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離婚届

その日、妻と夕食を食べた後に、離婚届を書きたいと言われた。
ご飯を食べ終わってから、その話を出すから困ったものだ。私は妻の精神が病んでいたことが気にかかっていたので、今ではないと反対した。

妻の考えは以下の通りだ。
一人暮らしをしてみたら、わりとうまくいっている。
精神科に通って、躁うつは安定している。今は過食していない。友達の家で飲んだり、自分の家でも一緒に飲んだり、一人暮らしを楽しんでいる。
さらに、前の生活に戻ったら、私に対して反抗してしまうし、またうつになるだろうとも言われた。

つくづく勝手な人だ。
自分を肯定しながら前に進もうとする姿は、ある意味感心する。ただ、自分の人生を自分の好きなように生きられるというのは、大事なことだと思った。

最後の気がかりがこのように言い返されてしまった。
まあ良いだろう。
確かに夫婦という形での将来はもう描けないことは別居前から気づいていたし。

二人で書類に必要事項を記入した。

離婚届には旧姓に戻すかどうかの欄がある。
妻はそれを選べるわけであるが、そのままにすることを選択した。他の手続きが面倒だし、私の姓の方が気に入っているらしい。
いやいや、親御さんは大丈夫なのだろうか。一人娘が離婚し、離婚相手の姓のままでいるなんて。

とりあえず記入を終えて妻はアパートに戻ったが、離婚届を置き忘れていった。その日に記入を要求して置き忘れていくところが妻らしい。
「捨てないでね」と連絡があり、数日後、私の家に回収にきた。

離婚届を出すことになったことを、私は母に報告した。泣いていた。
姓を変えないことについて、母は親御さんがどう思うか心配していたが、何となくわかる気がすると。独立した戸籍になるから、気持ちの上で家の縛りもなくなるわけだ。
一人娘なら尚更、自由になりたいという思いがあったのかもしれないと。

2020年5月


*これは当時の日記を元にした、1年前の話である。日記のため、「妻」と表記している。離婚に至るまで、このnoteはつづく。


*このnoteの続き


*このnoteのはじまり


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