人生で大切なことはウルトラマンティガが教えてくれた
5歳の時にリアルタイムでウルトラマンティガを観た。
子供時代には、ティガを録画したビデオテープが擦り切れるまで何度も鑑賞した。今年、ついに私は、Blu-ray BOXを購入した。
ウルトラマンシリーズはたくさんあるが、後にも先にもティガが一番だと思っている。
ウルトラマンティガ25周年、私の人生30周年。
好きなことを語れば、必ず同じものを好きな人がいるのがネットの良さだと思っている。
ウルトラマンティガが大好きな人が読んでくれることを信じて、このnoteを書いてみる。
何もかもが素晴らしい
主題歌の「TAKE ME HIGHER」はV6が歌っており、ティガに変身する主人公のダイゴは長野博が演じている。
昭和のウルトラマンから16年ぶりの制作、親世代も巻き込もうとして作ってある。
当時のいろんな「新」を詰め込んだ作品なんだけれど、5歳の私にはすべてが新しい世界。
特撮の内容は、もしかしたら今見ると古いものになってしまっているかもしれない。ウルトラマンそのものというよりは、ウルトラマンを通して描かれたドラマが本当に素晴らしいものであった。
物語のはじまり
3千万年前に滅びた文明からタイムカプセルが届き、タイムカプセルに搭載されている「人工知能:ユザレ」が語り掛けてくるところから物語は始まる。
ユザレは地球上に怪獣が復活し、大異変が起きることを予言する。大異変から地球を守れるのはティガの巨人だけ。かつて地球の守り神だった巨人は、戦いのために用いた体をピラミッドに隠し、星雲へ帰っていったと。
「巨人を蘇らせる方法はただ一つ…」と言いかけたところでメッセージは途切れてしまう。
実際、モンゴルでは「ゴルザ」が、イースター島では「メルバ」の怪獣が出現した。東北地方にピラミッドは存在し、石像という形で3体の巨人が眠っていた。
ゴルザとメルバは、石像を破壊するために東北のピラミッドへ向かう。GUTS(地球防衛軍的存在)も、ティガの謎を解くためにピラミッドへ向かう。
3体の石像のうち2体は、怪獣に破壊されてすぐにボロボロになってしまうんだけれど、最後の一体を守ろうとして、ダイゴはガッツウイング(戦闘機)で怪獣を攻撃する。ダイゴが乗るガッツウイングが怪獣に撃墜され落ちていく中で、ダイゴが光となってティガの石像に宿る。
ティガは圧倒的な強さでゴルザとメルバの怪獣と戦う。ゴルザには地中へ逃げられてしまうが、ティガは必殺技でメルバを木端微塵にする。
神秘的な力で復活したティガは、その後、ダイゴがスパークレンス(変身アイテム)で変身できるようになった。
ティガの仕組みを簡単に説明すると、エッジ端末がティガの体、どこからでもつながるクラウドと公開鍵がウルトラの光、秘密鍵とユーザーがダイゴ、ログインシステムがスパークレンスといったところだろうか。(全然簡単じゃない…もし読者の中にエンジニアがいたら笑って読んでください…)
毎週の放送で、怪獣が登場し、ダイゴがウルトラマンティガに変身してやっつけるというお決まりの話の中で、全52話通しての成長物語も描かれている。
ウルトラマンティガという作品は、ウルトラマンの力を得たダイゴが、人間として成長する物語である。
ユザレのメッセージはダイゴだけが聞くことができた。
巨人を蘇らせる方法はただ一つ、ダイゴが光になることです
ウルトラマンは人類の選択にまで干渉しない
なぜなら彼らは光だから
でもダイゴは別、あなたは光であり人である
人としてどうあるべきか考えさせてくれた
ダイゴはティガに変身するけれど、人として戦っている。
ウルトラマンの力を手に入れた時、ダイゴは自分がティガであることに戸惑い、一旦は否定しようとする。ダイゴ自身、自分は何者なのか、何のために戦うのかと思い悩む。
男としてとか、ティガとしてでもない。この作品において、人としてどうあるべきかに帰着していくことが、ダイゴの名言から感じ取れる。
「人間はみんな、自分自身の力で光になれるんだ」
それは最初のユザレの言葉通り、光であり人であるダイゴが最後に出した答えであった。
他にも
「自分が人間であることに後悔したくないんです」
って、言う回があった。
どんな人生歩んだらこんな言葉が出てくるんだよって、今観て思う。
物語の中盤、第28話「うたかたの…」では
「ティガよ、なぜ戦う、なんのためなんだ…ティガ!」
と叫びながら変身したことがあった。
ダイゴはだいたい黙ってティガに変身するが、「ティガ」と叫びながら変身するのはテレビシリーズではこの一回だけ。
そして戦いの中で怪獣を追い詰め、GUTSのメンバーを思い浮かべながら
「これが答えなのか?この人達を守るためなのか?仲間だから?皆が好きだから!」
と、怪獣を至近距離で撃破するシーンは涙なしには見られない。ティガになったダイゴが、人として戦う理由を見つけた回でもあった。
平成の価値観と多様性を反映
描いていた近未来が当時の理想の形だったのかなと思う。
戦争がなくなり、核兵器や公害が完全に廃絶された世界が舞台
平和になった世界に怪獣が出現する大異変が起きる設定なので、第一話でGUTSは怪獣への攻撃手段を持っていなかった。信号弾で威嚇するくらいしか方法がなかった。
怪獣も多様で、宇宙から地球を侵略するためにやってくる悪もいれば、ただ暴れてしまって鳥獣駆除的な扱いで倒されてしまう怪獣もいる。平和のためという口実でGUTSが武装を強化することへの疑問や、怪獣という生き物を排除することへの疑問が描かれている回もある。
ヒロインはエースパイロット、隊長は女性
令和になった今でさえ、ちゃんと実現できていない男女共同参画社会がティガの世界では違和感なく描かれている。
女性が活躍できる社会って言うけれど、活躍できていたらそんなことわざわざ言う必要なんてない。それが普通に描かれているのがティガの世界だった。
その割には縦割り組織だったりして、GUTSのイルマ隊長がTPCの中では中間管理職的な位置づけになってしまい、組織間の軋轢に悩んだりする場面もあった。
そこは昭和の名残なのかなと思ったり、今でも会社とかそんなもんだよなと思ったりする…
最終章3部作
この作品の集大成が、最終章3部作で表現されている。
(ネタバレあります。実況中継するような気分で書いてますのでご注意ください)
世界の終焉の悪夢にうなされるダイゴ、迫りくる闇。
レナはダイゴがティガだということに気づいており、二人の間はぎくしゃくしている。
その中でラスボス(その1)のゾイガーと戦う。
レナがなぜ怒っているのか、5歳の私には分からなかった。
ずっと一人で戦い続けているダイゴのことを思ってたんですね。あと、レナは普通のダイゴが好きだったということに、私は年を重ねてから気づいた。「ティガになって戦うダイゴかっこいい!」じゃないんだよなあ。
ゾイガーは超高速で飛行する怪鳥である。1戦目は追いかけても追いつけなかったが、次の戦いでレナはGUTSの最新戦闘機スノーホワイトで戦う。出撃前にさりげなく後部座席に乗り込むダイゴ。
ゾイガーが高度を上げていく中、大気圏突入装備をしていないスノーホワイトでは追いかけるのが危険な状態となる。イルマ隊長からの無線やダイゴの呼びかけを無視して、それでもレナは追おうとする。
そんな中、私の中で一番の名シーンが生まれた。
レナ:「もっと高く…」
ダイゴ:「なんなんだよ、何か言えよ」
レナ:「どうして言わないの?どうして1人で抱え込んじゃうの?どうして1人なのよ!
ウルトラマンは、たった1人で地球を守り続けなくちゃいけない義務でもあるわけ?ずっと1人で戦い続けるなんて、そんなのひどいと思わない?
私だって、光になりたいよ。光になって、もっと高く…」
ダイゴ:「義務とかじゃないよ。俺は人間だから、俺がやれることをやりたいだけだよ」
レナ:「私、今後ろ見えない…だから、いいよ…」
ここで後部座席のダイゴがスパークレンスを取り出し、光に包み込まれながら変身し、レナが乗るスノーホワイトはティガに抱きかかえられて飛ぶんですよ!もう最高なんですよね!
主題歌の「TAKE ME HIGHER」がまさにこの場面を盛り上げるためにあったのも本当に素晴らしい!!
スノーホワイトの一撃でゾイガーの翼を落とし、地上での戦いに移る。ティガの光線ではなく、レナが乗るスノーホワイトからの光線なところがいいんですよね。
ゾイガーは地上に落下し、ティガもスノーホワイト抱えて着地する。決闘を終え、ゾイガーを倒し、人間の姿に戻ったダイゴとレナが再開。
レナ:「おかえり」
ダイゴ:「ただいま」
向き合ってこのまま抱き合うかキスシーンかと思ったら、、、イルマ隊長からの無線が入り、世界中でゾイガーが暴れているという現実を知る。
今、必死になって倒したゾイガーが世界中にいるもんだから、もう絶望的なんですよ。
さらに、ラスボス(その2)のガタノゾーアが太平洋上に出現する。そいつが操る闇がすさまじくて、飲み込まれてしまうとあらゆる生物を殺し、あらゆる精密機器をダメにする威力があるものだから、もうとんでもない事態。
TPCの基地も闇に飲み込まれてしまい、隊員が次々と倒れ、指令室の機器がぶっ壊れていく有様。最後に生存者は巨大母艦アートデッセイ号で脱出という流れ。。。
みんなで逃げるかと思いきや、またしてもダイゴは一人で戦おうとする。態勢を整えてから戦えばいいのに「今行くんかい」と。
ここでまた名シーンなんですよ。
残るダイゴに対して、イルマ隊長とレナで最後に会話するシーンがある。
イルマ隊長:「最初にウルトラマンをこの目で見た時、私は神に出会えたと思っていた。人類を正しい方向へ導いてくれる存在だと。でも違うのよね。ウルトラマンは光であり、人なのね」
イルマ隊長も、ダイゴがティガだったことを、ずっと前から知ってたんですね。
「勝ち目のない相手に立ち向かっていく義務なんてないのよ」と、イルマ隊長はダイゴを引き留めようとするものの、ダイゴの意志が強すぎるものだから、「必ず勝って」で送り出す。
人として、ティガとして、勝ってくれと。
この時、レナはダイゴの名前を呼ぶことくらいしかできなかったけれど、アートデッセイ号に乗ると操縦して基地の仲間を救い出すという自分の任務を全うする。
ラスボスのガタノゾーアは街に来て暴れるのではなく、闇を操る親玉として海にいるという設定。闇の根源を叩くためにティガは戦いに挑む。この最後の戦いのために、ティガが暗い太平洋の海に向かって飛んでいくというのもグッときますね。
ガタノゾーア、こいつが滅茶苦茶強い。
殴っても殴ってもびくともしないし、ティガの必殺技を2発受けてもけろっとしている。ティガは力を使い果たしてカラータイマーが超高速点滅する中でも殴りにいくんですよ。もう負けると決まっているような戦い。とても見てられない。。。
それで、ガタノゾーアが光線を撃つと、ティガの体を貫き、とどめを刺してしまう。
アートデッセイ号の操縦席からライブカメラの映像を通して戦いを見ていたレナは、それまで「ティガ」と呼んでいたが、このときばかりは「ダイゴ!!!」と絶叫する。
そこで他のメンバーにもダイゴがティガだとばれてしまう。
ティガは光を失って石像化して深海に沈んでいく。
どんな時も負けることはなかったウルトラマンティガが、石になって沈んでいくんですよ。この世の終わりのような光景です。5歳の私には滅茶苦茶重たかったと思います。次の放送までの1週間、どんな気持ちで過ごしたことか…
最終話、ティガ復活作戦
ウルトラマンの力を得て世界を掌握しようとした男がその前のエピソードで登場していた。マサキケイゴという男だ。
ウルトラマンの力を得たものの、自分の心の弱さに負けてウルトラマンの姿のまま暴れだしてしまい、街を破壊したことがあった。もうとんでもない凶悪犯罪なんですよ。きっと何百と人が死んでいると思う。ティガの世界観だと、たぶん終身刑なんだろうな。
はい、それで牢獄にいたマサキに白羽の矢が立つわけですよ。石像化したティガを復活できるのは彼だけだと。
凶悪犯罪者もまた人として戦う。
GUTSとマサキの力を合わせて、石像化したティガに光を当てて復活させようとする。その間にガタノゾーア手下のゾイガーを撃破したりして、作戦は成功するかと思われた。
しかし、ガタノゾーアが暴れて作戦失敗。メカは再起不能。
テレビで中継を見ていた大人たちから希望が失われ、もうだめだってなった時に、最後に希望の光を捨てなかったのは世界中の子供たち。子供たちの祈りが光になってティガに注がれて復活するんですよ。
ダイゴ:「これが光?」
ダイゴのもとに笑顔で走ってくる子供たちの光景が流れる。
べたなんだけれど、新鮮。まあ、5歳の私には全部新鮮なんだけれど。
圧倒的な強さのティガ復活!なんか全身光輝いているし、前より巨大になっている!
ティガのパンチもキックも必殺技も全部強い…!
ティガの中に世界中の子供たちやレナもいた。私もテレビを見ながらティガと一体化して戦っている気持ちにさせてくれた。
あの時、私はティガになれたんだ。
この演出は本当に素晴らしかった。
心に光があれば、誰もがティガになることができるんだろうな。
人生で大切なことはウルトラマンティガが教えてくれた
ウルトラマンティガという作品は、30歳になった今観ても、登場人物の立場や年齢に照らし合わせた場合、自分も同じように考えただろうなと思わせてくれる。それぞれの人としての戦いが、人間ドラマが描かれている。
全52話を通してダイゴの葛藤が描かれてきた。自分がティガに変身することを誰にも打ち明けることなくたった一人で。それがどんどん昇華されていき、ラスボスのガタノゾーアとの戦いには、迷いなく挑んでいく。勝ち目のない相手と戦う義務なんてないと言われても、人としてできることをやる、運命なんて変えて見せるという意思で向かっていく。
その後の劇場版の「THE FINAL ODYSSEY」では、変身したら闇の姿(ティガダーク)からスタートした戦いであったが、ダイゴの心の強さがどんどん光に変えていった。
人間はみんな、自分自身の力で光になれるんだ
って、ダイゴのメッセージ、ずっと、ずーっと大切にしている。
30歳になった今でも思う。
私の人生、いろいろあった。光も闇もあったと思う。
自分は何者なのか、人としてどうあるべきかという問いは、辛い時こそ自分の中にあり、支えてくれた。
今、現実の世界で大異変が起き、人類はコロナという脅威と戦っているけれど、人間が勝たなきゃならないと思っている。科学の力や、一人一人の行動のあり方で、感染を封じ込めコロナに勝とうとしている。
まさに、人としてできることを考える時なのかなと思っている。
感染リスクを抱えながら戦った医療従事者は、勝ち目のない相手に(特効薬がないから感染して重症化した時のリスクが大きい状態で)立ち向かっていく義務なんてないのに、それぞれの立場で、人としてできることをしているんだろうなと想像すると目頭が熱くなる。
人の心に光があれば、きっと勝てると信じている。
ホリイ隊員の「人間なめたらあかんで」という言葉も聞こえてきそうだ。
人間は、自分たちの意志で運命を変え、絶望を覆すことができる。
そんなメッセージを、人生で大切なことを、ウルトラマンティガが教えてくれた。
ウルトラマンティガは、今までもこれからも、私の心に光を与えてくれると思う。
自分が人間であることを後悔しないために、ティガのメッセージを、ダイゴのメッセージを、これからも大切にしていきたい。
ありがとう、ウルトラマンティガ
ありがとう、ダイゴ
ありがとう、円谷プロダクション
5歳から25年間、ずっと私の人生の光であり続けた「ウルトラマンティガ」という作品に、心より感謝をこめて。