばちゃんが
「仕方がないわね、じゃあこれつけますよ」
と言って、何を出してくるかと思ったら、パックご飯が20個ついてきた。もっと粘ったら、ご飯が30個になった。
展示品の冷蔵庫とパックご飯30個を2万円で買い取り、ホンダのフィットに積み込んだ。店の男性陣が5人くらい出てきて、パズルのように上手に積み込んでくれた。
私たちは、どう見てもこれから新生活を始めるカップルだ。それにしては、小さな冷蔵庫だが。
店員のおばちゃんには、貧しいながらも仲良く生活を始めようとするカップルに映ったのか
「これから楽しみですね」
と、的外れではあるが微笑ましいコメントが漏れた。
時間があったので、映画を観た。島本理生原作の「Red」だ。
人妻が不倫する話なのだが、ちょうど今の私の心をグサグサにするような内容だった。
* あらすじ *
主人公は、結婚を機に退職し、1人の娘を育てる専業主婦。娘と夫、夫の母親と生活をしている。
可愛い娘がいて、夫の収入も申し分なく、義母とも不仲ではない。誰から見ても恵まれた生活を送っているように見えるが、夫とはセックスレス状態が続いていた。そして、理想の妻を演じるプレッシャーに不満が募っていた。
ある日、元恋人と再会し、再び関係を持ってしまうという話である。
***
まあ、いろいろあって、夫婦が電話で口論になるシーンがあるのだが、
「私が全部我慢すれば、うまくいくと思っていた」
という言葉がなかなかに重たく感じた。
ただ、この映画では夫も妻も家庭のために頑張っていたことは確かであった。
私たちの場合はどうだったのだろうか。そんな疑問が出てきてしまう。
家に帰ってから、妻の別れたい本当の理由をさらに聞いてしまった。
私の自己犠牲に嫌になったらしい。
無理に二人で過ごしても不機嫌になるから、妻は外で遊ぶようになった。
逆に、私は家に引きこもりがちになった。休みの日は妻に合わせたいという思いがあったし、妻が転職して収入が減ってしまったため、なんとか私の方で将来のための貯金を捻出しようとした。休日、妻がやらない掃除は私がやり、妻が外で遊びに使うお金は私の方が使わなければ貯金できると考えていた。自分が全部我慢すればうまくいくと思っていたし、私が頑張れば何とかなると思っていた。
自己犠牲の結果、私の心は病んでしまい、休日を楽しく過ごせなくなってしまった。掃除をしてAmazonプライムを観て過ごす一日も、Amazonすら観る気力がなくなり、寝て過ごすことも多くなってしまった。それでも最低限、家事だけは頑張った。
妻がとても図々しい人間ならば、都合のいい旦那としてうまく使えたかもしれないが、私の自己犠牲が災いしてしまい、妻もダメージを受けていたらしい。
妻は私のことを、「今まで出会った中で、最も誠実でまじめな人」と言った。
「いい加減な人だったら上手くいったかもしれない」とも言われた。
いい加減なら良かったか。
ここ数日、過去のことを振り返っては自問自答し、自分がどうすれば良かったのかを考えていたところ、一番困る答えである。
そうだね、頑張らなくて良かったんだね。
結婚生活を思い返せば、私は義務感で動いていたところが多々あった。
親との関係、子供のこと。
義務感だからといって嫌だったわけではない。向こうの親御さんと仲の良い関係を築けたのは誇りに思っている。
でも、その義務感が表に出てしまったのか、理想の夫婦になるために、私は自らを型にはめ込み、さらに周りの人間までも巻き込もうとしていたそうだ。そんな私に、妻はついていけなくなったようだ。
私も妻と同じように、外で発散させてくれればよかったそうだ。
もう一度、今の自分の気持ちを整理してみることにする。
・別居したくない一番の理由
妻が家事やお金の面でうまくやっていけるか心配だから
・離婚したくない一番の理由
ご両親とせっかく仲良くなったのに、こんな報告するのは申し訳ないから
私の本当の思いとは、何なのだろうか。
2020年3月
*これは当時の日記を元にした、1年前の話である。日記のため、「妻」と表記している。離婚に至るまで、このnoteはつづく。
*このnoteの続き
*このnoteのはじまり